『内部の石』"The Stone Within"(チョンクオ風雲録 その八)Each book of "CHUNG-KUO" series is published in two separate volumes in Japan. This book is the second part of "Chung-Kuo 4: The Stone Within". (文春文庫)未読

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アメリカ人の若者たちによる旧世代打倒の運動は、しだいに無視できない新勢力となってきた。秘密結社同士の血で血を洗う抗争もあってシティは騒然、明日をも知れぬ様相である。チョンクオは、また新たなる生みの苦しみにもがきあえいでいるかのようだ。折り返し地点に到達したこの風雲録、若者たちに平和は取り戻せるのか?

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Chung Kuo (novel series) - Wikipedia

Jacket Illustration by Jim Burns デザイン・坂田政則 

"within"を「内部」としたわけですが、これは日本語のnaive, 否、ないぶというより、中国語の〈內部〉neibuを意識してるのかと思ってしまいました。しかし、ネイブーであるなら、"inside"がより近いので、わざわざフラクタクルな"within"にして、後ろに単語をつけてないのは何故なんだろうぜ、と思いました。作者のパラノイアが一段階パワーアップしただけかもしれません。

登場人物に、コアイレンというキャラがいるのですが、これが〈可愛人〉に見えて仕方ないです。実際どうなんだろう。サウリアンというキャラは、なんという漢字だったのか、かいもく見当がつきません。

この巻のあとがきの付記には、新しい画伯のジム・バーンズさんの紹介があります。ウィキペディアにも書いていないコネタとして、英空軍に入隊したのは、自分がWWⅠの撃墜王リヒトホーフェン(あとがきでは何故か「ホーヘン」と記載)の生まれ変わりだと信じていたからだそうです。生まれ変わりを信じる時点で、ヘンな西洋人。

Jim Burns - Wikipedia

kotobank.jp

オンレオン・トングという単語があり、安良堂と漢字が添えられています。「安」をオン、と読むというのは、全然私は想像も出来なかったことで、最近新井一二三のカナダ関連の漢語エッセー読んでいて、オンタリオ州を安大略省と書いていたのが分からず調べた時に初めて、南方方言では「安」をオンと読むのだと気づいたです。

安 の発音: 安 の 中国語, 広東語・粤語, 日本語, 呉語 (中国語), 客家語, 閩南語, 贛語 の発音

上にハングルは入ってませんが、朝鮮でもアンと読むはずです。アンジョンファン祭り。ベトナムは知らない。

安良堂 - 维基百科,自由的百科全书

On Leong Chinese Merchants Association - Wikipedia

zh.wikipedia.org

また、紅棍という単語があり、レッド・ポールと英訳されています。洪門の特攻隊長的役職だそうですが、義和拳教徒、拳匪をボクサーと英訳するかのようなクラクラ感があります。そうすると、こないだの独身の日、11月11日の光棍節は、オール・ポール・フェスティバルとでも訳されてるんだろうかと思いましたが、シングルズデーでした。残念閔子騫

Singles' Day - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/65/Triad_structure.svg/560px-Triad_structure.svg.png

Triad (organized crime) - Wikipedia

三合会をトライアドと訳してるのにもクラクラ感。下記のように漢字でだけ書かれてると、このクラクラ感は出ません。

三合会 - Wikipedia

女史は未婚で、女児は未婚とは限らない、と書いてますが、誰から聞いたなら、て感じです。鳥、ニャオにはペニスの意味もあるとしてますが、それは古代語のディアオではないかしら。なので鳥のはっちょんがディアオからニャオに変わったと聞いた気がします。でもニャオもその意味になっていたとしたら…

あとは神策とか、大司農とか、秘書監とか。

Shence Army - Wikipedia

Imperial Guards (Tang dynasty) - Wikipedia

大司農とは - コトバンク

秘書監とは - コトバンク

で、ここまで付記を読み進めて、初めて、本書巻頭言に下記があり、そこから"The Stone Within"のタイトルが来ているのだと分かりました。

「うぶな桃には教えるな、とらわれの身、すっぽり包んだ外部の皮、抱いているのは内部の石ストーン」

――ユッカ・トローネン、「ラスト・クオーターズ」、一九七二年。 

 この、ユッカ・トローネンという人は、フィンランドのバンド「タサバラン・プレジデンティ」の人で、アルバム「ランバートランド」の「ラスト・クォーターズ」という曲に、この歌詞があるんだそうです。訳者は歌詞を入手出来なかったそうで、私も、歌詞サイトというのは著作権アレなサイトが多いし、フィンランドというマイナーさがありますので、やはり歌詞はゲット出来ませんでした。歌の動画は見つかったのですが…

en.wikipedia.org


Tasavallan Presidentti-Last Quarters

で、ここの歌詞に、下記があるかどうかなのですが、聞き取れません。

Can't teach a true peach being a prisoner Skin all round and stone within 

 この巻の第一部の巻頭言はリルケ、第二部は失楽園、エピローグは杜甫です。なんでそこにフィンランドのバンドの詩なんか絡めて来るかなあ。とりあえず、「内部」という中国語とはまるで関係なさそうです。不老不死の果実とか、石から生まれた孫悟空とか、そんな話なのか。以上