أشياء أريد أن يعرفها الشعب الياباني عن الإسلام فيفي『日本人に知ってほしいイスラムのこと』フィフィ(祥伝社新書540)"Things I want Japanese people to know about Islam." by FIFI〈SHŌDENSHA SHINSHO〉読了

ブッコフで売る本の査定のあいだ、本棚をつらつら眺めていて手に取った本。この人はときどきライターのコタツ記事に出てくる人で、どっちかというと、日本人よ誇りを持て! みたいな親日インフルエンサーの印象が強かったのですが、本書で重信メイサンを取り上げていて、彼女へのリスペクトを隠そうともしていなかったので、やはり人は一面だけで判断してはいけないと考え、買って読むことにしました。税込¥220日元。

ムスリム・フレンドリーしてますか? ハラール認証、ヒジャブとコスプレ、お祭りとしてのラマダン、誤解された原理主義…… 「正しいイスラム」を伝えることが私、フィフィの使命です!

帯 本書執筆当時重信房子はまだ獄中だったのですが、反米思想がゆえにアラブの一部で非常に人気のあった極左テロ組織のカーネルにもかかわらず、娘さんを自分の主義主張で洗脳はしなかったようで、そこにも非常に感銘を受けたようです。別人格だから親の思想を押しつけなかったのか、親とちがう道を歩ませたかったのかは分からないけどと。

頁83。ヒジャブとブルカは言い方がちがうだけで同じものを指すことが多いのではと私なぞは思ってしまうのですが、フィフィサン的にはこのようにハッキリちがうようで、しかもここではイランのチャドルをチャンと別物として分けて取り上げているので、それだけでもうこの本を買うことしました。イラン人女性がチャドルからちょろっと前髪を出すのはフィフィサンら他民族ムスリマからすると、髪を出すんならヒジャブの意味ないじゃん、と思ってしまうとか。(そもそもスンナ派からするとシーア派は個人崇拝のように見えて、アッラー一神教とちがーう、という主張は本書にも見えます)

頁30

 たとえば、私はヒジャブを被っていないことがありますが、「あなた、ヒジャブを被ってないじゃん」と言う人は、イスラムの教えをちゃんと理解できていない人です。自分と神との契約で信仰しているのですから、他人のことは他人のことなのです。他人のことに口を挟まないのが、イスラムの基本です。

まあエジプトもそれなりに原理主義者の同調圧力が高まってるとは思います。エジプトやレバノンのクリスチャンはヒジャブをしないかわりに、十字架やアークをよく見えるようつけたり、手首に刺青したりするんだとか。

ザーラ・ラリ - Wikipedia

ヒジャブの項は、ヒジャブをつけたアイススケーター、UAEのザーラ・ラリ選手から始まります。これだけで、いい本だと思いました。

ブルキニ - Wikipedia

ブルカが出るとブルキニの話題になる。よく出来てるなあと思いました。イスラム圏ではナルトの影響もあって忍者の修業をする女性が多いそうで、全身をすっぽり隠す忍者装束はムスリマと相性がいいそうです。これを読んで、地元の多分県営住宅に住んでいる、全身真っ黒ニカブのオバサン、それだけなら別にふしぎでもなんでもないのですが、よくひとりでのっしのっしと歩いてるガンダムというか武蔵坊弁慶というかのニカブオバサンを思い出しました。あの人も忍者気分なのかなあ。どうもね、そこまで完全武装していながら、女性は親族男性のエスコートなしで外を歩いてはいけないというルールを完全無視しているのが、小気味いいというか、強引グマイウェイというか。

フィフィ - Wikipedia

昨日読書感想をあげたナカシマサンと同じ中京大学卒。フィフィのアラビア文字表記を検索すると《فيفي》と出て、それを再度英語や日本語にすると"ViVi"になってしまうのですが、当のミスルアラビア人が"FIFI"と言ってるのでそれでいいことにします。

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イスラムを知れば、世界がわかる ●二○二○年には四人に一人がイスラム教徒 ●ハラール認証のマークは国でバラバラ ●フィフィのハラール食リポート ●ムスリムムスリマヒジャブ、ブルカ、ニカブ・・・・・・女性の服装 ●ユニクロムスリム・ファッション ●なぜ日本の忍者が好きなのか ●戦前の日本は、これほどイスラムを研究していた ●「イスラム」と「アラブ」は違います ●結婚の特徴―――契約・夫婦別姓・一夫多妻 ●「ジハード」の本当の意味 ●ムスリムとの付き合い方、教えます (本書の内容から)

