『ミス・ササガワラ伝説』"The Legend of Miss Sasagawara." 『ヒサエ・ヤマモト作品集 -「十七文字」ほか十八編-』"Seventeen Syllables and Other Stories." by Hisaye Yamamoto. Revised and expanded ed. 読了

Primary Source : Kenyon Review 12.1(1st. Dec? 12. Jan?)1950 : 99-114

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/stantsiya_iriya/20211002/20211002203703.jpg

ヒサエ・ヤマモト作品集 : 「十七文字」ほか十八編 (南雲堂フェニックス): 2008|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

ヒサエ・ヤマモト - Wikipedia

Hisaye Yamamoto - Wikipedia

私にはちょっと分かりにくい小説。アリゾナの収容所にいたとき(日系人強制収容の)、そこにいた39歳のハイミスで、僧侶の父親とふたり暮らしの女性についての話。

Poston War Relocation Center - Wikipedia

ボボ・クニトミ "Bobo Kunitomi" という人物が出ます。「ボボ」とか正気かと思いました。

「ドジョースクイ」が出ます。ザルがないので、シチュー鍋で代用。「池からどじょうをすくい上げようとするが、なかなかうまくいかない男の滑稽な踊り」

頁94

「覚えているわ。あの人がどうしたっていうの?」

 ジョージはなにもいわず、人差し指で自分の頭を指し、クルクルと何度か円を描いてみせた。

「ほんとう?」私はたずねた。

 ジョージはじっとおし黙ったままで、気の毒そうな顔をして、ウンウンとうなづきながら立ち去っていった。

P27

 "Yes, " I said. "What's the matter with her?"

 George, saying not a word, pointed at his head and made several circles in air with his first finger.

 "Really?" I asked.

 Still mam, George nodded in emphasis and pity before he turned to go.

この後段で、主人公キクのいちばん下のいもうと、十歳のミチが「あの人、怖いわ」"She's scary. " と言う場面(頁95、P28)邦訳を読んでいたからいいようなものの、私は原文を二ヶ所誤読しそうになりました。"Us kids" をまずユーエスキッズと讀んで、アメリカ人の子どものことだと思ったら、アスキッズで、「私たち子供」だった、のが一点。もう一点は、キクは、"Oh, go home and go to bed. " を、アホなこと言ってる妹に言ったのですが、その場にいない、きちがいミス・ササガワラに対して言ったのかと誤読したのです。

なぜササガワラ氏は娘を嫁がせなかったのでしょうか。どうもこの時代の僧侶というのは、宮沢賢治に影響を与えたような、社会変革思想が強かった気がします。

ja.wikipedia.org

友松円諦 - Wikipedia

それとは別に、主人公が一度だけ体験した日本仏教のお葬式の、お焼香の仕方をお通夜の時に特訓した思い出や、キャンプ内の、月給16ドルの、仲のよい友だちとの食堂ウェートレスの仕事や、昇給して19ドルの、病院勤務の仕事、そこで運転手の仕事をしてる二世青年たちとの交流、ブロック単位で行われるクリスマスパーティで演目、めいめい出し物をする場面(安来節はこの場面で)などが走馬灯のように描かれます。主題は分かりにくいのですが(解は語られないので推察するしかないのですが、父親が娘に無体なことを強要してそれをひた隠しにして世間体を保っているので、それで娘が江戸川乱歩の真珠郎のオカーサンみたくなってしまったと言いたくて仕方ないです)、キャンプ内のニセイたちの青春の日々ははじけていて、燦爛としています。以上