レラ オ アラキ コロポックル『風に乗って来るコロポックル』宮本(中条)百合子 "Korpokkurs Riding the Wind" by MIYAMOTO (CHUJO) YURIKO「北海道文学全集 第十一巻 アイヌ民族の魂」〈HOKKAIDO LITERATURE COMPLETE WORKS vol.11 The Soul of Ainu.〉読了

立風書房が昭和五十五年(1980年)に出した北海道文学全集第十一巻は「アイヌ民族の魂」をうたっていて、下記作品が収録されています。

『風に乗って来るコロポックル宮本百合子

『コタン』違星北斗

『若きウタリに』バチェラー八重子

『原始林』森竹竹市

コシャマイン記』鶴田知也

アイヌの学校』長見義三

『暗い砦』今官一

『対談・アイヌ』鳩沢佐美夫

『重い神々の下僕』三好文夫

解説 高野斗志美

北海道文学全集 第11巻 | NDLサーチ | 国立国会図書館

三大歌人さいごのひとり森竹竹市サンの作品を読もうと思った時に、本書と講談社文芸文庫どちらを読むか迷ったのですが、文芸文庫のほうが薄いし、オールアイヌ執筆というウリに惹かれて講談社を読みました。したっけ、その後、『風に乗って来るコロポックル』も読もうと思ったので、本書も借りました。『アイヌの学校』以外はだいたい読んだのですが、『アイヌの学校』が、長い… これ入れたら、かなりアンソロジーとして破綻するんだろう、でも入れたい気持ちはよく分かる、という作品が『アイヌの学校』で、それとは無関係に何に対して怒ってるのか分からないほど怒っていて、じゃあどうしたいのか一行も書いてないのが高野斗志美サンの解説です。日本から分離独立でもしたいのかと思いました。アイヌ・イーラム解放の虎でも組織して最後の一兵となるまでソ連の支援で大雪山系で遊撃戦論でもしたいのかどうか。それを口が裂けても言えない状況の人でも時代でもないと思います(三一書房から『アイヌ民族抵抗史 アイヌ共和国への胎動』なんて本も1970年代には出てたようですし)ただ、人は理想についてこない、理想を実現する人についてゆくのだ、というのー先生の格言にあるとおり、誰も彼も笛吹けど踊らずだったら、怒りまくって癇癪の虎と化しても不思議はないです。

高野斗志美 - Wikipedia

しかも男性だった。

アイヌ民族抵抗史 :新谷 行|河出書房新社

私は宮本百合子サンという人を知らず、検索したら、あの日本共産党宮本顕治サンのパートナーなんですね(セカンドマリッジ)私は宮本顕治サンも、ハマコーの人が「宮沢賢治は人殺しだー」と言った件しか知りません。『風に乗って来るコロポックル』は独身時代の19歳くらいに幼少期を過ごした北海道を取材旅行して、それで書いたものの、没後発見されるまで行李にしまい込まれたままだった作品だそうです。中條百合子サンはポン女在学中に大正モダーンで文壇デビュー、大学中退して筆一本で食ってく覚悟を決めた人だそうですから、その人がバチェラーさんらに取材して書いた小説を死ぬまで発表しなかった(一説によると忘れてた)事実を鑑みると、そりゃ民主集中制だから細胞の序列として白土三平サンは恐れ多くてカムイ伝第三部シャクシャイン編なんて書けるわけもなかろうな、などと見当違いの感想を最初抱きました。没後発表されたにしては、無料の電子版もあるし青空文庫でも読めます。

風に乗って来るコロポックル

遠藤暢根という人の論文を読んだら、本書は中文訳もされてるそうで、VPNを解いて宮本百合子サンの百度をみると、1958年らへんに人民文学出版社が宮本百合子選集全四巻を出していて、それに収められてたようです。もちろん有吉佐和子が中国レポートで、中方は得意げに漢訳しましたデスヨ~と言う前に、印税と著作権について国際ルールを学びなさいと指摘する遥か前。中文タイトルは、《乘风而来的倭人神》で、コロボックルは背の低いフキの下に住んでる人達ですから、意訳するとそりゃ〈倭人神〉ですが、倭人といえば魏志倭人伝倭人、つまり大和民族ですから、一寸意味が変わってしまう~と思いました。確かにこの小説は、コロボックル先住民族説を踏まえた小説なのですが、コロボックル=大和民族とまでは言ってないはず。

「北海道文学全集 第十一巻」は侵略と被侵略以上に、メルティングポットによる民族差異の恒久的解決をモチーフにした作品が多く、トップバッターのこの作品も、エカシ大和民族の養子をとったらこれがただの与太だった、という話。

話としてはかなり妄想部分がおもしろくて、かつ財産をどんどん食いつぶされる、銀仮面的悲哀、美徳の不幸が全開ですので、マゾ的にのたうちまわる愉悦をある程度味わえます。滅びの美学を、ほんとうに滅ぶかもしれない(というかもう滅ぶと思ってる)相手をモチーフに書くという芸当は、たぶん21世紀ではタブーだと思いますので、大正浪漫イカス、で〆てもいいのかもしれません。

本書もバーコード導入前の貸出実績ゼロ。装幀者ー栃折久美子

白黒ですが、ツルツル紙の写真ページが何枚かあって、そこでの本作関連個所。アイヌ語訳は例のよって単語を抜き出して語形変化ルールを知らないまま並べた世紀の大問題訳ですが、小文字にするべき箇所を小文字にしてないのははてなブログのタイトル欄の仕様でしかありませんので、下に小文字アリの表記を置いておきます。

レラ オ アキ コポック

Korpokkur - Wikipedia

以上