- 作者: 竹内真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
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【後報】
先程検索してブログを拝見したらご自宅が全焼とのことで、
まずお悔やみ申しあげるとともに、一日も早い再建を祈念致します。
この手の、なんというか、ジュヴナイルではないし、ラノベでは無論ない、
青春小説なんだが、大人になるまで、というジャンルが何とカテゴライズされているのか、
知りません。この日記では、酒とつまみの元編集長の本から飛んで、
川上健一の本を三冊読んでいます。
川上健一の本の読書感想
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140528/1401286389
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140601/1401629848
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140608/1402228578
この本は、ビールについてのエッセーが横書き横組みなのですが、
小説自体は縦書きの右開きの本で、だから四ページのコラムを読む時、
左開きであるはずの横書きが右開きになっていて、
かといってそこだけ左開きにすると一層読みにくいだろうと思い、
そこは二段組み縦書きではダメなのだろうか、とまず思いました。
コラムは、古代メソポタミアやエジプトで、不衛生な水環境なのでビールが水代りに必要とされ、
生産消費されていた、という記述から始まっています。
人口が集中する都市が成立したからだとも思いましたし、
アルコール常時供給常時摂取のせいで都市が酔態衰退したとしたら、
それも歴史の妙だなと思いました。
で、イギリスのエール、酒税法、アメリカの禁酒法と話は続いてゆきます。
ほかの本で、アメリカやロシアでは戦争中禁酒が法制化されたことを知りましたが、
イギリスではパブの開業時間制限などで対応したとのことでした。(頁153)
日本の場合は酒税は戦費調達からとのこと。アメリカの禁酒法の記述では、
ドイツとの関連がないのが寂しい気がしました。
個人で酒作りを楽しむことについてのあれこれとか、
日本の地ビールの状況変遷とか、話は広がってゆきます。
小説部分ですが、さまざまなホップを齧り比べて味見する場面など、
楽しそうだと思いました。現実の、大手のビール工場見学でもそれやればいいのに。
ビールに限定した話で、ビールの酔いは蒸留酒のそれに比べてどうとか、
いろいろ設定というか私見に基づかれて書かれ、それによって悪酔い二日酔いをはじめとする、
飲酒のダークサイドについてはオミットする構成になっており、
ビール自体の苦味はオッケーでもそこはダメか、と少し思いましたが、
まあ、そういうことを考えてもいけないな、それを描くなら、
この小説のように自己実現や家族作りに成功したキャラばかりでなく、
そうできなかった、あるいはならなかったキャラを出さねばいけないような気もし、
それだといろいろ拡散するから、これでいいと思いました。
中学時代の女の子三人組とか、タクシーの運転手になったヤリマンとか、
そういうもろもろ。
あと、性同一性障害は、金八先生で上戸彩が演じたりなんだり、
ともすると現実世界で出会うよりフィクションの物語で出会う回数のほうが多いような気もし、
21世紀だなあ、と思っています。
(2014/11/30)