藤原審爾『殺しの手順』:『男たちのら・ら・ば・い』"Male Persons' Lu. lla. b. y. " (問題小説傑作選3⃣ハード・ノベル篇)Mondai shōsetsu kessakusen Vol.3 Hard Novel anthology(徳間文庫)Tokuma Bunko 所収

カバーフォト=島田達彦 カバーデザイン=熊沢正人 カバー印刷=真生印刷株式会社   解説 結城信孝 

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男たちのら・ら・ば・い (徳間書店): 1999|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

藤原審爾 - Wikipedia

'68年4月号発表。双葉社の『殺しの角度』収録。

読みながら、平静は活魚割烹を営む実は殺し屋の主人公で仕事は確実だが報酬は法外、緻密に作戦を練る、仕事のたびにヤサを借りるなど、目的のためなら投資も惜しまない、というくだりで、なんだか以前見た市川雷蔵の映画と似てるなあ、と思ったら、市川雷蔵の映画の原作はこの藤原審爾センセイでした。

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この映画の原作名は『前夜』というそうですが、主人公のオヒキと若い女性という設定が、本作と似てるような、微妙に、やっぱちがうと思うような感じで、原作がこの主人公のシリーズだったのだろうかと思いました。市川雷蔵はもう一本、『ある殺し屋の鍵』という題名で、藤原審爾『消される男』を同じ年に公開してるそうなので、やっぱりシリーズかなあと思います。

本作も中国人が出て来まして、「そこが気に入らねえンですよ。わしらの考えでは、林たち中国人は支払いだけはきちんとすると思ってたんですよ。それでなきゃ、あれほどでけえ組織にゃなれねえですよ」(頁416)なんてセリフも飛び出しますが、ホントウにそうかな。邱永漢の出発点である直木賞作品『香港・濁水渓』の信用詐欺なんて、やっぱりそういう相手方の勝手なコモンセンスが成功を助けたのではないでしょうか。

ヘリコプターの使いかたや、導入部のドライブなど、視覚的な描写もうまいですし、その使いどころもまたにくらしいほど効果的です。冒頭が結末に連環する天丼だったり、まったく映画の市川雷蔵かと思うくらい爽快な一文が頁441の段落替えの前に挿入されてたりするのも、うまいとしかいいようがないです。書かないつもりでいましたが、書いてしまへ。

 阿久根が人生を感じるのは、こんな瞬間なのである。

読んだ記憶がないので少し読んでみようと思いましたが、これだけ多作だと、さて何から読めばという。以上