最初の章のハラル認証に関しては、ハラル認証はカネがかかって髙いと以前聞いたことがあり、しかし韓国食品を見るとのきなみハラル認証をとってるので、日本と韓国とこちがうと思ったですが、日本のハラル認証団体は乱立していて、なにがなにやらのカオス状態なんだとか。しかも豚肉大好きな華人人口が拮抗しているので回教圏でも認証が特に厳しいマレーシア基準を日本ではよく採用してるそうで、そりゃそしたら高くつくこともあろうかと。韓国はその辺うまくやってるんでしょうね。下は頁25。

フィフィサンはそういうレポートをSNSでいろいろやってる(やってた)人なんですね。なるほど。フィフィサンは大学の二外がチャイ語だったみたいで、それでそれなりに中國にも関心があるんだなと。エジプトがガザ封鎖に協力してるのとは無関係に、ニューヨークでユダヤ人に、ユダヤ人も豚を食べないから豚肉ソーセージじゃないよと言ってもらったのがうれしかったりしたようです。だから長崎市の原爆式典にイスラエルが招かれなかったことで欧米も出席見合わせるニュースでも、たんなるイスラエル批判でなく、目の付け所がちがう。

でもまあ、ハリウッドのパレスチナ無視なんかは頁128に書かれています。ハラルのくだりで錦糸町の東京ムスリム飯店が出て、知らなかったのでべんきょうになりました。冬に森下に行く時に寄れたら寄ります。

頁111、回教の「回」はウイグルから来てると書いてますが、これは諸説ありというやつで、確かに歴史上のウイグル突厥が突如消えたあとのウイグルは「回紇」と書かれましたが、回教の「回」はウイグルでなくスーフィーの旋舞から来ている説のほうが信ぴょう性があると私は思っています。現在の中国回族の祖先はトルコ系でなく、パクス・タタリカ、大元ウルスのもとの色目人の末裔で、おそらくイル汗国から来たペルシャ系。彼らの保存する経典がアラビア語でなくペルシャ語で書かれており、西北回族スーフィーのジャフリーヤが多い(©張承志)というのが、その論拠。下は山川の世界史用語集の「ウイグル」で、現在のウイグルとは宗教も文字もちがう。

イスラム教徒が日本武道を称える箇所、頁110では、当然山下泰弘サンと戦ったエジプト代表モハメド・ラシュワンサンが出ます。痛めた箇所を攻めなかった、美談中の美談。で、ローマで日本人女子大生をナンパして日本刀で脅したイラン人空手家アリ・カバキは出ません。当たり前か。

頁163体毛剃りのくだりで、女性のVIOゾーン処理について考察してますが、吉原の遊女が線香で陰毛を毛根から一本一本焼き切っていたことまでは触れられてません。祥伝社の本だからか、売春なんかにも触れてますが、女性なんだから無理せんでええしと思いました。エマミ・シュンサラミサンのイランの本*1で理解した方がいい。割礼の箇所では、ユダヤ教キリスト教と米国の包皮切除手術事情について触れていて、青沼貴子サンの育児まんが*2でもわが子の包皮切除をするか否かで炎上というか賛否両論盛り上がったのを思い出しました。

女子割礼の箇所でもかつてアメリカでも同じ風習があったと書いていて、そうなんだと思いました。が、エジプトの問題としては書いてなくて、私も前はそう思ってましたが、エジプトの女性作家が自らの経験として女子割礼を取り上げている*3のを知り、フィフィサンは知っててあえてエジプトを明記してないのか、知らないのか、どっちだろうと思いました。頁166。

ジハードに関しては、9.11以降、アルカイダ弾圧の名目でアフガンに侵攻した米国への反発から生まれた子どもに「ジハード」という名前をつける親が増えたとしています。しかし、じゅうらいもそういう命名はあって、ジハードは「通常は女の子に付けられる名前」なんだそうです。へえ。ジハードはもともとは聖戦と訳されることばではなく、「各員一層奮励努力せよ」の奮励努力みたいな意味合いなんだとか。皇国の興廃此の一戦に在り。

