Primary Source : Partisan Review Oct. 1948 : 1079-1085.
ヒサエ・ヤマモト作品集 : 「十七文字」ほか十八編 (南雲堂フェニックス): 2008|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
エロ電話を皮切りに、痴漢やら露出狂やら、いろんな嫌がらせについて、スワンのナントカのほうへ自在に、過去の記憶と聞いた話が連続してゆく話。ネタバレですが、路駐の車の、歩道側に開いたドアから、ハイヒールは履いているものの、ストッキングをつけていないナマ足が飛び出ていて、横を通る時そっちを見たら、ハイヒール以外何も身に着けていない裸体の男性がいた、のが題名の由来です。ほかに、同僚が早朝出勤のさい暴行されて、上司が警察へ被害届を出すよう強く言って、警察署職員の好奇の目があって、しかし警官の巡回パトロールにそのあたりが追加された話、など。それだけで終わるなら、変質者って白人もオリエントも区別しないんだな(おそらく黒人も)という感想だけなのですが、非暴力主義のガンジーが出ます。
ガンジーに女性が、暴行されそうになったらどうしたらよいか尋ね、非暴力主義のガンジーは、反撃云々を言わず、お茶を濁して終わったとか。
頁47
(前略)しかしガンジーは問題から逃げてしまった。具体的な事例をあげないで、曖昧なことばを用いただけだった。どこでも見られる女性の恐怖心に直面すると、ガンジーは役に立たなかった。(後略)
主人公は、無垢な少女(でも放棄児童。時代)の花に心をなぐさめられ、ガンジーのようにエロ電話に対処するとしたら、どれがいいか空想します。番号違いと言えばいいか、ビーチが快晴ですんばらしいから泳ぎに行きなさいと言えばいいか*1、ロンリーハートクラブ(配偶者募集所)に行ってみたらと言えばいいか、オーア、下記。
頁48
「いいですか。こんなことをしてはいけません。でも、あなたがそうなった原因はわかります。精神科のお医者さんのいうことを守れば、かなりよくなるでしょう」
そうこうするうちにまた電話がかかってきて、ギクリとするけれど、それは日系人の縁者のオバサンで、「酢を混ぜたご飯に酢漬けした魚を載せた」押鮨と「煮た小豆でお餅を覆った」オハギを作ったし、少し入手したブリを「薄く切って生で食べ」ようと云う。そんな話です。これがヒサエサンの、採用された事実上のデビュー作だとか(投稿じたいは十代から、当初はペンネーム"Napoleon"ナポレオンだったとか)
とんでもないですね。我々にはガンジーだけでなく、マルコムXがいるわけですが、ヒサエサンがコレを発表した1948年、マルコムXは23歳で、窃盗と住居不法侵入の実刑判決ムショ暮らし二年目。やんぬるかな。おえん。以上