『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』(講談社文庫)読了

 相鉄瓦版第268号「特集:やっぱりファンはやめられません」で、この作者が「横浜スタジアムとともに」というコラムを書いていて、何かこの人の本を読んでみようと思い、アマゾンでぺらぺら見て、これを図書館で借りました。

相鉄瓦版 バックナンバー

 読んだのは初版の翌月の二刷。単行本は2014年6月に、連載誌の出版社である交通新聞社から出ているそうです。『それでも気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』という続編も出ています。連載期間から原稿ストックの量は容易に類推出来るので、そういうことかと。

カバーイラスト サカモトトシカズ カバーデザイン 岡本歌織(next door design)デザイン 菊地信義 文庫あとがきあり

初出は「散歩の達人」という月刊誌で2007年から10年間連載された「絶頂チェーン店」「絶頂チェーン店MAX」「絶頂チェーン店Full throttleフルスロットル」だそうで、そんなタイトルの本だったら絶対借りなかった。いやだなあ、こんな、お小遣い前提の中年向けに、哀愁を帯びた黄昏色に擬態するとは。

三十代前半独身時代からの連載で、文庫刊行時には四十路突入、結婚して三歳の一児の父となっているという、実に時の流れに身を任せた展開で、それを、しょっちゅうくどくど書いてるので、いやでも読んでて頭に入ります。よっぽど家族のいる生活がうれしいんだろうなあ。ごちそうさまです。ので、前半は、わりとアブラギッシュとかガッツリ系も苦にならない感じで、それに、「文庫版おかわり」というボーナストラック的つけたし記事で、現在はさすがに辛い的な愚痴をこぼして親近感を煽っています。親近感は煽るものではないので、日本語可笑しいですが、そんな感じ。

