『御鑓拝借〈新装版〉―酔いどれ小籐次留書』 (幻冬舎文庫)読了

御鑓拝借〈新装版〉―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)

御鑓拝借〈新装版〉―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)

これはもう、「酔いどれ」で書名検索して引っ掛かった本のひとつという以外に、
何もないです。薄給なので所帯をハナからあきらめて五十に手の届こうかという独居中年が、
親に幼少時猛烈に仕込まれた剣の達人で、
タクシードライバーのように、「主君のため」という動機で、
わざと大酒大会に参加して奉公を解かれるようにして、
自由の身になって大名行列闖入テロを起こす話です。

だから酒好きだけど連続飲酒も問題飲酒もありません。
酒を飲みだすのも三十代(親の葬儀)で、酒の失敗もあるのですが、
基本的に意志の力で自分を律していて、飲まないときのほうが多いです。
その辺はアマゾンレビューで分かっていたので、まあいいやと読みました。

主君の汚名をそそぐことには成功するのですが、
終盤、脱藩無職で再就職も難しい年齢で、この後の人生の目的も喪失?し、
だが人生は続くので、この後どうやって食べていくのか、
という将来設計に対する暗雲が繰り返しあらわれ、もやもやしたまま終わるので、
続きも読みたい気になってしまいます。
収入がないので三日間ぐらい水だけ、食べ物を何も口に出来ない記述など、
クライマックスなのに平然と挿入されるしw

当初は全然続きを読む計画ではなかったのですが…
酒はタイトルだけって分かってたし、十何冊もシリーズ出てるので、
読みだすと大変そうだったので…
あと一冊だけ読むしかないかな、主人公の生活がどうなるかだけ確認する意味で。

あと、強藩と弱藩の関係は、現代コングロマリットの系列企業より、
ゆるい関係性で、押しつけが少ないのだな、と思いました。
あと、あれば後報で。
【後報】

頁354
 明日からいかにして腹を満たすか。
 そのことを考えながら赤目小籐次は眠りに落ちた。

頁354
 一昨日から水以外口にしていなかった。
 これではまさかのときに役に立ちそうもない。だが、懐には一文の銭もない。
(なんぞ稼ぎの道を…)
 と思ったが、すぐに思いつかなかった。
 下屋敷の用人高堂伍平老人が吐き捨てた言葉が身に染みた。用人は、
「頑固者が。雨風に当たればお屋敷奉公の有り難味がわかろうわえ」
 と言ったのだ。
 雨風なれば避けようもあった。だが、空腹ばかりはいかんともし難い、と小籐次は、
 くうくう
 と鳴く腹を恨めしく思った。

頁372
「そなた、これからどうして生きるつもりか」
「さて、考えてもおり申さぬ」
 通嘉は来春の再会を命じたが、これほどの騒ぎを起こした者が豊後森藩に復帰できるはずもない。

頁376
 赤目小籐次に勝利の喜びはなく、ただ重い疲労だけが小さな体を覆っているのを黒崎小弥太は見た。
 古田寿三郎は明日から赤目小籐次がどうして生きていくのか考えていた。
「小籐次」
 高堂用人が叫んだ。

あと、何がどう新装版なのか、分からなかったです。
また、解説がないのも、文庫本としてはさみしい。
白泉社なんか漫画文庫にも解説つけてるのに、時代劇だから解説なしとすれば、さみしい。
(2014/7/18)