『孫文の女』 (文春文庫)読了

孫文の女 (文春文庫)

孫文の女 (文春文庫)

久々の積ん読シリーズ

帯文句
名もなき女たちが歴史を作った!
孫文の滞日中に夫婦同然に暮らした二人の日本人女性、
マダガスカル島バルチック艦隊の極秘情報を入手した日本人娼婦など、
東アジアの命運を左右した女たちのドラマ。

装画:松山ゆう 装丁:関口聖司 解説:保坂正康

西木正明という人は、高野秀行の本だったかなんだったかで、
早大探検部OBの座談会で、まず取り上げられていた人物で、
善悪の彼岸みたいなオッサンなんやなと思い、それでそこそこ読みましたが、
その時には、この本が家の本の山にあったことなど露とも知りませんでした。
孫文の名前に惹かれて買っただけで、当時は作者の名前など知らなかったです。

この本のほかの作品は、本州と北海道の動植物の境界線、
ブラキストン線に名前が残るブラキストンのレコの話と、
満洲お菊の話(夕日と拳銃とか、狼の星座が好きな人ならご存知かと)
孫文以外は、いわゆるくろうと筋の女性の話です。
孫文は、ペドとは云わんけど、なんちゅうか桂小五郎、みたいな。

くろうとがくろうとになる理由も時代、としかいいようがないですが、
孫文の最初の日本のナオン、宮崎滔天らが世話したそうですが、
清水次郎長直系の乾分の娘さんで、父親と親分さんが相次いで急死すると、
社会保障もクソもない時代なので、滔天も内縁の妻ならどうならと世話し、
しかしもっと上玉が現われると孫文は目移りし、滔天も裏切られる心外革命。
不治の病結核になってそのままやねんし、かわいそうでした。

西木正明というひとは、本人が何度も何度も作品化してること、
書かずにいられなかったことで、大学時代好いた女性が黒人とくっついて、
黒人は食うためにアラスカで長距離運転手やって、彼女もアラスカで、
決してうまくはいってないのですが、はるばるアラスカを訪れた西木に、
つけいる隙もなく、西木はアラスカで現地女性とくっつき、暮らし、
子どもも出来、日本で職探しして必死に稼ぐも、二人はうまくいかず、
彼女とこどもはアラスカに帰り、西木は日曜日朝遅めに起きて、
冷えた麦茶をちびちびとやりながら朝刊に目を通すと、
というくだりが、ほんとは飲みたいのに昼から飲むと、
頭脳の働きが鈍るから麦茶なんだろ、と読むたび思い、
そして、今回この本を読んで、結局作者は、最後まで、
自身の原体験に縛られていて、女性について何を書いても投影されてしまう、
しかしそれは全然悪い事じゃない、我々も承知の上でそれを読むんだ、
と思いました。以上