村瀬秀信 - Wikipedia

私はほとんどチェーン店には行かないのですが、一部例外があります。以下、登場する店。

01 吉野家 牛丼と七味

  知ってる 

  何十回か行った。

02 山田うどん ダンス・ウィズ・山田うどん

  知ってる 

  一、二回行った。野津田と某病院への近くの業務スーパーの近くの店に。

  厚木の129沿いにもありますが、そっちは行ったことありません。

03 CoCo壱番屋 イチサン白書をもう一度

  知ってる 

  何回か行った。

   エッセーの題名は、かつて同チェーンでやっていた、

   1300gを20分で食べきれたら無料、から。

04 びっくりドンキー 国道沿いのメルヘンハンバーグ 

  後述のビッグボーイと区別がつきません。

  ので、行ったかどうか不明。

05 餃子の王将 デトロイト・メタル・餃子

  知ってる 

  例外的によく行く店。

   食レポとは思えぬ「社長暗殺(ママ)」への複数回言及が凄まじい記事。

   使途不明金にも触れていて、この人こういう社会派の顔もあるのかと思いました。

06 シェーキーズ 敗北者は芋を喰え

  知ってる 

  何回か行きました。

   ここは大昔から食べ放題をやっていたので、私もそれで。お茶の水店。

   作者は高校生のうちから食べ放題必勝にむけ、数々の技を編み出し、

   勝利していたそうで、タイトルはそこから。

07 サイゼリヤ バブル後のイタメシ屋、さもありなん

  知ってます 

  何回か行きました。

   ここのデキャンタワインが日本のワイン消費量を押し上げていると、

   誤読しましたが、読み返すと、

   「イタメシにおけるハウスワイン消費量日本一」でした。

   中部モリーゼ州の契約農家栽培の葡萄を専用タンクで発酵熟成とか。

   中部といっても、地図で見ると、ローマとナポリのあいだの、

   アドリア海に面したほうです。海の向こうはユーゴスラビア

www.google.com

   現在だと、クロアチアのドブロヴニクが対岸な感じでしょうか。

   いずれにせよ、北部のキャンティとかではない。

08 かっぱ寿司 走れ、団塊寿司列車

  知ってる 

  一、二回行きました。

09 ハングリータイガー 神奈川県民の誇り

  知ってる 

  行ったことはありません。神奈川の誇りはサンマーメン

  静岡の誇りの「さわやか」の方が昨今では有名かと。

10 ロイヤルホスト 宮廷のおもてなし

  知ってる 

  何十回か行きました。

   文庫版の追記で、ロイホの中国進出失敗に触れてます。

   表向きの理由以外に何かあるはずと書いてます。

   カシミールカレーインドカレーと明言したため、

   パキスタンカシミール領有を支援する中国の逆鱗に触れていた。

   とか、そういう解は如何でしょうか。

11 マクドナルド 地球人民の最終受け入れ地

  知ってる 

  例外的によく行ってたはず。

   これだけの巨大産業なので、あれこれ叩かれてるその系譜を列記。

   ミミズバーガーの噂から始まって、次が週刊金曜日編『買ってはいけない

   同書によると、ハンバーガーを1つ食べると南米の森が数ヘクタール消えるとか。

   映画「スーパーサイズ・ミー」も登場。

   マクドナルド叩く奴は米国資本主義嫌いな感じがするとか。

   そうした珍騒動をすべて列記した上で、

巨大な宇宙人がよかれと思ってやってることに対して人々が「キケンだわ」「殺される」と逃げ惑っているような気さえしてくる。

   と、的確なマクド文明批評を書いています。

   さらにその後、トドメで、ナゲットへの異物混入問題まで。

   ペンは剣より強しで、作者が中国で活動する中国人でないことが惜しいとしか言えません。

12 すき家 2008年の大政奉還

  知ってる

  まあまあ行ってました。クレカ支払い出来て、メガサイズがあったので。 

   作者は大昔のこの店でアルバイト経験あるそうです。

   にもかかわらず、王将で暗殺に触れてるからには、

   ここでワンオペに触れてないわけがないという… 

   吉野家とここ両方で中島みゆき「狼になりたい」が登場します。

   2ちゃんの吉野家殺伐オフは出ません。

   キン肉マンの牛丼は吉野家にしか見えないのになか卯と原作者が明言したことへの、

   異議申し立てっぽい記述もあります。

   が、原作者を「Yたまご先生」とイニシャルにして、面倒を避けています。

   あと、団鬼六のエッセー『牛丼屋にて』を挙げてて、そのエッセーはバジリコから出てます。

   ので、酒つまのオータケサンのように、パブ記事打ってるのかと勘ぐりました。

   たぶんちがう。

13 レッドロブスター ロストジェネレーション再びアメリカザリガニを食べる

  知ってる 

  行ったことはありません。

 一説によるとロブスターは寿命がなく永遠に死なない

   そんなわけあれへんやろと。ダイオウグソクムシもけっきょく死なはった。

   タイトルは、岸部シローがインタビュー場所にこの店を指定して、

   海鮮でなくステーキを食べたことに由来。 

14 蒙古タンメン中本 恐怖!血の池地獄の中本工事人間 

  知ってる

  一、二回行きました。

   作者はいちばん辛いメニューにさらに唐辛子を大量にブチこんで食べれる域に達したとか。

   真似出来ません。しかし作者はある日友人のつきあいで、

   MAXでなくそこそこの辛さを食べるハメになり、そこで開眼し、

   そこそこの辛さで美味しく食べれるほうが幸せじゃん、という気づきをもらったとか。

15 やよい軒 すべては“ごはん”のために

  知ってる

  一、二回行きました。どこかで。

  立川の女性センターの辺りの店は、その頃貧乏だったので(今でもですが)

  入店しなかった思い出があります。

16 牛角 牛の幸福

  知ってる

  一度だけ行ったかも。

   そんなにいい焼き肉チェーンなら、通っておけばよかったです。

   最近はもう焼き肉じたい欲求がありません。ふつうの韓国料理でじゅうぶん。

17 カラオケ・パセラ 中年ハニー・トースト

  知りませんでした

  行ったことはありません。シネマリンへ行く途中の店のショーケースは、

  撮りましたが写真見つかりません。

   この人もよく歌の歌詞を織り交ぜた文章を書きますが、ここではキューティーハニー

   二年前に物故した親戚が好きでした、キューティーハニー

   関内の店は、ハニトーカフェと検索で判明。

18 くるまやラーメン 難民クルマヤー 瞳の奥は笑ってない 

  知ってる

  何回か行きました

   流石神奈川県民(本書執筆時点では新宿百人町の住人だそうですが)なので、

   神奈中バスとの関係、花樂までまあまあきっちり書いたはる。

   タイトルはパンチ佐藤のブログに触発されたものだとか。

19 とんかつ和幸 全国のとんかつさん

  知ってる

  何回か行きました

   美味しんぼ「トンカツ慕情」の回から、食堂主人中橋さんが貧乏学生に諭すせりふ

いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ。それが人間えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ

   を引っぱっていて、よくこんなウマい台詞覚えてたな~と感心しました。

   たまたましめきりの前日くらいに場末のトンカツ屋で読んだのだろうか。

   それが縁で、今柊二という定食評論家と勝烈庵社長と、

   「とんかつさん」というとんかつ評論家と、座談会を一席もったそうです。

   その席で、相槌と愛想笑いしかしてない自分を発見したと、自嘲。

   こういうペーソスを出せるようになってきた文庫本時点の所帯持ち作者。

20 PIZZA-LA 日本人による日本人のための宅配ピザ

  知ってる

  一、二回頼みました。あと、蒲田のビジネスホテルから頼んで酔って寝てしまい、

  配達員がそのまま帰ったことがあります。

   ピザから具がずり落ちるほど具が多いと書いてますが、そんな体験したことありません。

21 ビッグボーイ アナンダマイト米俵

  知ってる?

  大森で一回行ったと思います

   タイトルは、牛肉から生成される脳内物質だそう。分かりにくいです。

   米百俵の長岡藩家老小林虎三郎いっぽんに絞ったほうガー。

22 鳥良 グッド・チキン ゴッド・とうふ

  知ってる?

  行ったことありません

   そんなにいい店なら一度行ってみたいです。

23 築地 銀だこ 美味しく召し上がれますようにッ!!

  知ってる?

  行ったことありません

   タイトルは、店員さんが、そう言って商品をお客に渡すからだそう。いいなあ。

   この店と、もう一店、本書には、メイドカフェ的発想のサンビスが登場します。

   作者は円蔵で、最初の上京地は中央線沿線の高円寺だそう。円蔵。

24 日高屋 オオカミになりたい

  知ってる

  何十回か行きました

   早朝、24時間営業の新宿日高屋で飲む習慣が出来た作者は、店員に絡みます。

   マニュアルどおりでない自分の思い通りのラーメンを作れ。

   そんな説教する自分を最低だと責めています。

   日高屋の正式名称はハイデイ日高、ハイな一日を過ごしてほしいとの思いからだとか。

   その後、酒も控えるようになり、一人息子も授かった作者。

   そこまで俯瞰して、やっと、ええ話や、と。

25 バーミヤン ジャパニーズ中華大戦争

  知ってる

  何十回か行きました

   「毒ギョーザ事件で失墜した中華料理へのカウンター」なる作者の位置づけが、

   面白かったです。北京五輪のころの中国なのか、

現時点での「世界嫌われ者ランキング」において、今の中国に勝てる存在はなかなか見つからない。かの国の世界からの嫌われっぷりたるや凄まじく、環境問題やら、エネルギ―問題やら毒ギョーザやらチベット問題やら、聖火リレーやら、そこは悪事の四次元ポケットが出るわ出るわ

   と書いていますが、中国を超克出来るのは中国だけ。さよなら胡錦濤、こんにちは習近平

   現在は、香港ウイグル、シングワンビンドゥー、コロナにまつわるエトセトラ。

   パワーアップすることしきり。マックスハート。すごい惡の華が咲いたものです。

   文庫版書き足しでは、バーミヤンは近年の業績悪化から、このままでは、

   本家アフガンの石仏のように爆破されるのではと懸念しています。

   このオッサンけっこうえげつない文章書きよる(棒

26 ケンタッキーフライドチキン 年の瀬のバケツ

  知ってる

  何回か行きました

   作者によると、ケンタでいちばんうまいのは皮だそうです。初めて聞いたそんな話。

   あと、初出時点では、食べ放題は箕面でのみやってたようです。サル。

27 てんや テンテン、ドンドン テンドンドーン!

