『 寝ても覚めても本の虫』 (新潮文庫) 読了

寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)

寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)

カバー装画 谷山彩子
本文中のイラストは著者。
平成13年新潮社より単行本刊。
文庫化時第Ⅳ章追加改訂。
あとがきにかえてと文庫化に寄せて有。
解説なし。
読んだのは平成二十三年六月の第二刷。
カバー折の著者紹介で、同年の享年が記されてるので、
お亡くなりになられて、それで増刷、の経緯が見て取れます。

初出はトーハンのPR誌「ラック・エース」1996/4から四年「至福のとき」、
同誌1997/4から1999/12までの「本棚のすき間から世界を覗く」、
新潮社「波」1993/11〜2001/4「エンターテインメントnow」に加筆訂正。

作者は洋書を原書で読む人(エンタメ専門)で、これは、新刊邦訳のスピードを、
読書のスピードが上回ってしまったからやむをえず始めたことだったとか。
自社で邦訳するかどうか分からない新刊洋書を紹介させた新潮社、
洋書は取次が違うのに紹介させたトーハン、どちらも太っ腹で、素晴らしいです。

第四章は文庫追加で、NHK「英会話レッツスピーク」連載から幾つか抽出して、
当代女流作家それぞれ、原文引用で、こんな文体です、こんなですねん、
といって紹介してますが、それぞれの機微が私には全く分かりませんでした。
この人はこうブツ切りで、この人はこう体言止めで、この人は冒頭にガツン、
とかいろいろあるそうなのですが、英語であること以外さっぱりわからへんだ。

これも、ボーツー先生と福田和也の文壇アウトロー時事放談で、
読んでみようと思った本です。

2018-03-09
『不謹慎 酒気帯び時評50選』THE HOTTEST TABLE TALK SERIES:2010-2012 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180309/1520601711

以下後報
【後報】
作者 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%90%E7%8E%89%E6%B8%85
作者 人物 読書人として Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%90%E7%8E%89%E6%B8%85#%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E5%AE%B6%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6

頁16、徳田秋声『縮図』は読んでみようと思います。

縮図 (岩波文庫 緑 22-2)

縮図 (岩波文庫 緑 22-2)

頁16
(前略)読み出した途端に奇妙な感覚に捉われたが、読み終えたときにはこの世はあたかも別世界、周りの女性という女性が、燦々と光り輝く太陽に似て、眩しくてまぶしくてちゃんと見られなくなったのだ。さあ驚いた。同時に何だか急に自分が恥ずかしくなってきて、電車通学の途中も周囲の乗客からジロジロ見られているようでいたたまれず、顔を赫くしてじっと下を向いている有様。
 文庫本を読むのには都合が良いスタイルだが、心はあらぬ方へ飛んで落ち着かない。ヒロインの銀子が頭にへばりついて離れず、着物姿の女性を見てはドキリ。襟元や袖口が気になってドキドキ、着物の蹴出しがちらりとでもしようものなら、昇天しそうになるほど。

そんなすごい本なら読んでみようかと。
大事な大事な、アタック・チャ〜ンス(棒
頁21、松田瓊子『紫苑の園』も読んでみようと思います。

紫苑の園/香澄 (小学館文庫)

紫苑の園/香澄 (小学館文庫)

頁21
(前略)日頃姉の少女小説趣味を苦々しく感じていた僕は、ことあるごとに“いい年して、センチで甘ったるいお涙頂戴の綺麗きれい本に溺れるのはみっともない。早く脱皮せよ”(略)
 そんなある日、僕は姉の部屋にそっとしのびこんだ。本棚から少女趣味の典型的な奴を一冊無断で持ち出し、いかにこういった本が下らないかを力説してギャフンと言わせてやろうと考えたからであった。(略)表紙には当時一世を風靡した中原淳一描く、あの独特の夢見る瞳の少女が可憐な花を手に愁いのポーズで立っていた。(略)意気揚々と読み始めた。ところが、やがて何だか奇妙な気持ちになっていった。徹底的にこきおろそうと読めば読むほど、話にひきこまれていく自分に気付いたからだ。
 これはいかんと思いつつ次第に感動の波が心の底からこみあげてくる。ヒロイン香澄を中心にくりひろげられる心清らかな少女たちの物語に、ついには不覚にも涙がこぼれ落ちた。なんと美しくきれいな心の世界なのか! 清々しさに心洗われる感動の余韻に包まれ、僕は本を手に茫然としていた。

読書家が脳内でだけユニセックスになる典型かと。
大事な大事な、アタック・チャ〜ンス(棒
下記も読んでみようと思いましたが、キリがない。というか、この辺りから、
リクエストしないと近隣の図書館蔵書がない。おそらく新刊大量購入で、
スペースがなく漸次放出処分されていくのであろうと。
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51c9LrM-FML.jpg

