『蛇を踏む』Hebi wo fumu (Tread on a Snake) "A Snake Stepped on" 読了

 ビッグコミックオリジナル2021年4月5日発売号『前科者』に出てくる奥野克巳という文化?人類学者の人のウェブ連載をもとにしたアニミズム・エッセーに出てくる小説。

f:id:stantsiya_iriya:20210429121545j:plain

www.akishobo.com

読んだのはハードカバー。装画 河原朝生 AD 大久保明子 口絵写真 杉山拓

蛇を踏む (文春文庫)

蛇を踏む (文春文庫)

 

books.bunshun.jp

 文庫と同じ表紙です。口絵写真は、伊藤比呂美のような髪形でチョン・セランのような目線をさせられてる著者。頬の化粧スジがごっついです。英訳は下記。1996年芥川賞受賞作品なのに、2017年に英訳出版。どちらもキノコをモチーフとした表紙イラストですが、内容としてキノコ出ません。へびがでる。

 上記、"Record of a Night too Brief"中の本作は、"A Snake Stepped on"と訳されているようですが、英文Wikipediaには、"Tread on a Snake"という訳も見えます。

www.japantimes.co.jp

上は、有料なので読めないジャパタイの記事。

Translating Hiromi Kawakami’s “Tread on a snake”

上の、テキサス大の翻訳が、"Tread on a Snake" で、漢語だと、たんじゅんに《踏蛇》ta4she2 となるみたいです。

川上弘美 (小說家) - 维基百科,自由的百科全书

Hiromi Kawakami - Wikipedia

川上弘美 - Wikipedia

巻末の、文春の本・芥川賞受賞作には、『自動起床装置』辺見庸『背負い水』荻野アンナ『石の来歴』奥泉光『タイムスリップ・コンビナート』笙野頼子『豚の報い』又吉栄喜が、いっさついちページ独占して並んでいます。

本書収録は三作品で、『蛇を踏む』が文學界 H8年(令和だと、マイナス14年くらいかなと思いましたが、眠いので検算出来ません)3月号、『消える』が野性時代H8年3月号、『惜夜記』(あたらよき)文學界 H8年9月号掲載だそうです。

あとがきがあって、「うそばなし」が好きで、うそばっか書いてるとあります。そういうところがアニミズムで、ミニマリズムなのかもしれません(てきとう)日本語版Wikipediaにも内田百閒調とあるとおり、旅順入城みたいで、夢十夜で(夏目房之助のひいじいさん)稲垣足穂で、私としては、半村良みたいな、現実をとりまぜた駄法螺、ウソばなしが好きなので、こういう、最初からうそと分かってる話はちょっと違うかなと思いました。

作者はあくたがー賞の前に、1994年、『神様』"God Bless You"でパスカル短編文學新人賞と云うのを受賞しているそうで、その賞は、筒井康隆らが中心となって、応募から選考までをパソウコン通信で行う賞だったとか。ヨッパ谷の降下とかあるから、筒井文學とも親和性があったのだろうと思います。ぬこ洗面器時代のパソウコン通信なら、字数制限やらなにやら厳しかろうとも思いました。ピンをうつ。

私はこの蛇の自称母親の話を、母と娘の相克の話と読む前は思っていたのですが、読んでみると、母親は別に健在でしぞーかに父親と暮らしていて、電話で安否確認もしているので、母親がいるのに母親ヅラをする見知らぬ女性(蛇)ってなに、と思いました。三浦しおん『ののはな通信』に出てくる年上女性のようなものかもしれません。そういうシバリを、21世紀も20年経った現在では百合バリバリで表現可能ですが、90年代としては疑似的母親として表現せざるをえなかった、なんて。

頁109、前川健一流のタイ語表記が現在ほとんど一掃(ウィキペディアなど)されているのと関係あるのかどうか、「グーンキョワーン」という、おそらくはタイのグリーンカレー、ゲーンキャオワンを示すのであろう単語が載っていて、フーンと思いました。このページには、豚レバーのガイエット、香炸鷄塊という料理も見え、ガイエットは即席パテ、〈炸〉より〈酥〉のほうがこの場合しっくりこないかしら、と思いました。香酥鶏塊。

https://www.shibatashoten.co.jp/content/pdf/00596000.pdf

housefoods.jp

以上