『旅の重さ』読了

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旅の重さ - Wikipedia

中森明夫ビッグコミックオリジナルのコラムで紹介してた小説。映画の予告を見ると、いかにもこの人に衝撃を与えそうな本に見えます。由起しげ子という小説家がなくなった折、そこにあった持込原稿の山の中から発掘された小説。作者と連絡がとれないまま筑摩書房的に出版に踏みきり、その後作者が名乗り出たとの由。

旅の重さ (筑摩書房): 1972|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

あの頃映画 「旅の重さ」 [DVD]

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  • 発売日: 2012/01/25
  • メディア: DVD
 

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¥500 安いですね。デフレ脱却。 装幀 朝倉摂 イラストはすべて作者。作者が名乗り出る前が一刷で、名乗り出てからが二刷みたいです。その間タイムラグ一ヶ月。差分は作者あとがきの有無。

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「お百姓さん」と書かず「百姓」と書かれるとカチンと来るところとか、のー先生と伊丹十三の早曲がりの伊予から、吉田類とハチキンサイバラ坂東眞砂子の國、土佐へのロードムービーというかJK家出小説です。あっちはお遍路がありふれてるせいか、ぢょしこうせいがフラフラ徒歩と野宿で旅しても何も言われないという世界なのですが、初版の1972年でなく、原稿を送りつけた、1957年とかのお話ではないかと思います。モータリゼーションの発達以降は、おんな一人の郊外夜歩きは格段に危なくなったはず。ナンパとか族とか。

頁171、共産党員が土佐清水にオルグしに来たが、カンパ巻き上げて政治問題を論じるばかりで、労働者の生活向上を具体的に向上させるための、地に足の着いたカイゼンがなかったというくだりはちょっと面白かったです。でも親ソ派と親中派に分かれて喧嘩ばかりしてたというのは、共産党ぽくないと思いました。社会党新左翼なら親中派がいるのも分かるんですが。

主人公はリュックサックを「リクサク」と書きます。頁135、中国と書かず支那と書くところも、1972年マイナス十年以上の執筆と、納得させられます。

あと、中年男を篭絡するためには、逆立ちが必要と分かりました。逆立ちが得意で、野宿のしすぎで、銭湯に行くと湯船がそこだけ黒くなるJKは、まさに1950年代の女神だと思います。以上