頁31
(前略)ヒロインは三十六歳になる元ストリッパーのシェリーで彼女の同棲相手は札つきの前科者ハンク。物語はシェリーが酔っぱらった彼に猛烈に殴られ、仕返しに同じく酔っぱらっている彼女が反射的にカセットプレイヤーで男の額を叩いたところあっさりと死んでしまったことから始まる。彼女は警察に逮捕されるが、ハンクが名うての前科者であったことが幸いして無罪放免となる。しかし、以前にも増して一層酒浸りの毎日となってしまう。世間にとっては悪人でも、ハンクは彼女にとってはベッドではかけがえのない最高の男だったのだ。
 そんなある夜泥酔した彼女は暴漢に襲われ、こっぴどく殴られ病院にかつぎこまれる。意識の戻った彼女は病院で禁酒生活を強いられる中、重大な決意をする。突如やる気が湧いてきて、まっとうに世の中を生きてみようとはじめて本気で考えたのであった。かくして就職したのが「マイアミ・ピュリティ・クリーニング店」。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%BB%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3-%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%BC-%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/dp/4900845132

頁35、1996年10月の書評。グレシャム陪審評決に関連して、近年ハリウッドでは、
喫煙シーンが消えたと書いています。PL法の時代。昨年一昨年も、そんな感じ、
でしたので、こういう波は何度も揺り返し揺り戻すのだろうと思いました。

陪審評決〈下〉 (新潮文庫)

陪審評決〈下〉 (新潮文庫)


Ashes to Ashes: America's Hundred-Year Cigarette War, the Public Health, and the Unabashed Trium ph of Philip Morris

Ashes to Ashes: America's Hundred-Year Cigarette War, the Public Health, and the Unabashed Trium ph of Philip Morris

https://books.google.co.jp/books/about/Ashes_to_Ashes.html?id=dxI_us9Tq-QC&source=kp_cover&redir_esc=y

頁47以降、トムクランシーの『日米開戦』『合衆国崩壊』が、
日本のジャンボ・ジェット747旅客機による神風攻撃で、
崩壊炎上するワシントンの国会議事堂
という、
同時多発テロを予告したというか、
ヒントを与えた小説であったことに触れていて、それは知りませんでしたので、
フーンと思いました。マイケル・ベイパールハーバーがヒントと思ってた。

日米開戦〈上〉 (新潮文庫)

日米開戦〈上〉 (新潮文庫)

Debt of Honor (A Jack Ryan Novel Book 6) (English Edition)

Debt of Honor (A Jack Ryan Novel Book 6) (English Edition)

合衆国崩壊〈1〉 (新潮文庫)

合衆国崩壊〈1〉 (新潮文庫)

Executive Orders (A Jack Ryan Novel Book 7) (English Edition)

Executive Orders (A Jack Ryan Novel Book 7) (English Edition)

で、それで、なんで友好国日本が悪役になるのん、と、疑問を呈しています。
私がネトウヨなら、得たりとばかりに、中韓による悪しきロビイスト活動の成果、
と嬉々として満面の笑みを浮かべて回答すると思います。困ったもんだ(棒
米中開戦 1 (新潮文庫)

米中開戦 1 (新潮文庫)

米朝開戦 1 (新潮文庫)

米朝開戦 1 (新潮文庫)

検索したらこんな近刊もあるそうで、ご安心召されといった感じ。アホか。
大事な大事な、アタック・チャ〜ンス(棒

頁93
(前略)僕はドイツの白ワインが大好きだ。フルーティでフレッシュ、爽やかな飲み口に、どこの国でも、料理があんであろうとも、前菜、魚、肉料理すべてをドイツ白ワイン一本槍で通す。それもできることならモーゼル・ザール・ルヴァーの逸品の銘柄で……。だからワインに関しては、いつもお子様ランチだと笑われるが、実はなぜか赤ワインにとても弱いのだ。
 もともとアルコールに格別強くないせいかもしれないが、四十年ほど前の学生時代、国産赤ワインの口当たりの良さに、つい飲みすぎて猛烈にひどい目にあったことからくる潜在的恐怖症なのかもしれない。理由はともかくあのまったりというか、こくと渋みのある赤ワインを飲むとめちゃ酔いしてしまうのだ。
 二十数年前、当時はめったに口にすることができなかった、幻の銘酒といわれたフランス、ブルゴーニュロマネ・コンティをがぶ飲みできるチャンスがあった。友人の一人フランス通の教授が張り込んで大量に買ったのである。

作者の文章に出てくるフランス通はだいたい篠沢秀夫だと、
勝手にたかをくくってますが、如何に。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%A0%E6%B2%A2%E7%A7%80%E5%A4%AB
大事な大事な、アタック・チャ〜ンス(棒
下記はシドニイ・シェルダンの自宅を訪れた際の記述。

