『ジミー、野を駆ける伝説』(原題:Jimmy's Hall)劇場鑑賞

今週のお題「今だから言えること」
私の曾祖父が十代の頃に書いた日記を何かの拍子に発見し、読んだのですが、
元日に一年の計を述べて仰々しく日記を開頭、
三日後には早くも空白を生じ、二月の声をまえに、白いページが続くだけの、
美しい、想像力を喚起する日記となっていました。

流石我が祖先。

内容は、概ね、父親との確執。具体的にいえば、
冬は農閑期なので主に夜なべ仕事や雑用ということになるのですが、
それを父親に言い付けられることへの愚痴、反発。
夜になると口論して、親戚の家や、集会所に逃げ出して酒を飲んだり遊んだり。
もう一度発掘出来ればここに画像を貼っておきたいですが、
非常にどうでもいい内容です。
ほぼ一世紀を生き抜いて陽の目を見た日記である意味がない。
百年の孤独中二病

でまあ当時の若衆宿というか青年団の集会所や、
日記を書くことを奨励した農村教師、村の知識人(西洋医学を学んだ医者)、
などの聞き語りを、この映画を観てふっと思い出し、
吉野源三郎ワールドだなあ、鶴川の自由民権資料館まだ行ったことがないので、
病院のついでに行ってみようか、と思ったりしました。

町田 自由民権資料館
http://www.city.machida.tokyo.jp/bunka/bunka_geijutsu/cul/cul03/

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

我々の神奈川県県央も養蚕が盛んでしたので、
秩父の騒動とは音叉のように連鎖して鳴動しておった、
広範な後背地のひとつであった、ということだと理解しています。
吉野の農村教育啓蒙活動は長野県だったように記憶していますが、
日本は狭いので、神奈川でも当然そんなことはあった、と。
(同様に、日本や台湾は狭いので、毛沢東の遊撃論は無理。殲滅必至)

公式:http://www.jimmy-densetsu.jp/
監督のWikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81

この監督の代表作はアイルランド独立戦争と内戦を描いた『麦の穂を揺らす風』ですが、
今回の映画は、民族より階級対立(アイリッシュワールドの地主と借地人、
労働者の対立)が主題で、ほんとにこの監督は左派なんだなと思いました。
映画の中でも、主人公とその仲間たちは、教会勢力とどう宥和するかは模索しますが、
アカ呼ばわりされることは全く否定していません。
仲間には、「コムレイド(同志)!」と呼びかけている。
"I believe my neighbor, my fellow men, my class."と大喝したり。

私は所謂アイリッシュの訛りがどういうものか知らないのですが、
"o"を「オー」と発音するところなんかがそうなのかな、と思いました。
U2が"Sunday,bloody Sunday"を歌う前のトークで、
ワンデーをウォンディと喋ったりする、アレ。
"One day, Irish members stop fighting each other."みたいな。コムウィズミー。

主人公は、いかにもオルグとか好きそうな、モテの中年男性として描かれ、
ために非常にリアルでした。働いてるシーンが、予告の草刈りの場面しかないという…
ほかのキャラも、いつ働いてるんだろうと不思議でした。
不況で苦しい時代のはずなのに… 現代のほうが、時間泥棒か何かに、
時間を盗まれているのかなあ。そうも思いました。
でも私の曾祖父の日記を見ると、毎日山積する畑仕事と、サボタージュしたい、
出来ない辛い、そればっかりなので、映画だからみな働かないのかと思いました。

銃弾を撃ち込まれるところは、昔大阪を訪れた時、
まだ山一戦争の興奮が冷めやらぬ頃でしたので、
ごく普通の商店街や銭湯なのに、友人が、散歩の途中、
撃ち込まれた跡など指し示してくれたのを思い出しました。
それと、中国の地方都市で、文革後期紅衛兵同士の内戦で、
占拠した中ソ蜜月時代ソ連技師が設計したアパートに銃座銃眼つけて、
給水を狙い撃ちした跡とか、を見たのも思い出しました。

火事のシーンで思い出したのは、うまく検索で出てきませんが、1986年元日の、
横浜関帝廟と、お隣りの、どっち系だったか忘れた、中華学校の焼失。

日本の華僑 (朝日文庫)

日本の華僑 (朝日文庫)

さいごは、「いまを生きる」じゃないんだから、と思いました。
アメリカに追放されたあと、あちらでもサッコ&ヴァンゼッティみたく、
赤狩りスケープゴートになって、今度は死刑、みたいにならなくてよかったです。

サッコ・ヴァンゼッティ事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BC%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3%E4%BA%8B%E4%BB%B6

同じ後発移民でも、アイリッシュはイタリア系とは違うから、それはないのかな。以上