  知ってる

  何十回か行きました

   てん娘ちゃんなる萌えキャラのツイッターがフォローしてくれるのがうれしいそうです。

   が、ブログのコメント欄にまではたぶん来ないんじゃいか。

   私が前に茅ヶ崎駅ナカ店でのエロ狂走曲を書いた時、私はツイッターやってませんので、

   それでかどうか、てん娘ちゃんは来なかった。

  本書では、「無添くら寿司」のむてん娘に負けるなと書いてありました。

28 どん亭 薄い肉への煮え切らない思いも固めてドボン

  知らない

  行ってません

   しゃぶしゃぶチェーンだそうです。のんびり秦野中井。

29 Sizzler ドキ!野菜だらけのサラダウォー

  知らない

  行ってません

   サラダバーのチェーン? シズル感ありまくりの店だそうです。てきとうだなあ。

30 A&W ルートビアを本気でウマいという人の気がしれない

  知ってる

  一度行きました

   作者も西表でキビ刈りしたそうで、20歳の時とあり、私より前だと思います。

   かぶってなくてよかった。作者は、正しく「エンダー」と覚えていて、

   池上永一経由で「エッダー」と覚えた私の立場はどうなるならと思いました。

   また、作者は、私が最近ドライブインの本を読んで覚えた知識、

   エッダーはルートビアでなくオレンジジュース、を一早くネイティヴから仕入れています。

   流石ライター。まーさんとか、しなさりんどー、とか、ウチナー口も私より知っています。

   いいなあ。

31 リンガーハット 私たち、今会える長崎の味

  知ってる

  大森で何回か行きました

   京都の天下一品伝説のように、リンガーハットも長崎本店で食べると格別にウマい、

   というフォークロアで現地で検証する話。珍しく長崎まで現地取材敢行してます。

   私は森田信吾『駅前グルメの歩き方』でまだ食べれてない、トルコライスが食べたいです。

32 ビリー・ザ・キッド テキサスの暴れ牛

  知らない

  行ったことありません 

  神奈川は、寒川や藤沢の「たわら」もありますし、バッファローキングもあるので。

33 東京チカラめし バーニング牛ボウル

  知ってる?

  行ったことありません

「イラサいマセー」と店員がたどたどしくも、にこやかに出迎えてくれた。名札は中国人らしき名前。その横には経営元の三光(略)中国人が“三光”をモチベーションにしちゃマズいだろ。と、戦後レジームから脱却できない自虐史観な日本人としては震え上がるしかない(さらに“焼き”だし)

   こんな文章書く人とも思いませんでした。

   まじめな話をすると、いろいろやった、やらないは別として、「三光」という表現、

   「光」を「~し尽す」という意味で捉えるのは、日本語としてはけっこうレアで、

   しかし中国語としては普通の表現なので、これ、中国語じゃないかなと思ってます。

   皇軍日本軍が作戦の通称に中国語を使って日本語読みするとは考えにくいです。

   中国語なら、國府の掃共戦、清野作戦でも使われてておかしくない。

   旗幟は色とりどりなれど、要するに"好铁不干钉"なので、そんなれんじゅうのわるさを、

   現地でそう呼んでおそれていた、くらいな話なのではないかなあと。

   〈万人抗〉は中国語で、日本側では誰もそう呼んでない共通理解がありマス。

   軍閥の掘ったワンレンカンもようさんある。

   san1guang1zuo4zhan4は、その名前で日本で呼んでたことになってて、不思議です。

34 野郎ラーメン もう戦わなくてもいい僕たちへ

  知ってる?

  行ったことありません

   この店は、券売機の横に女の子がつきっきりで買い方指南してくれて、

   「豚野郎のお客様~」と声がけして持ってきてくれるとか。いきおいで今、

   にしおかすみこのアメブロ見ました。更新されてることはいいこと。

35 ファミール ファミリーレストラン

  知らない

  行ったことありません

   ファミレスの原点はデパ食ではないかという記事。

   「そして、家族になる」の作者版みたいな記事。

   ピザーラお届け!の箇所(頁125)に出てくるブラザーコーンに外見は似てるのかな?

   よき夫よき父親として歩んでってけさい。

本書の食レポは、アルフィーの坂崎のオジサンみたいな文章かなと最初思いましたが、読んでくとちがっててよかったです。以上

【後報】

コロナで頓挫してますが、外食チェーン最大のライバル、コンビニイートイン出現後の世界はまた別な話で、いつか作者はそれも書いてくれるだろうと思います。

(2021/3/8)