『妻は密入国者』読了

妻は密入国者

妻は密入国者

積ん読シリーズ。
Amazonゾッキ本扱いしててクリックしたような気がするけど、よく覚えてない。
作者は福州在住とのことですが、
この本の内容はすべて福清出身者と結婚した知人から聞いた話、とのこと。
前半は新米蛇頭マッサージ嬢奮戦記、後半は知人自身の話。
1999年当時の時相を緊密に描写していて、面白かった。
ドライでたんたんとした筆致も、内容に合っています。
ワープロ版下みたいなのも、時代。

頁38
「少し金を貸してくれないかな」
 そんな中島を見て曹小姐は憤慨したが、二人は気持ちを押さえ、ビザを申請してくれれば貸してもいいと告げた。
「またお金、いったいいくら貸したらいいの」
「一〇万円程貸してくれないかな」
「貸してもいいけど絶対申請してよ」
 金に困っていた中島は、自分の住まいが国の保護施設になっているから申請してもビザが取れないと再び告げた。そしてこれを理由に正規のアパートを借りて、住所移転して申請するのでまとまった金が必要なのだと言った。無論アパートを借りるつもりなどなく、金だけもらい住所移転は適当な知人宅へ移そうと考えていた。自分の住まいが国の保護施設になっていることは、中国渡航前に恵小姉に告げていたのだが、偽装結婚相手の獲得に夢中だった二人の小姐は、その時は、「没関係」(かまわないの意味)と言っていたのだ。

頁46
茶店を後にして二人は別れた。このまま帰ってしまう恵小姐を見送り大橋は少しがっかりした。しかし、そんな気持ちを見透かしていたかのように、家に帰ると妻の葉小姐に言われてしまった。
「あなた、恵小姐が好きですか」
 何のことはない、その日のうちに、外で恵小姐に会ったことは曹小姐から妻に通報されていたのである。その上、妻の親戚から、
「お兄さーん、そんな相談にのって危ないよ」
 と言われてしまった。
「恵小姐と曹小姐は入国管理局でもしも聞かれたら、妹たちはお兄さんに紹介されて結婚したって言うよ。日本にいる中国人は皆怖いよ」

頁66
 陳小姐は義理の姉の国民健康保険証を借りて産婦人科へ行き出産した。もっとも義理の姉と陳小姐は年齢が一〇歳以上も離れているし、国民健康保険証には義理の姉の子供の名前も記入されていた。医師が診察すれば初産の陳小姐は、別人とすぐ解ってしまう。
 だが子供の出産の少ない現在では、医師も商売優先である。無事出産することが出来た。

中国嫁日記*1とかから見ると、隔世の感が。
もう今、日本人は中国人から見て、そんなにオイシくないと思いますので、
せいせいした感じだと思います。
記録としても読めるけど、
中国嫁日記とは明らかにレイヤーの違う中国人の日本語を、
よく写してるとも思いました。