フィフィサンはダーイシュ、アイエスのような歪んだイスラム過激派を「イスラム国」と呼ぶとイスラム全体へのネガキャンと言う意味で語弊があるという立場で、さらに自国のムスリム同胞団は反欧米的思想があるので欧米がわざと歪んだ報道をしてイスラム過激派扱いをしていて、日本もそれに追従していると手厳しいです。でもアフガンのタリバンイスラム過激派に入れてる。ただし、タリバンは従来型の「土着型組織」としていて、ペシャワール会と中村医師が「田舎の神学生」としているのと認識としては変わらないのかなと、でも、バーミヤンの石仏を爆破したなどの蛮行は肯定されえないので、テロ組織扱い。頁196。

頁132。かつてエジプトはアラブ圏内の映画製作大国だったが、海賊版の横行で収益が減少し、テレビに製作がシフトしたんだとか。ここで、イラン人監督が撮った脚の部分だけでラブシーンを描写した映画を撮り上げているのですが、監督名も作品名も書いていないので、さっぱりさっぱりでした。本書は、ところどころ、推敲のときに抜け落ちてる印象の箇所があります。ちょっと急いだか。レバノン映画を一つ書いていて、それはちゃんと作品名も監督名も出してます。ブルキニを考案したのもレバノンルーツの豪州人ですし、やはりレバノン人は一目置かれる存在なのか。フィフィサンによると、ロシアや中国など、検閲の厳しい国家のクリエイターほどそれを乗り越えるため燃えるので、傑作が生まれやすいとか。なんの制限もない環境では制作陣も弛緩。今日見た「ウルヴァリンデッドプール」がまさにそうでした。ひどかった。でも現在のロシアや中国は、もう検閲が一線越えてしまい、駄作しか世に出なくなってる気がします。劇場で、かつて日韓ワールドカップの時に香港映画「少林サッカー」かけて記録的なヒットしたので、二匹目のドジョウを狙ったのか、中国のスケボー映画否ブレイキン映画をかけているのを見ましたが、面白い映画になってることを祈ります。

頁137、ベリーダンサーの箇所で、ベリーダンスは回教が登場する以前からベドウィンなどが踊っていた舞踊だが、イスラム教では人前で肌の露出を最小にするようコーランに書いてあるので、

頁137

 つまり、人前で肌を露出して踊っているベリーダンサーたちの多くは、イスラム教徒ではないということです。ペルシャ語圏であればゾロアスター教徒、エジプトだったらコプト教徒(古代のキリスト教)、レバノンやトルコならキリスト教徒の女性が踊っていることが多いです。

これがホントかどうかはさておいて、ベリーダンサーまんが『セクシー田中さん』の著者の意見も訊いてみたかったですが、もうおなくなりになられているので、永遠に訊くことはない。私の考えでは、ベリーダンサーにはアメリカ人女性が多い印象。でもフィフィサンによるとダンスの本場はトルコとエジプトで、検索すると、フィフィサンと言う名前のエジプトのベリーダンサーが出ました。その人が踊る動画は見つけられず。

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218イスラムの本来の土葬は土葬というより風葬で、盛り土をせず風化するにまかせるとか。でもそれだと野犬やカラスに遺体をついばまれないのでしょうか。チベットの天葬のように、積極的に死体をつつかせて善行を積むわけでもなさそうですし。

私はフィフィサンと師岡カリーマ・エルサムニーサンの対談をどこかでやってほしいのですが、まだ見てません。ハッサン中田孝サンとは、下記のつぶやきを消していないのはかえっていさぎよいので、これも対談してもよいかもと思います。しないでしょうけど。

本書で言ってる「ムスリム・フレンドリー」の想定対象はマレー人、インドネシア人で、それは何故かというとやっぱり日本から近いからで、それだけアラブは日本から遠いということで。そして実態としては、両者の中間のバングラディシュやパキスタン、インド、スリランカムスリムが意外とたくさん日本にいます。アフリカ黒人の回教徒も、ガンビア人が神戸で神社ぶっ壊したくらいだからいるんでしょうが、クリスチャンのナイジェリア人やガーナ人、ケニア人に会うことが多いです。とまれ、本書は面白かったので、フィフィサンの一冊目の著書も読んでみます。そっちもブッコフで¥220税込。以上