公式 http://usukeboys.jp/
新宿武蔵野館に日本酒映画とカンニング映画を観に行ったついで、つなぎの時間潰しに見た映画ですが、その前に見た映画より遥かに面白かった。
ワインに賭けた僕らの夢 数千年のワイン造りの歴史に挑み、それを乗り越えようとした日本の革命児たちの実話
麻井宇介さんの本は少しだけ読んでいて、ノンフィクションのウスケ・ボーイズも読んでたのですが、まさかこれが映画になるとは思わなかった。麻井宇介さんの著書は素晴らしいのですが、NHKドキュメンタリーなどで紹介するパターンかなと思いましたし、ウスケボーイズの本は、毀誉褒貶というか、レビューが賛否両論荒れていて、こりゃ敵がいるんだなと思ったので、映画化されるとは思ってもみませんでした。
実際、実話インスパイアという手法は、海外ではかなりぶっとんだ素材でも使われてますが、国内では、この人は映画にして美化しちゃダメでしょ、というリミッターが、けっこうまだ強く働いていて、それはそれで健全な証拠と思うからです。このボーイズのうち、いちばんクセが強いなと読んでて思った人物が、東京03の真ん中というか、身長173cmの杏でないほうの渡辺謙のお子さんが演じていて、そうきはったかと思いました。あれですよ、剪定とかも、手をさくさく動かさず、ずっと葡萄の木の前にたたずんで、禅の公案というか、利休のわびさびみたくじっと考えて、あげく一本だけハサミ入れてみるという、普通の農家からしたら、なにをごたくならべてサボッとるんじゃと見られても仕方がない果樹への取り組みをしてる人物として描かれてましたので、それがいちばんのイケメンなのかと。
で、ムコ養子と、農家の息子と、リタイア二名(リーマンとして生きてゆかないと将来がこわい人と、使い勝手のよい労働力の「オンナ」として見らていたことに深く傷つく女性)農家の息子が、『童貞。をプロデュース2』の主人公に時おり見えました。この女性は、メイクしてるんでしょうが、ほぼスッピンに見える顔で全編登場し、スゲエと思いました。酒蔵映画のカワエサンと比べてはいけないのでしょうが、カワエサン、前半肌荒れてて、メイクの上からでも、赤いのが分かった。飲みすぎだろか。ウスケボーイズのこの女性役の人は、スマッシュヒットです。素晴らしい。安達祐実も、個性を発揮したと思います。
で、彼らのワイン研究会は、予告の冒頭見て貰えば分かると思いますが、本当に、誰からも嫌われる存在としての「オタク」そのもので、専門用語を知ったように駆使して、ついていけない初心者を笑いものにするという、最低の農大生サークルなのですが、その彼らが、存在意義を根底から覆されて足元をすくわれる国産ワインに逢うところから物語が始まります。それが麻井宇介のワイン。思想のあるワインです。
たぶん麻井宇介という人は、なんの道に進んでも思想を導入したと思われるのですが(湯川秀樹みたいだ)戦争等がどうでこうで、ワインの道に歩んだことがまず幸甚。その麻井宇介を、家族はつらいよが演じてるのですが、うまかった。脚本の勝利かもしれない。セリフのひとつひとつが、麻井宇介という人物の大きさをにょにつに現わしていて、素晴らしかった。
妻よ薔薇のようには、宇介のセリフを、例えば、「ひとの問題」を「しとの問題」と、江戸っ子はっちょんするのですが、麻井宇介さんは実際に東京出身だったらしく、それで合ってる、正しいと後で検索して理解しました。
麻井宇介 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%BB%E4%BA%95%E5%AE%87%E4%BB%8B
で、彼らはあらゆるルートで、個人として後天的に農業に参入しようと三者三様の手を尽くすのですが、ここで彼らが試みなかった手法として、前世紀末には、企業の農地取得が法改正で認められていたので、就職先の企業を動かして、濃縮ナントカとか補糖とかしないワインづくりをプレゼンして、勤め先の企業の事業として推進するという手はないものか、と思いました。シリコンバレーのワインづくりのように。
で、そこが、まさに、この映画が、小説同様、何かの戦いの主戦場になってる気がするです。どうもそんな気がする。ヤフー映画のレビューでも、どうしたらおいしいワインが作れるかのノウハウや秘訣が映画で語られるわけではありまっせん、みたいなレビューがあったりして。ええやん、須玉で、垣根作りで、ピノは植えないで、ひょうとかバンプ病とかに気をつけてやるしかないやん。
そう、左側に座った老紳士が、ワイン通らしく、テロワールがどうのとかで嗤う場面で即反応してましたし、日本では育たないピノを千五百本発注して宇介に大喝される農家の息子の場面でも、まっさきに笑ってました。タバコのにおいがする喫煙者でした。
全然関係ないですが、この映画の音楽は西村真吾という人で、同姓同名ブラボー。
君よ、信じた道を進め。弱音を吐く前にこの映画を観よ。静かに優しく、君の心を支えてくれるだろう。迷わず観て、一歩前に!
