- 作者: スタンリイエリン,仁賀克雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/01/14
- メディア: 新書
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その後難しいのだなあ、とか、欧州が舞台の小説が多いな、
と思いながら読んでましたが、終盤、ぐっと面白くなりました。
仁賀克雄あとがきは、米国批評家の本書評価を引用したり、ブレッシントンメソッドは、
計画と訳すより方式、と書いたりしています。
頁19 エゼキエレ・コーエンの犯罪 The Crime of Ezechiele Coen(1963)
「こんにちはシャロム」
「シャロム」ノアが答えると青年の顔が輝いた。彼の手にマジックのように一組の絵ハガキが現われた。
「絵ハガキはいかが? ほら、ローマのさまざまな写真です。ユダヤ教会堂の内外も写っている。あなた、アメリカの人でしょう? 地元の同胞じゃなくて」
頁119 十二番目の彫像 The Twelfth Statue(1967)
サイ・ゴールドスミスが遅れてメルと肩を並べた。熱さがとりわけサイにはこたえているようだった。きのうのあから顔はどこかへ消えてしまい、黄色っぽく、斑点があらわれ、唇は病的な紫色を呈していた。しかし目だけは生き生きと輝きをまし、とろんとした濁りは消えていた。一時的にせよ酒を断った証拠なのだ。
頁283矍鑠クラブ…現在ならお達者クラブと訳すのでしょうが…
当時苦肉の策でこう訳して、江湖に定着しなかったのだなと思います。
「天国の片隅で」A Corner of Paradise(1975)
頁303 世代の断絶 Generation Gap(1976)
「いいこと、もうあんな男はいやよ。聞いているわね? それからもう一つ。誰かが車を止めたとき、シートの上に六本入りのビールのケースが置いてあったら、乗ってはだめよ。そんな車で、よく事件が起こるんだから。これからは家庭持ちの車だけにするのよ、聞いている?」
缶ビールのように思いますが、バドの小瓶かもと思いました。
栓抜きなしで開けられるやつ。この短編がいちばん面白かったです。
嫌なほうに厭な方に話が進んでいくのは、世の推理小説一般の売れ線なのか知りませんが、
私はそれは読みたくないですし、そうならずに面白いのがいいです。
「内輪」The Family Circle(1977)…これは逆に、優柔不断、流されることの怖さの話で、
虚栄は慎むべきと思いました。あとご機嫌取りは自分のためにならないと。
頁354痙攣ティック…少し考えて、「チック」と呼ばれるアレか、と分かりました。
「不可解な理由」Reasons Unknown(1978)
レイオフの話です。今思いましたが、レイオフとリストラって、どう違うんだろう。
レイオフは雇い止めかな?
Yahoo!知恵袋
レイオフとリストラの違いがよくわかりません。 ... - 一般教養
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1449376319
日本にはこれを上回る労働者派遣法があるわけですが、この話は、
読者の誰もが予想するブラックな裏切りオチを採用しなかったので、
そこに作者の誇りを読み取りました。かっこいい。以上