『燗酒ルネサンス―なごみ・ぬくもり・いやしの酒』 (酒文ライブラリー)読了

燗酒ルネサンス―なごみ・ぬくもり・いやしの酒 (酒文ライブラリー)

燗酒ルネサンス―なごみ・ぬくもり・いやしの酒 (酒文ライブラリー)

宝酒造は焼酎の会社だと思ってますが、懐が広いですね。
玉村所長の例のシリーズ。あとは後報で。
【後報】
イラストは南伸坊。でも巷間知られるタッチとは少し違います。
と思ったら、シンボーは表紙だけで、中のイラストは橋本金夢という人でした。
挿入される短歌は俵万智。神奈川県立橋本高校。

頁21 第1章/幼女のお燗番 本間千枝子
父親は自分にとっての酒は、飲みものである以上に食べもの、酒がなくては働けない「おれの主食だ」と言うのだった。

酒は高カロリーゼロ栄養なので、主食にはなりません。
ツマミが入らない状態での連続飲酒はもうアレです。

第2章で、燗酒はなぜ生まれたか、について座談会で考察してゆきますが、
寺社が昔は醸造権を持っていて、酒造りを行なっていた、という中世の風景はいいのですが、
江戸時代になって、

頁52 神崎宣武
まあ、はっきりとはとてもいい切れませんけど、燗酒というのは、酒が商品化されて大量輸送されるようになった結果として生じた、ひねた、劣化した酒をどう処理するかということから習慣化したものだと思います。たしか川柳でも「店の裏でまた燗か」とかいって、燗酒を皮肉っているのがありますよ。

三々九度のような儀式(無礼講の反対語の礼講)では古式の冷やで飲んで、
その後の無礼講の宴会では、雑多な酒、水増しした酒を燗してだましだまし吞むと。
そういう歴史検証が完了し、燗酒肯定の歴史的根拠がまず崩壊します。
執筆コンセプトの崩壊素晴らしい、と思い読み進めると、
流石、東大を出てフランスで学んだ玉村、

頁64
 燗酒が生まれた理由はきわめて興味深いけれども(笑)、必要に迫られて考え出した方法が、新たな嗜好を開発した。だとすれば、こんどは酒質のよくなった酒での燗という意味を考え直す必要がありますね。その習慣化した嗜好を、もういちど積極的に選び直すことができるような……。

見事な切り替えし、リカバリーを見せます。なるほどです。玉村はまたこうも書いています。

頁74
 私も、ヴァン・ショーがこれほどおいしく、楽しいものだとは知らなかった。
 赤ワインに砂糖とさまざまなスパイスを加えて熱した熱い(ショー)ワイン(ヴァン)は、もともとフランスの北部地域で冬のあいだ飲まれる特殊な飲みものであった。
 ヨーロッパでは、英国海軍から広まったグロッグ(ホット・ラム)をはじめ、ジンやウイスキーなど、蒸留酒を熱い湯で割る飲みかたは昔からあるけれども、酒そのものを熱して飲むスタイルは非常に珍しい。

焼酎もお湯割りあるな、と思い、ジンの熱いのは知りませんでした。
ウォッカはどうなのかと思いました。ウゾーは、アラックは、etc.
で、ここから迷宮に入るのですが、第4章山口昌伴が、お燗のための小道具紹介で、
青銅器時代からの中国の酒器を紹介してるのですが、近代の道具で、

頁102
アルコール度六〇度をこえる白酒パイジュウを温めながらチビリ……チビリ。

頁107
強い酒、白酒を軟らかく温める中国の酒温器の使用は連綿と意外に今日まで連なっている。酒注ぎ(銚子)を温めるもの、酒盃を温めるもの、湯に銚子を落としこむもの。なかには湯をふんだんに振りかける煎茶道の水盆を思わせる酒温器まで、今出来の道具が生産中。茶道ならぬ酒道のお点前をどうぞ。

私は完全に困惑してしまいました。白酒を加熱して飲んでおいしいのか、
悪酔いしかしないのではないか、お湯などで割る加熱も聞いたことないのに、割らずに加熱…
器を見ると、景徳鎮などなので、紹興酒などの醸造酒、黄酒の間違いではないか、
そう思い、疑問符ばかりになりました。頁124で、銚釐(ちろり)は中国伝来の酒器、
とありますが、根拠のシーンは紹興なので、よけい黄酒だろうと思ってしまい、
頁186の松山猛という人も、黄酒だけを対象として燗しているので、
なぜ白酒を燗するなんて書いてるんだろう、そんな飲みかた本当にあるのか、
あるとすれば、あのくさみは倍増されないのか、うまいのか、どうなんだ、
検索するまで頭のなかの疑問符は消えませんでした。

とりあえずブログが一つ見つかり*1
それが北京在住の方が中国人経営者のオゴリで市内の羊しゃぶしゃぶ?の店で、
メニューの燗白酒を飲むという信憑性の高いものでしたので、納得しました。
百度を見ても、賛否両論の形で、白酒の燗について記載がありました。

百度
http://baike.baidu.com/view/1413592.htm#2_2

よかったよかった。私のなかで、日本酒の燗酒は、完全にふっとんでしまったので、
そういうことで終わります。よかったよかった。