頁100
部屋に通されてからずっとキョロキョロと辺りを見回していたのだが、一つのことが気になっていた。それは、書斎のどこにもタイプライターやワープロが見当たらないことだった。
「どこで書かれるのですか、まさか手で書かれているのじゃないでしょうね」と質問すると、大きな声で笑われてしまった。彼は最初の頃から、ほとんど全作品が口述筆記であるとのこと。秘書の女性が彼の口述する文章を記録し、コンピュータで処理するのだそうである。
 彼の本の読み易さの要因はここにある訳で、平易な言葉を使った語り口で綴られる文章は、読者の心に素直に流れ込んでくる。彼の作品が広く読まれる人気の秘密の一端をうかがうことができた。

あと、グリシャムのペインテッドハウスは読んでみます。

A Painted House

A Painted House

頁284
(前略)舞台はアーカンソー州の片田舎で、チャンドラー一家は八〇エーカーの借地で綿花を栽培して生計を立てていた。この日、綿花の摘み取りの仕事のために、俗にヒル・ピープルと呼ばれる人々やメキシカンたちが、季節労働者としてトラックに乗ってやって来た。今年もまた、祖父母そして両親と共に、熱い綿花摘み取りの闘いの季節が始まったのだ。
 助っ人の季節労働者の家族との接触、喧嘩や暴力沙汰、野球への情熱、女性への憧れと好奇心、長雨や洪水など自然との闘い……多感な七歳の少年の眼と心を通して、綿栽培にかける一家の生活が淡々と綴られていく。天候と相場に翻弄される綿花栽培業は一家を過酷に揺さぶり、なかなか借金地獄を抜けだせない。家を塗装するための塗料を買うお金すらなく、木造の家はいつまでたっても白木のままだった。つまり『A PAINTED HOUSE』とは、この地にあっては豊かな生活を象徴する言葉なのである。

しかし、原書で読める利点として、採算が取れなかったり、
大人の事情で邦訳が途中で途切れたシリーズも、全巻読めるんだなあと。
うらやましいです。

例えばチベット政治犯刑務所になぜかひとりだけ収容されてる漢人
中国経済部主任監察官が探偵役の、エリオット・パティスンの、
下記シリーズの四巻以降。チベタンネイティヴアメリカンの相似など、
アメリカ人以外誰からも好まれない方向にスイッチしたので、
それで出てないと推測してるのですが…

Eliot Pattison Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Eliot_Pattison
Inspector Shan Series
1.The Skull Mantra (1999)
2.Water Touching Stone (2001)
3.Bone Mountain (2002)
4.Beautiful Ghosts (2004)
5.Prayer of the Dragon (2007)
6.The Lord of Death (2009)
7.Mandarin Gate (2012)
8.Soul of the Fire (2014)
9.Skeleton God (2017)

2012-11-12『頭蓋骨のマントラ』(上)(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20121112/1352731547
2012-12-08『シルクロードの鬼神』〈上〉〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20121208/1354900522
2012-12-25『霊峰の血』(上)(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20121225/1356437948

マーサ・グライムズの変わった名前のパブシリーズも、
既刊23冊のうち、14以降が未訳ですが、これも原書が読めるなら無問題。
2016-05-08『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影―警視リチャード・ジュリー』 (文春文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160508/1462655875

14 The Case Has Altered 1997年 未訳
15 The Stargazey 1998年 未訳
16 The Lamorna Wink 1999年 未訳
17 The Blue Last 2001年 未訳
18 The Grave Maurice 2002年 未訳
19 The Winds of Change 2004年 未訳
20 The Old Wine Shades 2006年 未訳
21 Dust 2007年 未訳
22 The Black Cat 2010年 未訳
23 Vertigo 42 2014年 未訳

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%BA

ハリイ・ケメルマンのラビ・スモールシリーズも以下同文。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3

9.Someday the Rabbi Will Leave – 1985年
10.One Fine Day the Rabbi Bought a Cross – 1987年
11.The Day the Rabbi Resigned – 1992年
12.That Day the Rabbi Left Town – 1996年

2017-01-04『金曜日ラビは寝坊した』(ハヤカワ文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170104/1483476141
2017-03-05『土曜日ラビは空腹だった』(ハヤカワ・ミステリ文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170305/1488697244
2017-03-25『日曜日ラビは家にいた』(ハヤカワ・ミステリ文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170325/1490391554
2017-06-28『月曜日ラビは旅立った』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170628/1498596243
2017-07-26『火曜日ラビは激怒した』〈ラビ・シリーズ〉(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170726/1501087243
2017-08-21『水曜日ラビはずぶ濡れだった』(ハヤカワポケミス)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170821/1503325004
2017-09-11『木曜日ラビは外出した』(ハヤカワポケミス)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170911/1505138698
2017-10-12『ラビとの対話』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20171012/1507809230

須賀田さんシリーズとか、今読んでるフロストシリーズのように、
全巻邦訳されるのは僥倖である、と思います。以上
(2018/4/12)