『マネーフットボール 1』 (芳文社コミックス)読了

奥付は10月1日初版とありますが、9月16日発売です。マンガが雑誌扱いだから、
こうなるんですかね?私の買った本の帯は、さわやか893の人。
発売日の今朝帰宅途中順番に本屋を覗き見して、二軒目にあったので買いました。
一軒目は、朝イチだったから、入荷したマンガまだ捌いてなかったのかも。

ツイッターその他で連載開始は知っていて、サッカーの憂鬱掲載の漫サンから、
ワールドカップにあわせて読み切り掲載した週漫に場を移してて、
なぜだろうとは思います。ストーリーに関して、ブレーンもしくは原作者集団、
愛せの人だかなんか、そういう人たちがいる、的なことも、
ツイッターで知っていましたが、その影響とかは、まあいいや、みたいな。
相当にサカオタ的にディープなところに行ってしまったしとたちが企画した漫画で、
かつ本気である程度売ることを目指しているようなので、連載時の立ち読みでは、
大丈夫かな、なんて、ちゃんと読んでるわけでもないのに思っていましたが、
通して読むと、やっぱりちゃんとしていて、よかったです。よかったことにほっとした。
前作がサッカーの憂鬱で、今作がマンネリフットボール、サッカーの倦怠だと、
しゃれにならない。それくらい今のスポーツは管理されていて、データが全てで、
出来上がってしまっている世界なんだよ、ということを解説する機能の面があることも、
よく分かりました。

言うまでもなくブラピッの人の映画、マネーボールを意識した題名で、
これでマンガへの興味を削がれる人もいると思います(私です)。
サッカーの倦怠よりは勿論よい題名で、ブラピッ的描写は、例えば頁90,91、弱連結
まだ辞書にない言葉。検索すると、七十年代のアメリカの社会学論文、
八十年代の神戸大学紀要などが出てきましたが…

頁91
サッカーはスター選手よりチームの弱点となっている選手の方がチーム全体に及ぼす影響が大きい
弱連結を改善することはスター選手で強みを強化することよりも得失点差で30%勝ち点で2倍価値があることがデータで証明されている
弱連結…つまりチームの弱点をなくすことが勝利への近道――

上記の論文とは、弱連結の意味が違うように思いますが、ことばはいきものだから…
この漫画は、上のようなサカオタ蘊蓄と、二部レンタルのサッカーバカ主人公の、

頁51
ダメだ…

何言ってるのか
サッパリわからん

の組み合わせで構成されています。主人公、チャラいキャラかと思ったら、
そうじゃないんですよね。
片親で、はたちそこそこにして、リーマンの生涯賃金二億三千万円を、
アスリートの現役生活十年弱で叩き出せねば、と焦る二部レンタル二年目の正念場、
ちゅう真面目キャラの苦境がまず出てくるんです。
(私は、ファンサに寝坊欠席した話を立ち読みでまず読んだので、
 アホのチャラ男だと思ってました。そういう意味ではキャラがブレた?)

頁17-19
愛媛松山坊ちゃん空港
天宮 オレも1年前ここに流された時は絶望的な気分だったが住めば都―― 女の子もカワイイしな
カジ そんなことお前は浦和に戻れるから言えるんだ!!いいよなーーーーー 浦和ユース出身の人間は大切にされて!!高校サッカー出身のオレは使い捨てか!?
天宮 おいおい カジ 新入団から愛媛までの2年間兄弟のように仲よくやってきただろー 最後くらいキレイに別れようぜ
カジ あ”ーーーーーー『最後の別れ』って言ったーーー なんだよ『最後』って 天宮ーーーー!!オレは絶対 お前よりすごい選手になってやる!!金持ちになってやるからなーーー!!
(中略)
天宮 カジ お前は彼女でも作れ 人生楽しめ

カジの自室 通帳 預金残高\5,364,983
カジ くそ〜〜〜〜〜〜〜〜〜 天宮の来季の年俸は1千万円… オレは現状維持の400万… 浦和に戻りたい 浦和に戻りたい 浦和に戻りたい…

下はチームの夜の帝王にキャバに連れてかれる場面。夜の帝王は反面教師だそうです。

頁27
西川 四国に島流しされて放置されてるヤツが2億も貯められるわけないだろ ハラ痛え〜
カジ カァァァ(赤面する音)うるせーーー!!オレは絶対に東京に戻って一流選手になって2億3千万 貯めるんだ!!アンタみたいなこんな辺境の地で腐ってる負け犬と一緒にするな!!
(中略)
西川 この街は博多を戦力外になったオレを拾ってくれた街だ!!愛媛の悪口を言うヤツはこのオレが許さん!!

