『趣味の価値』(岩波新書633)読了

趣味の価値 (岩波新書)

趣味の価値 (岩波新書)

http://pds.exblog.jp/pds/1/201009/27/03/a0051903_21225613.jpg<目次>
はしがき
葡萄酒の経済学
スコッチとアメリカン・ウィスキー
紅茶物語
ダイヤモンドの価値
スイスとアメリカの時計
 −ウォルサム時計会社の破綻と再建−
国際商品としての郵便切手
美の商人たち
 −なぜロンドンが国際美術品市場の中心となったか−
ペルシャじゅうたんの美
 −アルメニア商人・マンチェスター商人・ロンドン商人−
美術蒐集家としての石油人
 −蒐集のたのしみ−
索引

表紙画像はこちらからお借りしました⇒http://caffetribe.exblog.jp/11342692/

脇村義太郎 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%87%E6%9D%91%E7%BE%A9%E5%A4%AA%E9%83%8E

「プライスレス」とか「お金じゃ買えない」とか、そういう話はないです。
上記の各趣味の市場規模とか総額とか、主だった国、サプライヤーについて記述した本です。
初出は岩波「世界」と書き下ろし。

世界の名酒事典のエッセー集めた本*1の中の、
麻井宇介の随筆『酒書彷徨』で紹介されてた本です。

頁20
社会主義化されたイギリスでは葡萄酒をのむ量は少なくなるだろうとはじめはいわれた。なぜならば、よい葡萄酒はよい食事につきものなのに、厚生国家では食事は単純となるから。しかし厚生国家が、豊富な食事を提供できないならば、むしろ、反対に、葡萄酒を味覚刺激剤として充分に、安価に大衆に提供すべきではないかという説もあった。

頁25では、スコッチの琥珀色は執筆当時すでに樽の色ではなく、
キャラメルで色付けだったと、
長い交渉の結果ようやく許可された工場見学で即座に聞き取っています。

頁32
エジンバラの外港リースでできるこの「オールド・パー」が日本人に有名になったのは戦前ロンドン駐在の一大使がイギリス外務省の高官から親類のつくっているもので、軟かくて病人用に適していると病気見舞に贈られて覚え、愛用していたというだけである。

頁152で、トラブゾントレビゾンドタブリーズをタブリッツと書いたのも、
興味深かったです。

トラブゾン Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%96%E3%82%BE%E3%83%B3
タブリーズ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

以下後報
【後報】
後半は文化資本の話が目につきました。
頁168で、ロックフェラーⅠ世は美術に関心を示さなかったが、
同時代のモルガンは美術品を収集した、というところで、

ロックフェラーは中等程度の教育しかうけていなかった。モルガンは、国際金融業者としては二代目で、スイス、ドイツに学んで、そこで大学課程の教育をうけ、父のもっていたロンドンの邸宅、ドーヴァのカントリーハウスを受けついで、イギリスの上流階級の生活をたのしむことを青年時代に覚えた。

など。
また、頁188で、ジーン・ポール・ゲッティという富豪が、富や美術品について、
定期的に寄稿してたのが『プレイボーイ』で、稿料を受け取らず、
稿料相当の寄付金を出版社から彼指定の公共事業に贈らせていた、
というところも面白かったです。日本の文筆家兼実業家というと、
西武の堤のひとなんか思い浮かべますが、こういうことしてたかどうかは知りません。

ジャン・ポール・ゲティ/ジーン・ポール・ゲティ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%86%E3%82%A3

この本があくまでプラグマティックな本である点は、
美術品収集やコレクションのところで、贋作かそうでないか審議される作品ケースを、
特に紹介している所からも伺えます。そりゃ資産価値変わりますね。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/6f/Leonardo_da_Vinci,_Ginevra_de%27_Benci,_1474-78.png
Bildnis der Ginevra de’ Benci Wikipedia
http://de.wikipedia.org/wiki/Bildnis_der_Ginevra_de%E2%80%99_Benci
(2014/11/14)