『 健康で文化的な最低限度の生活 10 』"The minimum standards of wholesome and cultured living" (ビッグコミックス) "BIG COMICSスピリッツ" 読了

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徐々に暴かれる貧困ビジネス…  忍び寄るコロナ禍…  緊急事態宣言発令!! (10)100万部突破!累計(紙+電子)生活保護CWケースワーカー闘劇、“貧困ビジネス編”最新刊。

頁142、軽作業にせよ、無理矢理現場で働かせたとしても、もともと病気や故障などで働くことが大変だという人だったら、 事故、倒れるなど、あるかもしれず、そしたら人けのないところに捨てるわけでもないだろうから、救急車ほかでいろいろ発覚するので、そういうリスク負ってまで寮で囲って肉体労働させるだろうか、今はむしろ特殊詐欺絡みでいろいろほかの仕事があるんじゃなかろうか、でも私も何にも知らないしなー、と思いつつ読み、制作者側もその辺、どこかで腹をくくったわけでもないでしょうが、コロナ絡みなら、正義の御旗をより鮮明に出して後ろ盾が得られると考えたのではないかと思います。それで、作中世界もコロナに突入させたのではないかと。

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石橋「オッサン、運いいよ… 

   このコロナ禍だったら、

   緊急小口資金、

   総合支援資金、

   住居確保給付金………………… 

   各種 給付金受けホーダイ!!」

で、次巻に続く展開です。こうきたのか。

 小学館なので、ウシジマくんなどで積み上げたもろもろを使えば、情報はいろいろ得られると思うのですが、デリヘルまんがで、健常者を、無理矢理問題があることにして拉致って自立支援就労支援と称して風俗に送る悪のNPO団体を出して、すぐウヤムヤにしたこともあるので、大企業の社員サンも覚悟が問われるのかもしれません。でもコロナの不正受給糾弾なら、おかみがよりいっそう、助けてくれるのかもしれない。そうならいいですね。

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「オレンジパルム」を牛耳る石橋との攻防、ヒートアアップ…! おまえ、逃げたな…………  居場所なき人々にえみるは!? コロナ禍の今、読むべき“本格社会派コミック”!

頁172

人が安定した生活を得るためには、まず『住まい』を安定させなければ——————————… 

 これ、ほんまだと思います。これが裏メインというか。巻末のQ&Aで、コロナ禍の対応でも住宅確保給付金が特にピックアップされて語られてました。どれだけ対応人数を増員したかとか、相談件数がどれだけ増加したかとか。そういう面と、もうひとつ、貧困ビジネスの管理者から追跡出来ない遠隔地に人を逃がす話が出てくるので、そういうのも踏まえたセリフだろうなと。頁40で主人公も、防犯カメラの死角を見計らって器物破損するようなヤカラから、一人暮らしだったなとか、住所なんかすぐ割り出せるとか、録音のない時に言われてます。きびしいですね。私も中国人がアパートの部屋の前で口笛吹いてたことがありますが、なんだったんだろうなあ。

cover design : Kobayashi Mitsuru (GENIALÒIDE:inc) 装丁 小林満(ジュニアロイド)スピリッツの2020年26号、31号、33号、41号、44号、46号、2021年1号、3・4合併号、7号、13号掲載。

相変わらず、この連載密度で、アシスタント代もかかるでしょうし、よくやってけてるなと。

英題は、下記の検索結果から、日本法令外国語データベースシステムというところの、憲法第25条の訳文を使いました。厚労省の英文サイトでは、"wholesome"でなく"healthy"、"cultured living"でなく"cultural life"です。また、"standards of"でなく"standards for"としてる箇所もあるようです。はたまた、"standards"でなく、"level"だったり。そうしていろいろこまかく違うので、小学館ともあろうものが英題を併記してないのかもしれません。最低限度をミニマムと訳すセンスはグンバツですので、この漫画もそのうち英題つけてほしいなと思います。

ejje.weblio.jp

この石橋という男も、ひとりで5~6人オイコラで管理して、気の合う仲間なわけでなし、よそで遊び歩けるわけでなし、何が楽しいのかと思いました。仕事に楽しいを求めたらアカンやろとか言うわけないと思うので、弱いひと相手にマウントとるのが楽しいとか、そういった、なんか執着しててトクする部分があるんでしょう。まったく理解出来ませんが。

主人公の名前が、まさか実在する人物からとってるとは思ってなかったので、その筋の有名な方から名前をもらってる以上、はんぱは出来ないということなのかなあ。頑張ってけさい。ネット上で正義を追求する人がこの本に☆をつけまくってるわけでもないようですが、まあでもとても☆の数として、高評価なのは確かです。

カバー裏 

義経えみるが担当することになった受給者たちが住む「オレンジパルム」。このアパートから申請と失踪が多いことを不審に思うえみるだが… じつは石橋という男が受給者たちを暴力で支配していた。超緊迫!“貧困ビジネス編”さらなる核心へ!!

 コロナなんですが、後付けで始まったせいか、ところどころ描写が第一次緊急事態宣言下と違う気がします。マスクとアルコールが確保出来ているので、まず???でした。どちらも入手困難だったはずなのに。が、読者からツッコミが入ったのか、次の回で、上のアパートの住人が自力でマスクをゲット出来ず、労働後の賄いを担当するスナックのママから、一枚五百円でボッタのマスクを買わされてます。で、事務所職員がスナックに客として行って様子を探ったりするのですが、休校要請時点という設定なので、ふつうにマスクしないで店内で会話してて、私はこの時期すでにいちばん緊張してたな~と思い返しました。SARSの記憶がある人とない人で、かくも違うものなのか。もっとも私もMERSの記憶はありません。緊急事態宣言下に千葉の大家さんが東京都東部の福祉事務所に来てくれる(リモートでなく)とか、東京東部はそんなもんだったのかなと思いました。あるいは自粛慣れした後の時期の温度とごっちゃになっているか。

いや、まさかこのマンガがコロナに突入するとは思わなかった。くりかえしですが、それにつきます。以上