頁21でキャバ嬢に「東京の人?すごーい」と言われて「いや オレ 埼玉…」と答えてるのに、
激高すると、東京に戻ると言ってるのを、写してて初めて気がつきました。芸が細かい。
作者は代表作が愛媛を舞台にしたさかつく漫画ですので、この漫画、また愛媛なの?
と立ち読みでは思いましたが、通して読むと、あまりのホームタウンのDisりっぷりに、
作者と精神的な絆の強い愛媛とそのサポに根回ししたうえでなければ出来ないことだろう、
新天地を舞台にした場合、「なんかうらみでもあんのか」とご当地からメンチ切られそうだ、
だから今回も愛媛が舞台なのだと納得しました。
レンタル元の強化部長の苗字が大倉で、現実の湘南CEO、前強化部長と同姓なのが苦笑いで、
オサスナと提携した、水野さんでしたか、とか、左伴さんとか、そういう名前も、
ついでだから出してくれればいいのに、と思いました。
愛媛については、レンタルして一年間、道後温泉に気付かずサッカーに集中してたとか、
大分遠征のさいはフェリーで豊後水道渡るとか、今後もいろいろ紹介してくれそうな、
気がします。主人公の髪形は、いちおうその髪型の説明エピソードはあるのですが、
同じ渾名のドラマーを連想しました。だから盛り過ぎだと思います。
売るための盛り込み量に気迫を感じたのは確かです。専門的な話が続くと、
読んでるほうはチンプンカンプンになりますので、
試合前のミーティング、頁164で4バックと3バックの長所短所を説明するなど、
プロが試合前にそんな話するわけないので、読者への解説だな、
ありがたく勉強します、という箇所もあります。

でもこういうデータとか数字は読み方次第とも思いますので、
ニューアカというか似非科学、にも気をつけなければと思います。
最近読んだ『創造の方法学』*1でも、大統領選を的中させた統計解析が、
次の選挙ではまるで外れたエピソードを披露してます。
下記の本も、そのまま信じてますが、アマゾンレビューを読むと、間違いがあると言うし…

勝つためのレシピ (光文社新書)

勝つためのレシピ (光文社新書)

選手ひとりひとりにGPSセンサーを付けてデータ収集とか(頁88)、
そういうITコストの削減も出来ないかな、と思ったりもします。
携帯がスマホになって経費が増大するように、データデータで運営経費が増大し、
それが随契であんまり値段叩いてなかったりとかのムダがなければと思います。

あと箇条書きで。
・レギュラーキャラのカメラマン女性が出てきますが、
 この漫画では、ライター兼からライター場面ばかりになります。
・鹿児島マングローブ大学との練習試合は、
 鹿屋体大が天皇杯Y.S.C.C.を破った試合を思い出しました。
・エヒメッシが出てくるわけで、えなりは出て来ないのに…と思いました。
 名付け親のポイズンは、顔を出してるような出してないような。
・ロングスローは、何度見ても岩上を思い出します。ポイズンのインタビューで、
 肩を痛めるので、練習はさせてない、と読んだ記憶があります。
 興業には、こういう観客を沸かせるプレーが必要ですよね。
・頁173、リーグは文部科学省管轄だ… ただの罵詈雑言はコンプライアンス的にアウトだ 
 社会なめんな
 いいセリフだと思いました。
・頁143、プロのサッカー選手はみんなたいてい県で一番の神童 
 サッカー選手の平均引退年齢25歳、ここもよい箇所だと思いました。
上田桃子発言を思い出し、検索してみると、私は、彼女は、
 アスリートとして稼げる期間がゴルフはほかより長いので、
 それで言ってると記憶してたのですが、そうではなかったです*2。また模造記憶。

以上