『カラシニコフII』読了

カラシニコフII

カラシニコフII

カラシニコフ II (朝日文庫)

カラシニコフ II (朝日文庫)

前作の読書感想で、失敗国家なんか作らないで、
パキスタンのトライバルテリトリーみたいなままにしとけばいいのに、
と書いたのですが、今作でまさにそのトライバルテリトリーが出てきました。
しかもダッラ。ハンドコピーの世界はすごいです。
ダッラのコピー職人はカラシニコフライセンス生産国ほとんどの刻印を持っていて、
ただ北朝鮮の刻印だけないという話が面白かったです。
トライバルテリトリーの問題点が、ほかの、例えばアラブ世界の傭兵との混血児たちで、
パシュトゥー語を話すけれども部族社会の慣習や長老に従わない、
という話も興味深い。
でも、それと、首都カブールの問題、例えば治安問題は別だとか。
この本には、あと、コロンビア、
中国がスポーツライフルにアレンジしてアメリカに輸出したカラシニコフが出回るコロンビア、
コロンビアから出回るペルーが出てきます。
製造元の中国はまだ竹のカーテンがあり、朝日新聞の力をもってしても、
否、朝日新聞だからか、取材出来ないまま終わります。
作者は淡々と、中国大使館経由のアクセスに回答がなく、
ホームページにもメールしたが返事がないと書いてます。
それ以上のアクセスがなぜ出来ないのか。語られない部分の真実があるのでしょう。
カラシニコフご本人が、
ライセンス切れ後も商品を作りまくる中国にご立腹のインタビュー場面は、あります。
細かい差異を根拠に、中国ノリンコ社は、
スポーツカラシニコフはコラシニコフと似て非なる製品と主張しているそうです。
新幹線みたい。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/8/8b/Modified_Chinese_%28Norinco%29_AK-47.jpg/800px-Modified_Chinese_%28Norinco%29_AK-47.jpg
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Modified_Chinese_(Norinco)_AK-47.jpg
ノリンコ社HP
http://www.norinco.com/

あと紹介されてる国は、パナマイラクでしたか。
イラククルド自治が成功している描写が最後に来る構成は、
前巻、ソマリランド自治が成功している描写が最後に来る構成と同じです。
せめてもの希望をラスト近くにもってこないと、
救いが見えないだけのルポルタージュで終わってしまう。

シルクロードの謎の民―パターン民族誌 (1980年) (刀水歴史全書〈6〉)

シルクロードの謎の民―パターン民族誌 (1980年) (刀水歴史全書〈6〉)

本書頁158に、刀水書房の本が出て来たので、なんかうれしかったです。
刀水歴史全書、どういう刊行基準か全く分かりませんが、
たまにとんでもない本が飛び出す楽しいシリーズです。*1
何度でも言いますが、『甦る古代人 デンマークの湿地埋葬』は名著です。
甦る古代人―デンマークの湿地埋葬 (刀水歴史全書)

甦る古代人―デンマークの湿地埋葬 (刀水歴史全書)

http://www.tousuishobou.com/syasin/yomigaeru.JPG
http://www.tousuishobou.com/rekisizensho/4-88708-298-3%20.htm