ビッグコミックオリジナル2021年4月5日発売号『前科者』に出てくる奥野克巳という文化?人類学者の人のウェブ連載をもとにしたアニミズム・エッセーに出てくる小説。
読んだのはハードカバー。装画 河原朝生 AD 大久保明子 口絵写真 杉山拓也
文庫と同じ表紙です。口絵写真は、伊藤比呂美のような髪形でチョン・セランのような目線をさせられてる著者。頬の化粧スジがごっついです。英訳は下記。1996年芥川賞受賞作品なのに、2017年に英訳出版。どちらもキノコをモチーフとした表紙イラストですが、内容としてキノコ出ません。へびがでる。
Record of a Night Too Brief (Japanese Novellas Book 3) (English Edition)
- 作者:Kawakami, Hiromi
- 発売日: 2017/01/26
- メディア: Kindle版
上記、"Record of a Night too Brief"中の本作は、"A Snake Stepped on"と訳されているようですが、英文Wikipediaには、"Tread on a Snake"という訳も見えます。
上は、有料なので読めないジャパタイの記事。
Translating Hiromi Kawakami’s “Tread on a snake”
上の、テキサス大の翻訳が、"Tread on a Snake" で、漢語だと、たんじゅんに《踏蛇》ta4she2 となるみたいです。
巻末の、文春の本・芥川賞受賞作には、『自動起床装置』辺見庸『背負い水』荻野アンナ『石の来歴』奥泉光『タイムスリップ・コンビナート』笙野頼子『豚の報い』又吉栄喜が、いっさついちページ独占して並んでいます。
本書収録は三作品で、『蛇を踏む』が文學界 H8年(令和だと、マイナス14年くらいかなと思いましたが、眠いので検算出来ません)3月号、『消える』が野性時代H8年3月号、『惜夜記』(あたらよき)文學界 H8年9月号掲載だそうです。
あとがきがあって、「うそばなし」が好きで、うそばっか書いてるとあります。そういうところがアニミズムで、ミニマリズムなのかもしれません(てきとう)日本語版Wikipediaにも内田百閒調とあるとおり、旅順入城みたいで、夢十夜で(夏目房之助のひいじいさん)稲垣足穂で、私としては、半村良みたいな、現実をとりまぜた駄法螺、ウソばなしが好きなので、こういう、最初からうそと分かってる話はちょっと違うかなと思いました。
作者はあくたがー賞の前に、1994年、『神様』"God Bless You"でパスカル短編文學新人賞と云うのを受賞しているそうで、その賞は、筒井康隆らが中心となって、応募から選考までをパソウコン通信で行う賞だったとか。ヨッパ谷の降下とかあるから、筒井文學とも親和性があったのだろうと思います。ぬこ洗面器時代のパソウコン通信なら、字数制限やらなにやら厳しかろうとも思いました。ピンをうつ。
私はこの蛇の自称母親の話を、母と娘の相克の話と読む前は思っていたのですが、読んでみると、母親は別に健在でしぞーかに父親と暮らしていて、電話で安否確認もしているので、母親がいるのに母親ヅラをする見知らぬ女性(蛇)ってなに、と思いました。三浦しおん『ののはな通信』に出てくる年上女性のようなものかもしれません。そういうシバリを、21世紀も20年経った現在では百合バリバリで表現可能ですが、90年代としては疑似的母親として表現せざるをえなかった、なんて。
頁109、前川健一流のタイ語表記が現在ほとんど一掃(ウィキペディアなど)されているのと関係あるのかどうか、「グーンキョワーン」という、おそらくはタイのグリーンカレー、ゲーンキャオワンを示すのであろう単語が載っていて、フーンと思いました。このページには、豚レバーのガイエット、香炸鷄塊という料理も見え、ガイエットは即席パテ、〈炸〉より〈酥〉のほうがこの場合しっくりこないかしら、と思いました。香酥鶏塊。
https://www.shibatashoten.co.jp/content/pdf/00596000.pdf
以上