『四人組がいた。』読了

四人組がいた。

四人組がいた。

この人が、破防法じゃなくて、先ごろ成立したアレについて、
京都新聞に書いていた文章を他の方のブログで読んで、
なんとなく借りてみた本です。
作者初のユーモア小説ということで、
肩ひじ張らずに読めるなと思って。が。

この人はマークスの山やらレディ・ジョーカーやら、
名前忘れたけど中国人の暗殺者の話とか、いろいろ読みましたが、
八王子スーパーの事件以降、現実がフィクションを凌駕したという理由で、
推理小説断筆宣言して、その当時は腕組みしてしまいましたが、
その後の第一作、『[日逭]子情歌』を、
読んで、「囘」という感じを知り、それがこの人の小説最後の読書体験でした。
で、近作はどんなんですかなと検索して、
いちばんライトっぽい(ウヨっぽいという意味ではなく、軽いという意味です)
感じだったので、これを読んだわけですが…

まず、この小説は、中華人民共和国プロレタリア文化大革命
その首班の上海閥と言われるが実は由来山東の、
江青張春橋姚文元王洪文とはなんの関係もありません。
ましてや、華国鋒主席の要を摘んでどうこうおいてをや、とは 毫无关系。

本州の、首都圏に車で行けるくらいの、町村合併で消滅した村の、
元村長だの元助役だのの首脳老人四人組(紅一点有)の四方山話です。
途中から、この村は誰も死なないだの誰も税金収めないだの、
誰も免許持たずに運転してるだの、タヌキとかクマが、
平然と会話に加わってくるだの、で、現実離れもいい加減にしてよアグネス!
と言いたくなってしまいます。

登場する動物と人間が対等か否かは、
鹿などの、鍋の具になる動物は、会話仲間に入ってないという、
例のアレの法則が発動してると思いましたが、
実は鹿とも会話してる場面を、見落としてるかもしれません。
そして、それでいてネット社会や、フーゾクが、
簡単に文脈に絡んでくるので、笑いとしてはかなりアレで、
しかし、風刺はあまりなく、こんな社会や政治けしからん、
少子高齢化老老介護問題から切りこんだりはしません。
切りこんだほうがウケたと思うのですが…

私のつたない読書歴を掘り起こして思い返すと、
例えば三匹のオサーンもそういう要素あったし。

三匹のおっさん (文春文庫)

三匹のおっさん (文春文庫)

東直己の義八郎商店街もそういう要素あったし。
義八郎商店街 (双葉文庫)

義八郎商店街 (双葉文庫)

西木正明のガモウ戦記もそういう要素あったし。
ガモウ戦記 (文春文庫)

ガモウ戦記 (文春文庫)

そういう要素を入れなかった作者は、やっぱり、
まじめな人なんだろうなあ、と思いました。以上

あと、蛇足でいうと、農業集落の老人が、こんなにヒマであるわけない。
寸暇を惜しんで草むしりくらいするはずなので、陽がな一日だべる、
という設定は、フィクションというかロマンスだと思いました。
あと、柿の実をもがず、強風で落ちたのを拾い集めるという描写、
(頁125)落ちたのはえんだり傷物だったりなので、落ちる前に、
もぐんでないかいフツーは、と思いました。以上

【後報】
下記を読んで、久しぶりに高村薫の小説を読もうと思った次第です。

http://d.hatena.ne.jp/cangael/20170619/1497829597

了承を得てトラバしました。(2017/7/23)