ブッコフで取り寄せたこの人の昔のマンガ。今だと¥110で買えるみたいですが、もう少し出した気瓦斯。
装丁 川谷康久(川谷デザイン) 本文DTP 小林寛子 編集担当 石井麗 営業担当 明田陽子
もともと集英社の「Cocohana」に2012年9月号から2013年7月号まで『ピンクビールアワー』のタイトルで連載した作品に描き下ろしを加え、改題して単行本化したとのこと。巻末のスペシャルサンクスにはそのへんいろいろ謝辞があります。
帯。そういうわけで『凪のお暇』に合わせての刊行ではないようですが、この帯は『凪のお暇』を意識していて、2014年9月の初版でなく2019年6月の五刷を買い、それの帯ですので、増刷は『凪のお暇』に合わせてだったと思います。
カバー(部分)英題は、改題の英訳でなく原題のアルファベットそのまま。原題を残したかったんでしょうか。思い入れがあって。
カバーをとった表紙と、折り返し。主題になってる架空のビール缶のデザインが水玉模様なので、それを意識したデザインです。『恋する二日酔い』命名者立場なし。だから、巻末で「頭があがりません」と、イーストプレスの編集者サンに最大限の謝辞が捧げられてるのかもしれませんが… 集英社が原題使用許可出さなかったとか、そういう可能性はないと思うんですが、『【推しの子】』集英社とか読んで、本名すら名乗れない人格ナントカ権の芸能界とは何ぞやと日々考察してる人だと、そういううがった深読みをする人もいるかな。
帯裏。このように、架空のビール銘柄を狂言回しに、13の短編が連作してゆくという構成です。連作してないかな。駅のベンチで飲む女性は紙袋にビール缶を隠して飲むという、スパイク・リーのドゥザライトシングに出てくるじいさんみたいな飲み方で、本人もニューヨークスタイルと言ってますが、私はアムステルダムで路上飲みしようとしたら中国人の雑貨店主が紙袋に入れてくれて、そうしないと法に触れると言っていたので、そういう都市は結構多いんだと思います。だからインバウンドは渋谷が治外法権だと勘違い、かな?
「元恋人の結婚式で出会う男女」だけ、ストーリーで攻めてきた話で、この人にしては珍しい、コナンくんのような話でした。「女優崩れのガールズバー店員」は下のような話で、『珈琲いかがでしょう』の歯がボロボロの青年の歯列矯正版としても読めます。
頁58。『珈琲いかがでしょう』の頃はもう違うのですが、この頃の作者サンは、コマとコマのあいだの余白部分すらその存在がもどかしかったようで、ぜんぶ線にしてます。コマとコマのあいだの余白がない。それだけ画面に詰め込みたい絵がたくさんあったということだと思います。それがだんだん、年数を経て、絵を描きたくないからコマとコマのあいだの余白を出来るだけ大きくとるようになってゆく、人もいます。コマとコマのあいだの白い空間は、スヌーピーなど、アメリカのマンガで既に確立されていたマンガ文法が日本でもそのまま使われているもので、私はアメコミ読まないから知りませんが、ひょっとしたら回想シーンの余白は黒でベタ塗りするなどの文法も洋の東西を通じて共通してるのかもしれません(してないかもしれません)
「天然おデブ姉と小悪魔系な妹」は下記で、ネトラレとかそういうのが以下略です。
頁102。『凪のお暇』になる前の絵柄はこんなんだったんですね。この人の酒マンガは、『ひとりで飲めるもん!』も読みました*1が、『宅飲み残念女子ナントカ』という作品もあるようで、しかしブッコフでも¥440なので、ペンディングです。
頁4と頁59と頁90。こういうの見ると、やっぱり作者の人は美大とかデザイン系の中央線沿線青春群像だったのかなあとの思いにとらわれます。真ん中のオバサン(たぶん本人にオバサンと言ったら以後口きいてくれない確率258%)が着てるのがパーカーに見えるのですが、パーカーオバサンっているんだろうか。パーカーでなく、ジャイケル・マクソンがスリラーで着てたような肩パッド服なのかもしれない。それが個性、そのおしゃれが中央線沿線青春群像。右の兄ちゃんはゴンという名前で、『凪のお暇』に昇華する前の身近な存在だったのかそうでないのか。「卒業式で飲み明かす学生たち」
頁114の若い二人は皮から餃子を作っていて、実は中国でも若い世代はどんどん皮から餃子を作れなくなってるので、日本育ちで親を見ていたので皮から餃子を作れる人たちかと思ってしまいました。で、具を「キムチ+チーズ」や「豆腐」や「シーフードと干し椎茸」「トマト+チーズ」などいろいろ変わり種にしているところが、日本育ちだからかと再度思ってしまったり。でも、「はんぺん+りんごジャム」の具の水餃子、どうなんだろう。誰の発想なのか。
頁69。これだけ依存症の話。フリル主婦。首長い。全自動洗濯機とマンションのベランダというと、これも『珈琲いかがでしょう』に同じモチーフあったなあと思いました。これだけ完璧に「整ってる」人が酒が手放せない展開だと、実は外見もいじっててお金がかかってるのが現実なのですが、そんなこと言わんでもみたいなまんがです。作者にとって、こういう人はこうでないと(フリル主婦)イカンのかもしれない。
頁75
「ママを救えるのは恵ちゃんだけだよ 僕 応援してる」
わかったふうなこと言うけんちゃんの髪の毛 全部むしりとってやりたいなぁ
「ありがとう」
この娘さんのスタンド描写がよかったです。以上