『推定有罪』"Presumed Guilty"(岩波現代文庫)読了

 プラ・アキラ・アマロー師の法廷取材もの。小説では「祝町」と書かれている寿の「総合労働福祉会館」スロープで1990年4月18日未明に発生した殺人死体遺棄事件(小説として冤罪)について書いたもので、1994年10月から1996年8月まで地方紙11紙に連載され、1996年12月文春より単行本化。解説の野村吉太郎というひとはこの事件の控訴審の弁護士さんです。小説では、傍聴マニアで額の広いアマロー師が弁護士さんに声をかけたことになってますが、解説によると、弁護士さんのほうから、この話を拡散してくれともちかけたそう。文庫で500ページを越える力作です。天下の岩波が文庫化したのですから、アマロー師の代表作の一つかなと思って読みました。

 モデルの労働会館は、ベルマーレのカレンダーがあったのをよく覚えていますが、取り壊してその後建った建物には行ったことありません。その後何が建ったのかも知らない。公営住宅が出来て、入居者絶賛募集中で、「今度ね、新しくひとつ物件が出来るの、とってもいいところよぉ」と市の職員に勧められた人が「いいです、私そこよく知ってるんで」と答えたとか答えてないとか、そういう話を聞いたくらいが最後かな。

 よって、翁湯というここの銭湯にも行ったことがなく、横浜で私がスタンプラリーをパスした数少ない銭湯でもあります。唯一かもしれない。取り壊し前は日本語英語ハングル併記の珍しい看板でしたが、改装後の今はどうなっているか。

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https://stantsiya-iriya.hatenablog.com/entry/20130312/1363076003

寿では焚き火を囲んで飲酒することをヤンカラというと本書にあり、検索すると、まずトップに2ちゃんの後継が出て、全然違う展開が書いてありました。宝焼酎がどうの、アイヌ語がどうの、不死身の杉元がどうの。インカラマッ。

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寿の関連の会報か何かの電子版に、本書と同じ意味での紹介がありました。

寿で暮す人々あれこれ

容疑者は控訴棄却、上告も棄却。服役後、解説時点でその後の行方はようとして知れないとか。アマロー師がモデルの小説家が、ノンフィクション・ノベルとして書きたいと承諾を求めて獄中に書いた手紙の返信には、別件の冤罪事件の書籍名が記され、そういったものへの期待もあったことが分かります。一審の弁護士について、その後法テラスとか出来たけど…みたいなボヤきが解説にあり〼。

 手紙の書名は上記、その文庫版改題が下記。

 北海道出身、テキヤ経験あり、神奈川県内の「S病院」に昭和五七年アル中で入院経験あり(頁186)小説での呼び名で、みょうじが「ケンタ」です。頁192に、依存症の特徴として、強権によって圧倒されるとひとたまりもない(こらえ性がないというか、精神的な脆さがあり、すぐあきらめてしまう)という弁護士と小説家の会話があり、昨今は人を操るマインドコントロールの本などもよく出てますし、そういった特性が、民間のよろしくない連中のあいだで都合よく利用されたりしてたらいやだなあと強く思うです。以上