長篇積ん読未読シリーズ カバー・原田維夫 デザイン・坂田政則 版画のカバーはこの巻まで。版画のイラストも二枚入っています。
原作の一冊を二冊ずつに分けて邦訳出版、というルールのはずなのですが、三巻も四巻も原題"The Broken Wheel"を引き継いでおらず、五巻がその訳題『壊れた車輪』で、しかしその五巻は六巻『白い山』と同じ原作巻"The White Mountain"であるはずで、なんだかそこだけで混乱してきそうです。
Chung Kuo (novel series) - Wikipedia
最終巻のあとがきでは、登場する中国のものやヒトに、音の合う漢字を割り振りしなかったとあるのですが、この巻の時点ではまだそれなりに漢字が振られています。飛燕(フェイイエン)とか。平調ということばの意味が分からず、音はピンディアオですので、同音の〈凭吊〉の間違いかと思ったりしました。
あと、「陛下」に必ずビーシァとルビが振られているのが、羅剛事件を思い出してしまい、気持ち悪いです。
羅剛事件竟然是農民冒充日本人|羅剛 | 时事追蹤 | 看中國网
訳者あとがき
地球上空で十六万里リーの静止衛星、冬宮で李リーシャイトンの正室リン・ユィが命とひきかえに男子を出産した二一九〇年から一七年の月日が流れた。 その男子、李リーユアンは想いをつらぬいて飛燕フェイイエンと結婚する。一方、チョンクオは初の内戦を経験して体制側は疲弊し、反体制側には〈拡散主義者〉より過激な革命組織が生まれた。〈七帝〉の権力はなお絶大なものがあるとはいえ、昔日の権威はすでにない。チョンクオは過渡期に入った。
読んでない本をあげて時間を節約しようとしてるのに、この巻も付記が充実していて、成都の看花会がどうの、月兒高がどうの、康煕とあるから清朝第三代皇帝かと思ったら陶磁器の話だったり、玉台新詠に収められてる歌がどうのとか、もうさんざんです。
この巻でなく前の巻に下記の対局が登場し、呉清源もそれに言及したことがあるとか、そこまで描くかという感じで、棋譜まで掲載されています。私は、イゴも棋譜と言っていいんでしょうか、くらいな知識力。
中国古棋譜散歩 (新樹社): 1983|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
杭の杭州の銭塘江のほとりに建つ六和塔の説明があり、懐かしいと思いました。
この巻の巻頭言は曹操による孫子の注釈と、川端康成『名人』への献辞です。
本書の「プロローグ」は原書にない、日本語版だけの、作者からのプレミアおまけだそうです。
以上
【後報】
本書の邦題をグーグル翻訳した"One Inch of Ash"をつけましたが、五巻の訳者あとがきに、"An Inch of Ashes"とあるので、直しときます。アッシュは数えられるのか。
(2020/12/3)