斎藤真一装画の小川洋子小説『シュガー・タイム』を読んで感銘を受け、この人の弟について検索すると、『偶然の祝福』を読むべし、ということになり、しかしそれを読むには、事前に『バックストローク』を読んでおいた方がいいということで、『バックストローク』が収められているのがコレなのでこれを読みました。
カバー装画 七戸優 デザイン 新潮社装幀室 解説 堀江敏幸 単行本は平成13年3月新潮社刊 各話の初出はロンダリングされてるので、文庫からは伺えません。
割れ鍋に綴じ閉じ蓋。前川健一の本で、タイの欧米人社会でアジア型の血縁関係による権威主義うんぬんを歓談中、「吹きこぼれてるから鍋のフタ取って」と言われた前川サンは "lid"という単語が分からず、こむずかしい会話してるくせに灯台下暗しな生活単語が分からないなどということがありえるのかと、そのパーティーの主婦白人が逆に青い目を白黒させた、と書くと21世紀的にあまり好ましくない、ということもないと思います。
そんな小説でもないのですが、いちばん分かりやすい直球ホラーが『匂いの収集』で、キノコンガみたいな話が『中国野菜の育て方』(一時期、正体不明の種子が広東省から郵送で世界各地に送りつけられた事件も想起させます)悪質な詐欺商法告発と思いきやゲロ要素含む『お料理教室』そんな翻訳エージェントあるわけないやろ~の『リンデンバウム通りの双子』要するに彼氏がいることを自慢したいのかという『飛行機で眠るのは難しい』『詩人の卵巣』でした。
『バックストローク』は、頁140、ブラームスの交響曲一番って、そんな不吉かなあと思いました。多少は不吉ですが、どうだろう。
あとは、酒浸りの父親が青山二郎のようだなと。
『詩人の卵巣』がいちばん好きです。下記のくだりがあるから。
頁178
その夜、わたしは本当に久しぶりに眠った。生まれて初めてこの世の眠りというものを授けられた赤ん坊のようだった。
以上