『恐喝こそわが人生』上・下 "Blackmail Is My Life"(角川文庫)読了

これも藤原審爾サンの小説。1968年か1969年に報知新聞社から出たのを1979年文庫化。最初どこかで連載してたのか、書き下ろし単行本なのかは分かりません。

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カバー 辰巳四郎 解説 武蔵野次郎 

武蔵野次郎 - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/7/7f/Blackmail_Is_My_Life.jpg/220px-Blackmail_Is_My_Life.jpg英語タイトルは、深作欣二監督、松方弘樹主演映画の英語版ウィキペディアより。日本語版ウィキペディアはないのに英語版(とスウェーデン語版)がある不思議。

Blackmail Is My Life - Wikipedia

https://www.hulu.jp/blackmail-is-my-life

恐喝こそわが人生

上巻頁187:夜業

夜業とは - コトバンク

上巻頁250:ブリチャイ船 ⇒不明

上巻頁285:槿花一朝の栄

槿花一日の栄とは - コトバンク

下巻頁21:ペイ

ヘロイン – 刑事弁護オアシス

下巻頁177:岩乗(がんじょう)

下巻頁318:用捨(ようしゃ)

 だいたいの舞台は新宿周辺。主人公は恐喝で高収入が得られるので、その道に入った青年で、あっという間に頭角を現し、一年で自社ビルを建てます。ボーイ時代の同居人で、公務員試験の勉強をしてた青年は、彼女を主人公に寝取られた挙句死なれてしまい(事故死)刑事となって主人公をつけ狙う人生を歩みます。友だちの彼女と寝たらあかんがな。むかしの知り合いで、やはり友人の彼女と寝た男が、友人にばれていわく「向こうから誘ってきたんじゃ。こっちから口説くわけなかろうが。誘われたけえ、男なら行くじゃろ、分かりよろうが」アメリカならそんなウソうけつけず決闘だと思うのですが、キューアノンのいない国・日本ではホモソーシャルの友情がまさってしまい、おとがめなし。だいたい彼女が主人公に強引に抱かれる際に「結婚してくれる?」と聞き、やりたいだけの男がうんうん言ったら、もうそれで性欲に溺れてやらせてしまうという展開が、なんだなあと。その後出世するにつれて、どんどんランクの上の女性と知り合っていくので、糟糠の同棲者はどうなるならと思ったら出会いがしらの交通事故という。

で、刑事さんはしつこく主人公の尻尾をつかもうと悪戦苦闘するのですが、主人公の脅迫の仕方がうまくて、アコギでないので、誰もが刑事の捜査に非協力的で、この辺は、正義が必ずしも勝てない、悪いやつのほうが持って生まれた金儲けの才能、知恵が上というもどかしい展開がえんえん引っぱられます。努力と情熱は才能に勝てないのか、むーん、という。

この主人公がまあ、暴対法以降の半グレと変わらんだろうというヤクザっぽくはないキャラで、作中でも、後半は暴力団と形容されますが、前半は愚連隊です。作中に登場する御用マスコミのパブ記事では「青年実業家」…自社ビル竣工記念パーティーではちゃんと本職の親分衆を招いてゴマをすっています。

なんでこの主人公が若いみそらでノシていけてるかというと、政界の大物の後ろ盾があるからで、最初この大物政治家は総理大臣だと思ってました。違うようです。勝とか遠藤とか、分からない人名が幾つかありました。その政治家が、高度経済成長下の日本は、外国企業の特許をこっそり完パクしたりしてる、事実調査を主人公に命じるところは面白かったです。技術をパクられた米国メーカーが、パクった名古屋の企業を買収し、参加に置こうとした時、主人公らはそれを阻止します。外国企業の傘下になることは、日本経済の発展のため調査カツアゲする本来の目的理念に反する、から阻止するんだとか。

主人公が、最後に清楚な年下女性と式をあげようとする際、泥酔した刑事が乱入するかに見え、まだあと数十頁あるのに、ここでクライマックスかよと思ったら、刑事は乱入しませんでした。レイテの栗田艦隊のようだ。

そんな小説です。むかしの字の小さい文庫本で、上巻下巻ともに三百頁越えを、よく読んだ自分。

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恐喝こそわが人生 (角川書店): 1979|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

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以上