『ハケンアニメ!』@hakenanime 読了

 画 CLAMP  装丁 芥陽子 ほかの人のはてなブログで拝見した本。"anan" 2012年11月7日発行号から2014年8月20日発行号まで連載に加筆修正。文庫は、「マガジンハウス文庫」という聞いたことのない文庫。苦戦してそう。それで作者名にクランプ入れちゃってるのか。連載時は毎回イラスト描いてたみたいですが、単行本だと、表紙裏表紙と、中扉のみ。中扉は王子失踪時の有科女史(表紙でスマホ耳に当ててる人)

ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

 

 私も、タイトル「派遣アニメ」だと思ってたクチで、それで借りたのですが、違いました。

dic.pixiv.net

dic.nicovideo.jp

この単語、本当に知りませんでした。次点として、頁362、「タバドル」という単語も初めて聞きました。タバドルは特に辞書サイト的なものが検索で出ず、Googleブックの本書当該ページでの説明が出ました。それ以上ないのか。

books.google.co.jp

あとのギョーカイ用語は「ネ申」と書いてほしかった神回とかそういうので、それは分かりました。そして、私は作者と厚木市の深緑野分の区別すらついてませんでした。英題が分からないので、FBからアルファベット採りました。

https://www.facebook.com/hakenanime/

裏表紙の絵があるのはFBくらいです。王子、市役所観光課、あと誰だ。既婚者の敏腕プロデューサーかな。フィギュアメーカーの人は眼鏡かけてるので、ちがうはず。表紙の、制作だか進行の人と、監督と、原画マン、否、原画パーソンは、服装が板についてますが、裏表紙の男性三人は、女性が男性を描く際やりがちな、胴長です。すべてのパーツを女性より大きめにする基準で書いてると、その男性キャラは胴長短足になる不思議。足は長くても胴は女性と同じくらいというふうには、なかなかならない。

頁91、「恙なく」が分かりませんでした。「つつがなく」でした。

magazineworld.jp

最初の話が、女性プロデューサーというか制作というか進行というかの人。むかし知り合いが、日芸とか西武線沿線とか哲学堂とか、ああいう一帯でアニメーターのところを夜討ち朝駆けで原画を集めて回る仕事をしてましたが、そんな感じかな(違う)作中アニメの決め台詞は下記。

――生きろ。君を絶望させられるのは、世界で君ひとりだけ。 

 次の話が、女性監督。アニメの決め台詞は下記。

『お前の音と、声と、歌を、すべて私に捧げられるか――?』

(略)

『なんでも、あげる!』

貧困家庭で偏差値の高い大学に苦学して入学という設定が冒頭で出ますが、あまり活用されずフェードアウトします。斎藤瞳という名前で、映像研に手を出すなの斎藤飛鳥と大童澄をくっつけたのかと思いましたが、映像研のがあとのはず。終盤妻子持ちの家に連れ込まれて、スッチーの妻との馴れ初めの噂と現実について説教強盗に遭う場面(うそ)が好きです。

第三章は、ネ申原画を描くオタ100%女性が、ご当地アニメのコラボに燃える自治体観光課職員に巻きこまれていくゴシックホラー(うそ)和奈と書いて「かずな」と読むのですが、私はずっと「わな」と讀んでいて、「わな、わな、わなに落ちそう、キッスは目にして♪」と歌いながら読んでました。「軍隊アリと公務員」という章題で、軍隊アリより兵隊アリの方がしっくりくると思いました。もしくは働きバチ。

頁261の田舎町描写は、シネコンの描き方が、時代に追いついてない描き方でした。

頁311、相手に聞こえないと思って、このリア充め、とつぶやき続けてると、相手に丸ぎこえで、リアルしか充実していない人間、現実以外の世界の豊饒さを知らない人間がリア充だと誤解されr場面もよかったです。いかにもな喋り方をする人物はおおむね二人、否、三人しか出ないのですが、あとがきでとても作者が気を使っているように見え、大変でしたねと思いました。

いかにもな喋り方をする三人目は、サコミズという名前の男性で、対人関係のコミュニケーションがそれなりで、アニメーターなので薄給らしく、「ほれてまうやろー」で主人公に告って撃沈してしまうのですが、女性陣の浮揚ぶりと対比して、彼の生活力その他へのアンアン目線が冷徹であると思いました。そして、迫水という名前は、聖戦士ダンバインの『リーンの翼』ですので、すべてのトミノ的なるものへのオマージュとも思いました。作者は否定すると思います。

第四部は、姿勢の悪い猫背の体躯に、顔半分を覆う大きなマスク。ボサボサの髪に、冬なのに、ジャケットも持たずにオレンジ色のキャラTを着た原作者と担当編集の愛の物語。うそです。

私はアニメは、ヤマトとガンダムと、福音戦士エヴァンゲリヲンジブリしか知らないので(あと押井守とか)キャッチコピーは糸井重里としか思いませんでした。求人誌で秘書を募集して、上玉が来るとシャブ打って愛人にするヤマトの西崎Pのような、畳で死ねると思うなよ的な極悪人や、人間ばくだんのザンボット3、第三東京は小田原箱根のはずなのに本書では神奈川県E市と書いてあるので、海老名に何があるんだよう、スラダンの江ノ島は江の島市じゃないよ、と思ったことなどが走馬灯のように過ぎてゆきました。

作者は作中に、それまでの概念を覆すアニメを二本置き、作中作に挑戦してるのですが、設定盛りすぎで、今の子どもは大変だと思いました。でも実際今の仮面ライダーとかそうなんですよね。仮面ライダーは特撮でアニメじゃないですが。最近読んだマンガの満州アヘンスクワッドでも、テンポというか、演出が早すぎる、タメがないのに変顔の大ゴマの多用は子供だましだ、などと思ったのですが、本作でも、最終的にどういう作品が覇権アニメになったのか考えあわせ、それと業界や作品の革新とはまた別の話というオチが、作者なりの考えなのだなと思いました。リーンの翼と同姓の迫水さんへ、私は男性なので、黙とうします。以上