『世界の酒』 (岩波新書)読了

世界の酒 (岩波新書)

世界の酒 (岩波新書)

著者の『日本の酒』は読んだので*1
じゃあこちらも読んでみようかということで借りました。
国税庁の機関誌というか定期刊行物『財政』に連載された、
1950秋〜1951春の外遊記録を基にした本だそうです。

戦後まもない頃なので、ドイツは空爆の跡がぼこぼこあって、
イギリスはチャリングクロスなんとかにも書かれてる通り、
戦勝国のはずなのに物資欠乏の耐久生活です。

チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)

チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)

頁90
私の行った頃は、外務省の在外駐在員がデンハーグにいたほかは、オランダには日本人はいない。街を歩いても、インドネシヤの独立で虎の子の植民地を失ったのは日本人のせいだ、と思い込んでいるような冷たい目つきや、いやな口ぶりに出会いがちで、おのずから夜の散歩などもひかえめになる。

日蘭関係 オランダとの戦争
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E8%98%AD%E9%96%A2%E4%BF%82#.E3.82.AA.E3.83.A9.E3.83.B3.E3.83.80.E3.81.A8.E3.81.AE.E6.88.A6.E4.BA.89

司馬遼太郎の本で、
アムステルダムからジャカルタへの遷都を本気で考えていたとかなんとか、
読んだ記憶があります。

街道をゆく〈35〉オランダ紀行 (朝日文芸文庫)

街道をゆく〈35〉オランダ紀行 (朝日文芸文庫)

クワイ川鉄橋で、オランダ人捕虜関係者に会ったこともあります。オランダもフィッシュアンドチップスのスタンドがそこらじゅうにあるのですが、
マヨネーズやケチャップなど付け合わせの調味料を選ぶ時、
インドネシアの調味料サンバルも選べたので笑った思い出があります。酒の薀蓄では、下記が面白かったです。

頁39
ところで山野の狩で取る肉類にはいいつたえがあって、そこでできる銘醸を使ってはならない。だからブルゴーニュに行った時は名産の鶉や鷓鴣が出てもそれにはボルドーを使い、ボルドーではそこの兎や猪にはシャムベルタンやメルキュレなど、ブルガンディー酒を使うことになる。

【後報】
日本では酒の保存期限が短い(沖縄はまた別)ので、古酒と比較する習慣が形成されず、
容易に大衆の好む味が変わってゆく例として、日本酒以外に下記を挙げています。

頁30
明治初年までは全部粕取り焼酎(戦中戦後に一時はやったおなじみのものではなく、酒粕を蒸溜して取る日本酒古来の蒸留酒)であった。明治の中ごろ西洋から新式の蒸溜機が輸入されて、芋から純粋なアルコールがとれるようになって、その方法によるいわゆる焼酎会社が方々にでき、旧来の粕取り焼酎にその製品の純アルコールを混ぜて出しはじめた。そのアルコールの割合が年とともにだんだんふえてきて、しまいには焼酎というものは純アルコールを水でうすめたものと一般に思われるようになった。昔の粕取りの香が少しでもするようなものは、売れなくなった。大衆の嗜好をすっかり馴養してしまったのである。

(2014/1/10)

【後報】
この本のカタカナ表記は現在のそれとかなり異なっており、
何故そうなったのかなど考えると面白いので、以下順不同列記します。
カッコ内は現在のマジョリティー表記(と私が考えるもの)です。

キャンチ(キャンティ
ラクリマ・クリスチ(ラクリマ・クリスティ)
アスチ(アスティ)
ヴィニ・スプマンチ(ヴィニ・スプマンテ
スパゲッチ(スパゲッティ)
アペリチーフ(アペリティフ
パトリオチスム(パトリオティズム
オーガスチン(オーガスティン)
プリミチフ(プリミティヴ)
チオ・ペペ(ティオペペ)
アモンチリャド(アモンティリャード)
クリスチナ女王(クリスティーナ女王)
ダンチッヒ(ダンツィヒ
アスツリアス(アストゥリアス
ウォツカ(ウォッカ
イタリー、イタリヤ(イタリア)
アルメニヤ(アルメニア
ロンバルジヤ(ロンバルディア
モンテフィヤスコネ(モンテフィアスコーネ)
マルバシヤ(マルバシア)
アッピヤ街道(アッピア街道)
ヴェネチヤ(ヴェネツィア
シシリヤ(シシリア)
ハンガリヤ(ハンガリー、ハンガリア)
インドネシヤ(インドネシア
アラビヤ(アラビア)
カリフォルニヤ(カリフォルニア)
アルジェリヤ(アルジェリア
スカンジナビヤン・エヤーライン(スカンジナビア航空
ロシヤ(ロシア)
バヴァリヤ(バヴァリア
サンタ・マリヤ港(サンタ・マリア港)
ビーヤ(ビアー)
パエリャ(パエリア)
アンダルシヤ(アンダルシア)
セヴィリヤ(セビリア
ストーン・スクェヤ(ストーン・スクウェア
オーストラリヤ(オーストラリア)
シベリヤ(シベリア)
グルジヤ(グルジア
アルメニヤ(アルメニア
バクテリヤ(バクテリア
シャムパン(シャンパン)
クオ ヴァジス(クオ・ヴァディス)
メジウム(メディウム
エジンバラエディンバラ
ピノー・ノアル(ピノ・ノワール
ニョクマン(ニョクマム、ヌクマム)
ドム・ペリニョン(ドン・ペリニョン
マルテル(マーテル)
ブルガンディー(バーガンディ)
ビスマーク(ビスマルク
クルボアジー(クルボアジェ)
ブケー(ブーケ)
パルフュム(パフューム)
シャトー・ラフィッツ(シャトー・ラフィット)
キャルヴァドスカルヴァドス
カルルスベルヒ(カールスバーグ
ジュトランド半島(ユトランド半島
ハイネッケン(ハイネケン
ゴルドン(ゴードン)
ギルベー(ギルビー)
ウトレヒト(ユトレヒト
クールハウス(クアハウス
オペール(オペル
レーウェンブロイ(レーベンブロイ
シャボテン(サボテン)
デカンター(デキャンタ)
アングロサキソン語(アングロサクソン語)
ニュー・ファウンドランド島(ニュー・ファンドランド島)
カッピー(コピー)
コムパニー(カンパニー)
カナペ(カナッペ)
カクテール(カクテル)
フォア・ローズ(フォア・ローゼス)
醱酵(醗酵、発酵)
カオリャン(コーリャン
ダグスタン(ダゲスタン)
クーミス(クミス)
アッピール(アピール)

下記は、本書と現在とで同じ表記です。

ヴァチカン
モンゴリアン
フィレンツェすなわちフローレンス(頁8)
マルティニ
ドライマルティニ
アカシヤ
リースリング
ヴァラエティー
ダニューブ(ドナウ)
チューリッヒ
ユングフラウ
ヴァラエティー
アルボア
ミュンヘン
ビヤホール
オリーヴ
ゴヤ
ビスケットといっしょにサーヴ
スコッチ
(2014/1/18)