『恋とゲバルト』"LOVE AND GEWALT"(モーニングKC)MORNIG KC 読了

2021年9~10月にコミックDAYS掲載。読むものがなくなりそうだった時に、久喜のエキナカ書店でふっと見かけて、購入しました。

カバーデザイン 角田正明(ツノッチデザイン)こういう題名のマンガを描いてたとは何かで見ましたが、こういう内容とは思いませんでした。「男東大どこへ行く」の橋本治に捧ぐ、といった感じでしょうか。冒頭、他大生なのに安田講堂占拠してるところがリアル(ほとんど他大生だったとはよく聞く話)

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表紙にもバールのようなもの。コミックDAYSはペースが早いので、『満州アヘンスクワッド』なんかもう六冊も出てますが、さて、作品が、しかしこのテーマで読者をひきつけることが出来るのか、と最初は思ってましたし、題名だけ見ると、団塊回顧ものとも思えてしまう。少なくとも私はそうです。ぜんぜんちがった。このベテランがここまで描くとは思わなかった、ぶっとんだバトルまんが(と思います)

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カバーをとるとレンガの表紙。この感想の英題は、ゲバルトにあわせて、リーベウントとドイツ語で書くより、ラブアンドのほうがいいかなと思って勝手につけてます。

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激愛×闘争 『ヤミの乱破』『ギャラリーフェイク』の細野不二彦が昭和の激動に生きる若者を描くアクションドラマ!!

帯。虫嫌いの、剣術体術を組み合わせた古武術の天才と、昆虫食の嗜癖を持つ、三節棍の使い手眼鏡娘が、汗くさい1968年のキャンパスを舞台にゲバる、という。当時ワンルームワンションの朝シャンもなかったし、日本は高温多湿。

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昭和43年4月。 世界各国で学生運動が拡がり続け、 日本でも大学などを中心に 嵐が吹き荒れていた。 右翼の学生活動部隊の切り札として招集され 仙台から上京した純朴な青年・東儀ひろしは 左翼や右翼の学生たちが入り乱れる カオスなキャンパスで運命的な出会いを果たす。 荒れる大学構内で植物を育てる 可憐な女性・北条美智子。 彼女に惹かれ始めるひろしだが、 彼女もまた人知れず 左翼の秘密兵器として活動していた――。 激動の時代、恋と革命のドラマが動き出す!!

カバー裏。ヘルメットに「礼仁」と書いてるのが、あっ、レーニンか、と分かるまですこしかかりました。巧言令色鮮し仁。表紙にも「仁」だけ見えます。仁義となれば、いよいよ橋本治ポスター路線。

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激動の昭和43年―― 桜舞い散る大学キャンパスで 二人は出会い 惹かれ合う! 互いの正体を 知らぬまま―― 東儀ひろし ぺろり 北条美智子

帯裏。蟻食べてます。

左は頁138。指とフキダシがかぶってるのがおもしろいです。

頁26には、21世紀のよい子たち向けに、実在するセクト名を列記した、物語の背景を書いていて、ここに写そうかと思いましたが、やめます。その後の物語に出てくるセクト名は、すべて架空。

この作者は、前にもここに書きましたが、『うにばーしてぃぼーいず』で、80年代、成田に動員されるノンポリ学生(行かないとサークル助成金みたいのを自治会から削られるとかなんとか)のピクニック気分の場面が印象的で、こういうのにこだわりない人かと思ってました。どっちかというと、たとえば長崎尚志は、マスターキートンで、バクーニンから息子に莫と名付けたが自死した男性の話(キートンの娘が校内で不正徹底追及のひとりデモをする)の話など、印象に残っています。誰かほかの人と組んでるのか、純粋にエンタメとしてどこまで出来るか試してるのか。

そんな感想を持ちました。以上