公式トップページに何故か三池崇史のこんなセリフがあって、なんでこんなこと三池崇史に云われなならんのだろうと思いましたが、ひょっとしたら、劇場がぜんぜん増えてない現状と関係あるのかもしれません。
ワインづくりにシンパシーのある長野では上映館複数あるし、山梨でも新潟でも上映してるのに、関東が公開後これだけ経っても一館のみという。神奈川どうしたなら。ゲーマーワインはなくなったけどもさ、という感じ。新宿武蔵野館、私が見た午後の回は満席でした。千円デーではあったのですが。
劇場にあった年表。ワイン用のブドウは、中央線で勝沼とかいくと、屋根というか傘みたいに広げてるのが見えるあの方式でなく、垣根のような形に育成するべしという個所。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%82%BA_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%AE%E9%9D%A9%E5%91%BD%E5%85%90%E3%81%9F%E3%81%A1
英語タイトルは、マドリッド国際映画祭から。
http://www.madridinternationalfilmfestival.com/madrid-madrid-asia-2018-full-winners-list/
マドリッド国際映画祭は、今年は東京03の真ん中の人、もとい渡辺謙の娘杏、否、息子さんが受賞ですが、昨年は鈴木紗理奈が受賞してるとか。
東スポWeb 2017年07月20日 16時30分
鈴木紗理奈マドリード国際映画祭「主演女優賞」以前から演技力に定評
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/711304/
2015-02-05『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150205/1423140453
<私が読んだ麻井宇介著書(分かる分だけ)>
2014-10-19『美酒楽酔飲めば天国』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20141019/1413724767
2013-08-27『酒・戦後・青春』 (酒文ライブラリー)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20130827/1377539552
2015-05-08『ワインづくりの思想 銘醸地神話を超えて』 (中公新書)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150508/1431088933
<麻井宇介著書で紹介されてた本(分かる分だけ)>
2014-11-14『牧夫フランチェスコの一日―イタリア中部山村生活誌』 (NHKブックス)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20141114/1415965403
2014-11-14『肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見』 (中公新書)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20141114/1415965012
2014-11-13『趣味の価値』(岩波新書)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20141113/1415890666#20141113f1
ドサクサにまぎれて載せる、台風で田んぼに飛んだビニルハウス。保険未加入。ほんと、大変だと思います。自然相手は。
以上
【後報】
遺跡発掘のアルバイトがありますが、私も無職だった時面接受けに行きましたが、確かフルで働いても一ヶ月手取り十万円にもならず、雨が降ったらお休みなので、フル労働は机上の空論に近いという話でした。言っちゃなんですけど余暇で働くシニア世代以外は、すねかじりみたいな人が多いですよと云われました。で、その頃、民主党政権で仕分け事業があって、専門業者が自治体から直接受注してやってたのが、委託また委託みたいな、安くあげるためにどんどんおかしくなっていくので、さきゆき不透明ですと、重機が扱える正社員の人が言ってました。そういうところでアルバイトしながら農業ってのが、なんともと改めて思いました。コンビニとかだと仕事内容の落差が激し過ぎてダメなのかな。かといって産廃やふつうの土建業にも馴染めないのかもしれないと。
(2018/10/27)