『酔いどれ探偵』(新潮文庫)読了

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http://www.aga-search.com/809-3curtcannon.html

後は後報で。

【後報】
なぎら健壱の『東京酒場漂流記』*1の内藤陳深夜プラスワンのくだりから、
須賀田さんシリーズを読み始めたわけです。

ちくま文庫版東京酒場漂流記 頁293
まあいいか、気分はもう、酔いどれ探偵のカート・キャーンだ。いやアル中探偵のマット・スカダーか?
 さあ、飲るぞ!!

で、もうひとつのシリーズは、検索で、キャーンは誤植で、
正しくはキャノンだと分かりました。

酔いどれ探偵街を行く (ハヤカワ・ミステリ文庫)

酔いどれ探偵街を行く (ハヤカワ・ミステリ文庫)

『暴力教室』のエド・マクベインの別名義小説で、たいそう人気があったとか。

日本でもたいそう人気があったのですが、原作のストックが尽きて、新作が出ない。
そこで、編集長のアイデアで、出版権代行のタトル商会の了承を得た上で、
訳者の都筑道夫にパロディというか贋作を書かせたのだそうです。
で、タトルとの約束で、主人公の名前をカート・キャノンからクォート・ギャロンに換え、
贋作であることを明記して単行本化しました。その文庫本がこの本。

ややこしいと思いました。

解説ではこの本を贋作、パスティーシュとしていますが、読んだ限りでは、
これは現代でいえば、同人小説と呼べばそれでいいのではないか、と思いました。
カヴァー、オマージュ、リメイク、トリビュート。
確か上条淳史がZINGY一巻のオマケのコマで、
音楽ではリメイクやカヴァーは当たり前なのに、
なぜマンガではめったにないんだろう、みたいなことを書いてたのを思い出します。
http://ecx.images-amazon.com/images/I/51myOCd9lQL._SS500_.jpg
勿論今は、秋田書店から聖闘士星矢ブラックジャックがぼこぼこ出てくるし、
新潮社のバンチには北斗の拳パスティーシュがぼこぼこあった気がします。
作者も、この小説で味を占め、顎十郎捕物帳のパスティーシュを手掛けるようになります。

頁166
男はポケットに両手をつっこんだまま、そり身になって、おれを見おろした。
「どこへいっても、若く見られるんだ。人徳だな」
「馬鹿だ、という証拠かもしれないぜ」

頁245
「お前も日本人なら、この男に恥しいと思えよ。きさまたちがつかまったら、日本商社の名が汚れるんだぜ」
「おれは日本人じゃねえよ。日本で生れたというだけだ」

こういうセリフが出てくるのは、日本人の作ったパスティーシュならではという気がします。
支那という呼称も出てくるし、薬の売人はちゃんとプッシャーとルビ振ってます。
しかし、木賃ホテルと書いてもくちんとルビを振っているのが分からない。以上
(同日)