『ちいさなとりよ』"THE DEAD BIRD" by Margaret Wise Brown illustrated by Reny Charlip(岩波の子どもの本)読了

「月刊MOE モエ」という絵本の雑誌の九月号の怖い絵本特集で、土井章史という人が谷川俊太郎『なおみ』を紹介する際に、映画「禁じられた遊び」やこの絵本にも、葬式ごっこ埋葬ごっこに興ずる子どもたちが描かれていると書いていて、私はおそろしいことに「禁じられた遊び」も「ミツバチのささやき」も観たことがないのですが、とりあえずこれは読んでみようかと思って借りました。

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ちいさなとりよ - 岩波書店

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The Dead Bird (book) - Wikipedia

英語版ウィキペディアによると、本書の文章は1938年にはもう書かれていたそうで、しかし著者が1952年、若干42歳で逝去されたのちに、1958年、レニー・シャーリップという人のイラストをつけて出版されたとか。レニー版では子どもたちは全員白人で、日本の絵本作家なら半ズボンを穿かせるところを、そんなもん穿かせるわけないじゃんみたいな感じで、長ずぼんで、靴履いて、女の子はカチューシャで、男の子はえりあしをきれいに刈った、もしくは切りそろえた直毛です。とりは、白。

上の英語版で"HERE LIES A BIRD"と書かれた墓碑銘は、与田準一の邦訳では「しんだ とり ここに ねむる」です。

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與田凖一記念館-與田凖一

訳者のひとは、小鳥はとっても歌が好き、母さん呼ぶにも歌で呼ぶ、ぴちちちち、ぴちくりちっち、の作者だそうで、そうなるとなんか出木杉な気もします。

マーガレット・ワイズ・ブラウン - Wikipedia

作者の日本語版ウィキペディアには本書は記述ありません。現時点で。

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作者とイラストレーター。本書ウィキペディアによると、2016年に別の人が新しいイラストをつけて、それでこの絵本は息を吹き返したそうで、それは読み聞かせ動画がありました。

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半分?が有色人種で、大型犬も連れた一行になっています。現実にこのようなメルティングポットな遊び仲間があるのかどうか知りませんが、ダイバーシティーや多様性の好き嫌いで読者の評価が分かれるかもしれません。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

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上が新版のイラスト描いた人。この人のドレッドは文化盗用とは言われないと思います。

自分でとらまえた鳥なら食べるかもしれませんが、見つけた死んだ鳥は、なんのびよきで死んだか分からないので、食べないと思います。で、今は鳥インフルがあるので、公園などで死んだ鳥を見つけても、さわらないよう教えられることが多いかと。新版も手に持つ場面はありますが、旧版のように顔につけてキスする場面(そういう文章はない)はありません。

人は亡くなった後、周囲の人に忘れられて二度目の死を迎えるとか、周囲の人が記憶を語り継いでいく限りその人はみんなの心の中に生きているが、お盆など祖先の供養を営まれなくなったらそれも継承されなくなり、その時完全にその人の魂魄は消え失せるとか、そんなことはよく言われることですが(私が記憶に残ってるのは池上永一のデビュー作『パガージマヌパナス』)この絵本も、「こどもたちは とりの ことを わすれてしまうまで、まいにち」"And every day until they forgot"とキッチリ書いて物語をしめています。ゆきずりの死者をいつまでも覚えておけるはずもなく、いつしか日常は新しい感情に上書きされる。以上