『地球最北に生きる日本人 ―イヌイット 大島育雄との旅―』"A Japanese Living in the Northernmost Part of the Earth. Trips with Inuit Ikuo Oshima" 読了

 イラスト/武田佐和子 PD/石井龍雄(T.G.C)編集協力/近藤尚子(株式会社プラス・ワイ)英題はGoogle翻訳に定冠詞を加えたり複数形にしたりしたもの。この場合は"a"でなく"the"でなければイカンゴレンとか、そういうの有鹿しれませんがしりま千円。

佐々木譲『 新宿のありふれた夜』を読んで、ちょっと男性主人公のその後が、これ、どうかなあと思ったです。ジェンダー的なおはなしとして、「こんなところに日本人」でも男性は少ないそうですし。で、角幡唯介『極夜行』に邦人極北狩猟民がいてたのを思い出し、前はなんでんかんでん読み出すとキリがないのでカットしたその人関連の本を、読もうと思って借りたです。1989年に文春から出した著書と、2009年にフレーベル館から出たこの本。この本の著者は当時朝日新聞の記者で、南極越冬隊に同行した経験などを持ち、2012年に朝日新聞社を退社して屋久島に移住したそうで、でも今でも朝日新聞にちょくちょく「屋久島通信員」としてご芳名が見えます。(以上検索結果)

大島育雄さんの検索結果は下記。

英国ミラーに載った2019年8月の記事。

www.mirror.co.uk

グリーンランドの報道媒体に載った2017年1月の記事。ダニッシュで書いたある。

knr.gl

下のデンマークWWFの動画は2014年。トークは現地語。

www.youtube.com

地球温暖化に警鐘を鳴らす本で、その伝で行けば、角幡唯介が2017年からコロナカまで旅した時は、2006年と2008年の本書よりもっとエグいことになってるわけなのですが、その差分に関してはあんまし実感しないまま終わってしまいました。頁117にヒマラヤの氷河湖が灰色に濁って、雪渓も遥か上の標高まで後退してる写真が載ってるのですが、そっちのパンチのほうが私には効いた。自分が見たヒマラヤとカブったからでしょう。じゃあ現地体験がないとそういう危機意識というか、ショックは育たないのか、という問いがまいど発生し、それは答えのないループなので、思考停止して忘れて終わる、が繰り返されます。

エコツーリズムスタディツアーみたいな体験旅行もあるわけですが、安くはないです。また、地球温暖化に関して思考がやわらかいうちにショックを与えすぎたからグレタさんの人格があのように形成されたわけではないと思いますが、でもそうかな。本書は、「日本やアメリカなどの先進国」のせいで、という視点ですが、この時点ですでに中国も巨大な見えない帝国として参戦してますし、インドやインドネシア、ナイジェリアはクリーンかというと、みんなだろーというふうにしかならないんだろうな。

発酵肉がクサいけれど慣れるとウマいとか、寒さでカメラのシャッターが押せなくなるとか、そういう記述を読んでるうちに終わります。写真が多いので、大家族がストレートにこちらに入ってきます。上のミラーの記事の、2019年の、75歳の御年の村の写真は、本書と比べて、温暖化ですさんだようにも見え、変わらないようにも見えます。

で、日本人という群れから離れて、ほかの民族に溶け込んで暮らすという離れ業が、この人は出来ているのですが、辛抱とか忍耐力がスゴい、というふうにしか解釈出来ませんでした。狩猟民の村がタフでシビアでないわけないし、プライバシーも土足上等な描写。あとは、本人が、石にかじりついてでも好きなことを初志貫徹、と本気で無我夢中でがんばってこられたからと思いました。困った時の村の助けだって、「助けられるのが情けない」というヘンな論理で、それを理由に離脱する人生もありそう(私です)逃げる人は何でも理由になります。家族がいるからというのも、養育費バックレ見てると、それが支えになるかどうかは、ただ単にその人に依るとしか言えない。

ひと仕事終わった後休憩がてら読みましたが、これを書くのと、検索に使った時間のほうが長いです。以上