『「酔いどれ家鴨」亭のかくも長き煩悶』 (文春文庫)読了

「酔いどれ家鴨」亭のかくも長き煩悶 (文春文庫)

「酔いどれ家鴨」亭のかくも長き煩悶 (文春文庫)

ヘンな名前の
パブの推理小説
シリーズ第四弾。

いつものとおり、
カバーは和田誠

一軒の店が、
看板のオモテウラで、
ブラックスワン」亭と
「酔いどれ家鴨」亭に
変わるそうですが、
それとストーリーの
関連がよく
分からんくなってます。

今回の舞台は、
シェイクスピアゆかりの地、
ストラトフォード・
アポン・エイヴォン。
この、アポンとか
付くのは何故なんですかね。
河内長野とか、
大和郡山喜連瓜破
みたいなものでしょうか。

ブライヅヘッドの読書感想*1
書いた時には気付きませんでしたが、
ダウントンアビーとかもやってるし、英国貴族ブームなんですかね。

NHKのダウントンアビー
http://www9.nhk.or.jp/kaigai/downton2/

頁270
 ジュリーは寒気をもよおした。「いいですか?」と、メルローズデカンターからブランディを少しもらった。「あなたは?」
「うん、一杯飲んでもよさそうだね」メルローズは時計を見やり、「まあ、少なくとももう午後だし。アガサはぼくがアルコール中毒に向かってつっ走ってると思っているんだよ。

メルローズというのは爵位を返上した元貴族なのですが、
それでも変わらぬ領地とかいろいろからのあがりと、
自身の非常勤講師だかなんだかの収入で、登場シーンは割と飲酒シーンです。
シェリー、ポート、ワイン…キングスレーエイミスなんか*2で、
英国貴族はそういうものを飲むと知っていたので付いていけました。よかった。
でないと、ビールもスコッチも出て来ないパブ小説の意味が分からなくなるところだった。
というか、このシリーズでは、スコットランドヤードという単語は出てきません。
ロンドン警視庁と訳されています。
今回はアメリカ人ツアー客の話なので、バーボンを飲むシーンが初めて出てきます。

頁113
 伯母さんが、メルローズにはそう思えたのだが、人間になしうる唯一のかしこい返事をした。
「ジンを持っといで」
「あらあら、ヴァイオレット伯母さま、サックヴィル先生がそういうことをどうおっしゃるかわかっているでしょ!お酒に手を出してはいけません。おいしいお茶を一杯、それなら――」
 黒檀のステッキがテーブルの脚を強く叩いた。「あんな好き者のおいぼれが何と言おうと知ったこっちゃないよ――」ここでメルローズを見やって、「――あの医者はタンパじゅうの女と寝てるんだからね――」そしてまたシクラメンに、「ジンと言ったんだよ、わたしは。ダブルにしておくれ」

フロリダ在住英国人老婆の台詞です。
庶民はジン、貴族はポート、シェリー、ブランディ、ワイン。
ビールとスコッチ、アイリッシュウイスキーは何処に。

頁90
 ジュリーはヴォリューム満点の英国風朝食というのがどんなものか知っている。缶入りオレンジジュース、コーンフレーク、卵一つ、運がよければベーコン少々、水っぽい“グリルド”トマト。お代わりをたのむ気になれるのはオリヴァー・トウィストぐらいのものだろう。

改めて思い起こしますが、この小説の舞台はサッチャー時代のイギリスなんですよね。
当時の邦人留学生が、ホームステイ先の単調かつ少量の食事に、
しじゅうおなかをすかせていたのを思い出しました。失業手当と、
留学生のホームステイのあがりなどで食っていた中の下階級のイギリス人。
とにかく量が多ければ正義のアメリカ人もうんざりしていたことがこの記述で分かります。
作者も一作一作と書き進むにつれて、通り一遍のアングロファイルから現実へ、
シフトしようとしているのかどうなのか、これからも読んでいこうと思います。

あと、過去の作品のキャラが再登場し、これからまた絡んできそうですが、
さっぱり思い出せないので、自分の記憶力のお粗末さも困ったものだと感じています。以上

<これまでの作品の読書感想>
『「禍いの荷を負う男」亭の殺人』 (文春文庫 (275‐29))読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20141214/1418541708
『「化かされた古狐」亭の憂鬱』 (文春文庫 (275‐30))読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150107/1420635711
『「鎮痛磁気ネックレス」亭の明察』 (文春文庫) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150116/1421408647

The Dirty Duck

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