『影の監視者』(世界ロマン文庫 7)読了

影の監視者 (1970年) (世界ロマン文庫〈7〉)

影の監視者 (1970年) (世界ロマン文庫〈7〉)

宮部みゆき編の恐怖アンソロジー*1に出てくる、
ランボーの原作者の小説が面白かったので、短編集*2を借りたところ、
エッセーも収められており、マレルが大学のエディターズスクール的なところで、
講師のウィリアム・テン(フィリップ・クラス)から、恐怖を描くなら、
ハウスホールドは読んだことあるかね、と聞かれたそのハウスホールドを、
じゃあ読んでみようと借りました。正直いうと、この本だと、
主人公は訓練を受けているという設定ですし、感情をコントロール出来てる。
最近読んだディックの小説みたいに、悪夢の中でどうこう崩壊いうような、
わけの分からない、座標軸を喪失する恐怖はありませんでした。
主人公はかなり理知的。パニクったりしない。

この筑摩の世界ロマン文庫全20巻、知りませんでしたが、
開頭の初刊が紅はこべだったりで、騎士とか紳士みたいな枠かなと思いました。
シリーズには、常盤新平や吉田ケニチ先生訳もあるようで、
そしてさらにケニチ先生が訳した一つがパトリシア・ハイスミス
読んだか読んでないか全然覚えてませんが、ケニチ訳ハイスミスは、
あった、存在してた、という記憶はあります。

紅はこべ Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%85%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%B9

頁294「私はそんな人間じゃない」これ以下の文がなければ、
この小説の評価半減するところでした。
現実にこんなセリフをこの状況で吐ける人間はいませんので、
それはフィクションだけが描くことの出来る世界で、
だから人間は物語を創作する意味があるんでしょう。
作者は人間の意志力、そして善を信じていたんだなと思います。
そしてこの時代、前世紀はまだ、人間にそれを紡ぐパワーがあった。
以上

Watcher in the Shadows (English Edition)

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