『日本幻想文学大全 I 幻妖の水脈みお deep waters』 (ちくま文庫)読了

編・解説:東雅夫 
収録作品一覧⇒http://trackback.blogsys.jp/livedoor/genyoblog-higashi/32476458
(編者ブログより)
カバ−デザイン:山田英春
装画:金井田英津子

台湾カルチャーミーティングのレジュメにあった、
台湾を描いた日本語文学の一つ、佐藤春夫『女誡扇綺譚』が収められてたので、
借りました。日本人の本は、あと何があったか確認しようとしましたが、
レジュメ紛失してます。陳舜臣邱永漢の両大人除くと、あとは庄司総一『陳夫人』…かな?
ほか、台湾少数民族作家も読もうと思ってますが、レジュメにあったのが、
シャマン・ラポガンなのかワリス・ノカンなのかもう分かりませんorz

台湾カルチャーミーティング出席感想
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160425/1461529991

<レジュメにあった本 順不同>
東山彰良『流』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160108/1452211952
殿山泰司『三文役者のニッポン日記』 (ちくま文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160514/1463225691
中島京子『のろのろ歩け』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160516/1463379698
林真理子『女文士』(新潮文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160518/1463554282
司会訳『歩道橋の魔術師』 (エクス・リブリス)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160524/1464102230
『猫の泉』 (日影丈吉選集 Ⅳ) 読了 …『消えた家』収録
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160525/1464124974
吉田修一『路ルウ』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160530/1464572118
よしもとばなな『王国 その3 ひみつの花園』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160601/1464726515
『日本文学全集66 現代名作集4 埴谷雄高安部公房中村真一郎藤枝静男他』(筑摩書房)読了
 …埴谷雄高『虚空』収録
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160620/1466395596

それはそれとして、この本、(1)私は源氏物語など読んだことがなく、
夕顔も知ってるつもりの人生でしたので、読めてよかったです。
ハーン耳無芳一、折口死者の書漱石夢十夜(断片的には読んでた)、
乱歩押絵と旅する男、足穂一千一秒も同様。(2)雨月物語崇徳上皇の話、
私が読んだ児童向けの本では、仏法僧が「ぶっぱん、ぶっぱん」と鳴いたり、
相模が「羯諦、羯諦」と言ったりした記憶があるのですが、そういう描写なし。
高野聖も冥途も桜の森の満開の下も、記憶とかなり違っていて、
デカダンだと思っていたものが、けっこう俗で、飯の内容とか、肌の脂とか、
むかしは読んでも頭に入らなかったのだと思いました。(3)三島や都筑道夫
小松左京など、(1)(2)が有名どころばかりなので、どうなるのかと思っていたところに、
「知らないけど読めてよかった」作品がひょっひょっと出てきて、よかったです。
(4)註の有無がよく分かりませんでした。引っ張ってきた元に註があるかないか、
だけなのかな。

頁237 高野聖
 すると医者の内弟子で薬局、拭掃除もすれば総菜畠の芋も掘る、近い所へは車夫も勤めた、下男兼帯の熊蔵という、その頃二十四五歳、稀塩酸に単舎利別(38)を混ぜたのを瓶に盗んで、内が吝嗇じゃから見附かると叱られる、これを股引や袴と一所に戸棚の上へ載せておいて、隙さえあればちびりちびり飲んでた男が、

(38) 薬剤を調味するシロップ。稀塩酸に混ぜると甘ずっぱい飲み物となり、胃酸の不足を補う薬として用いられた。

こんな描写まるで記憶にないです。

頁389 女誡扇綺譚
「そうだろう、ありゃ泉州人ツエンチャオナンの言葉だものね」
 普通に、この島で全く広く用いられるのは厦門エイムンの言葉で、それならば私も三年ここにいる間に多少覚えていた――尤も今は大部分忘れたが。

泉州厦門って、そんな違うんですかね。福州なら台湾にはなじみのない言葉と思いますが。

頁416 女誡扇綺譚
「愛蓮説のうちの一句だね。不蔓不枝。――だが女の扇にしちゃ不吉な言葉じゃないか。蔓せず枝せざるほど婦女にとって悲しい事はあるまいよ。どうしてまた富貴多子にでもしないのだろう――平凡すぎると思ったのかな」
「一たい幸福というのは平凡だね。で、その富貴多子とかいうのは何だい」
「牡丹が富貴、柘榴が多子さ」

頁418 女誡扇綺譚
 私は先ず第一に酒を飲むことをやめなければならない。何故かというのに私は自分に快適だから酒を飲むのではない。自分に快適でないことをしているのはよくない。無論、新聞社などは酒よりも先にやめたい程だ。で、すると結局は或は生きることが快適でなくなるかも知れない惧れがある。だが、若しそうなら生きることそのものをも、

頁465、一千一秒物語ムーンシャイン常盤新平の本などで、
禁酒法時代やジャズエイジについて知っておいてよかったと思いました。以上