『酒場横丁の人々』読了

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酒場横丁の人々

酒場横丁の人々

この人の本も少し読んでみようということで借りた本です。
荻窪あたりの、架空なのかなんかのか分からない飲み屋横丁を描いた、小説です。
サンデー毎日連載とのこと。バブルがバブルと認識されてなかった、1980年代後半、
まだ地上げが本格化される前の連載です。下記のスナック本でママやマスターが、
一番よい時代と回想してた時代ですね。過ごしてるぶんには気が付かないのだろうけれど。
この小説にもだから、むかしはよかった的セリフがあったりします。読書感想:http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140816/1408189799
天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books)

天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books)

読書感想:http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140929/1411996495
本職というか、準構成員というか、今で言う半グレみたいな筋の人と、
それから逃げてきた暗い影のある男、かばう横丁の人々、でストーリーは進行し、
因業大家も出てくるのですが、バブルがバブルと認識されず、
地上げもひどくなかった時代ですので、ほんのりおとなしいです。
当時の風俗など面白く読みました。以下後報
【後報】

頁41
「ビールって、いつも飲みはじめに飲むことが多いわ」
 浅丘とグラスを合わせ、五紀は呟くように言った。
「とりあえずビールでってやつだね」
「そうね、とりあえずビールで……何度も聞いた言葉だな」
「だけどね、ビールって最後もいいんだよ」
「最後にビールなんて、あんまり聞かないな」
「とりあえずビールってのをがまんしてだね、ずっとほかの酒を飲みつづけてさ、最後にキューッとやるビールは最高だよ」
「はあ……」
「酒を飲みつづけてるとさ、何となく終り方がむずかしくなっちゃうんだよ。しゃきっとして終りたいのに、ただ惰性で飲んでることが多いからね。だから、ケンカかつぶれるか、いまの波々さんみたいに眠っちゃうかしか、終り方がなくなっちゃうんだ。だけど、ビールてしめるっていうのは、かなり決るもんだよ」
「ビールでしめて……って言うの」

帰りにコンビニで買ったビールや、冷蔵庫でがさごそやって出したビールで、
自宅で〆てしまうと、決まる間もなく寝てしまう気がします。

頁43
 壁に貼ったメニューには「スパゲッティ・イタリアン、スパゲッティ・ナポリタン、スパゲッティ・ミートソース、ピザ各種」と記してあるだけだったのだ。
東京オリンピックのあとかな、スナックってやつが街に現れてね。あのころのスナックなんてのは、冷蔵庫を開けて入ってる物でとりあえず作る料理みたいなもんだったからな。ピザなんてアンタ、ハイカラなものだったのよ」
「へえ……」
「というわけで、そのスナックの伝統を守っているってわけさ」
「だから、スパゲッティとピザだけ」
「それも、イタリアン、ナポリタン、ミートソースの三種類、ボンゴーレなんてのは絶対に出さない」

今打ち込んでて、ボンゴレが伸ばしてあるのに気付きました。
イタリアンとナポリタンの違いが分からないまま、
へえ、別物なのかと思いつつ読んで、いま検索して、こういうことかと思いました。

イタリアンスパゲッティ 関東 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%91%E3%82%B2%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3#.E9.96.A2.E6.9D.B1

頁51
「カタっていうのがあってね」
「……」
「博多ラーメン屋でね、あっちこっちからカタ、カタって声が聞こえたんだよ」
「何かが倒れたみたいね」
「カタっと倒れる、か。いや、これは固ゆでのこと」
「それを、カタって言うのね」
「固ゆでを二つ注文するときは二(に)カタ、三つなら三カタってね」

バリカタとかハリガネとか粉落としとか湯気とかいろいろ呼称が出てくる前の、
穏やかな会話と思います。
お好み焼きのチェーン店を築いた人をモデルに書いた小説の中に、
小麦粉の生焼けは腹壊す、と書いてあったのを思い出しました。
麺の火の通しはどうなんだろう。
カタ、というと、チベットのカタも連想しました。

カタ Katag
http://www.tibethouse.jp/culture/katag.html
(2014/10/14)
【後報】

頁213
「それに、北海道の人間にはふたつ故郷があるしね」
 いつも、北海道の話になると語尾を弱めてしまう真木さんが、自分から話しはじめたので、荒木さんは目をしばたたいて身を乗り出した。
「北海道は、歴史をさかのぼっても百年だからね、その前はいずれどっかからやって来たわけさ」
「ああ、だからその前の故郷があるんだ」
「そういうこと」

ほんとにそういうことか知りません。この後、会話は、東京も同じではないかと続きます。
荻窪とかそうでしょうね。時間。
(2014/10/16)