- 作者: 大竹聡,矢吹申彦
- 出版社/メーカー: ウェッジ
- 発売日: 2017/11/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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小田急線
ウェッジって、サピオみたいな路線と思ってましたが、
こんな本も出版しようとわ。新幹線グリーン車の車内誌
「ひととき」に2014年から三年半連載した企画に、
書き下ろしなど加えた本。お店情報は、2017年10月に、
改めて確認作業をおこなっているようで、そっからして、
一行「データは掲載時のものです」を加えてお茶濁してる、
ボン百の酒場紀行とはつくりが違うんですよと思いました。
まー著者の本を読んできてる読者としては、京都のあの店、
神戸のあの店の近況を読んで息を吞むわけですので、
それを避けて通っては礼節上スジが立たないのは分かるので、
ほかのコンテンツもきちんと更新、がなされたのだと思います。
著者が自由に作った本で、店の選定に一切嘴挟まれなかったそうで、
なので、著者の特色、大都市では必ず呑み屋以外にバーが入ります。
シメの店で乱れずおいしくお酒を頂ける、おとな飲みが理想なんだと、
改めて思います。記憶喪失の対極は、乱れず味わって飲み終えることなのかと。
こだま停車駅というと、ローカル駅だけと思ってしまいますが、
「こだまもひかりものぞみも止まる駅」も含みますので、
東京新横浜名古屋新大阪広島博多含みますし、浜松や品川もデカい。
これまでの筆者のデータベースが大都市では生きてくるのですが、
これがここちよいです。熱海の志賀直哉オキニの洋食屋とか、
小倉の有名中華料理店とか、名前を出さずそこに「ある」ことに、
さらっと一行触れて文章を進めるところとか、ウマいです。
で、長い路線ですので、中国地方のローカル駅はさすがにやや薄い気がしました。
三河安城や岐阜羽島でまず辛いだろうと思ったのですが、まだ近いので、
地の利というか、たんねんに取材して突破してますが、中国は流石に、
やや遠かったか。新岩国などは、岩国までタクシー飛ばす、という設定で、
なんとか形をつけています。(米原でまず苦しかったのか…)
で、九州上陸すると、長年の北九州角打ち取材のつもる経験が生きて、
また手に取るように店を転がし始め、鬼気迫る感じになります。
シッタカ(頁22)とか、ナガラミ(頁66)とか、貝ですけど、
居酒屋って感じで、よかったです。著者は天才だと思うのですが、
(初めてそう思った)鮨飲みそば飲み中華飲みバル飲みと、各種取り混ぜていて、
居酒屋一辺倒で攻めてこないので、実にあきがこなかったです。
読んでいて。頁106で日本酒豆知識、頁165でワイン形容と、
スタンダードな仕事もきらりと光るように入れていて、なんというか。
熱海では豪華ゲストでマイク・モラスキーが出てきます。
吉田類や太田和彦やラズウェル細木を出してもいいんでしょうが、
モラ様の人が出てきたので、大笑いしました。
頁231 博多
気分がいいのは、スマートフォンをテーブルの上に出している人がほとんどいないということだ。ときどきスマホに目をやるばかりで人の話をまともに聞かない。酒場でそういう光景に出会うほど味気ないものはない。しかし今夜は、その心配は無用だ。
イラストはカラーです。で、祇園のくだりに改めて、
敬意と弔意を表します。以上
ながらみ
この本、イラスト上手いのは勿論なんですが、取材は、著者ひとり、
のように見えます。一人なのでメニューいろいろ頼めず、
的な文章がちょくちょく挿入されているので。著者がデジカメで撮って、
それをイラストレーターに送って、絵にしてもらってるのかも。
司馬遼太郎と須田画伯とか、山口瞳とトリスだか帆船の画伯でしたか、
ペアで旅行してさらには当然そこに編集者もいたであろう、的なことは、
この本の取材過程では発生しなかった、それだけ活字業界余裕ないのか、
と思いました。
(2018/1/10)