- 作者: スタンリイ・エリン,深町眞理子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1969/10/01
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: Stanley Ellin
- 出版社/メーカー: Ballantine Books
- 発売日: 1974/12/12
- メディア: マスマーケット
- この商品を含むブログ (1件) を見る
既に読んだもう一つの長編より、わたし的には全然面白かったです。
『空白との契約』読書感想
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160318/1458302909
訳者あとがきでは、本国で、失敗作とボロっかすに言われてたとあり、
そんなのあとがきで書く訳者がいるかと思いましたが、
正直な時代だったのですね。たしかに、大団円の最終章はそんな感じでしたが、
しかし、そこまでの展開は、もう一つの長編より全然よかった。
作中でもヘミングウェイと比較する場面があるような、
ロスジェネに遅れて来た世代、朝鮮戦争のあと、本国で黒人ボクサー台頭に押されて、
白人ボクサーとして欧州ドサ廻り生活を続ける、仏語ぺらぺらの主人公。
(アメリカ人なのに仏語ぺらぺらという設定時点で、米国人の願望くさい)
もうひとつの作品は、自らの努力の報酬として大金ゲットの設定でしたが、
こちらはタナボタで、案の定ウマい話には裏があって巻き込まれ、
で、とても大切なものの喪失が起こる。読者としてはついていきやすい話でした。
頁65
そこでわたしは、借りてきた車――こぎれいなルノー――を下宿の前にパークすると、
この話もルー語が出てきます。訳者は別人なのに。
検索したら、訳者はものっそい大家で、アンネの日記新訳やらなにやらで、
あと、ハリポタが関連キーワードで出てきました。
深町眞理子 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B1%E7%94%BA%E7%9C%9E%E7%90%86%E5%AD%90
Yahoo!知恵袋
ハリーポッターのあとがきを読んでいると、なん
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1118116456
タロットの暗示がありますが、ハングドマンを、《被絞者》と訳しており、
ジョジョの「吊られた男」と全然違う語感と思いました。
頁103、「方式」と書いてメトードとおそらくフラ語のルビを振る箇所を見て、
作者の同じハヤカワの短編集では、(ほかの訳者さんが)なぜメソッドを計画と訳したのかなあ、
と改めて思いました。
『九時から五時までの男』読書感想
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160312/1457784662
頁119上つ方
こないだ田辺聖子の小説で読んだばかりの単語が、
フランス上流社会をさししめす表現で出てきて、へえと思いました。
頁159クレープ(お好み焼きに似た菓子)
1969年にはまだ竹下通りにクレープ屋はなかったのかと思いました。
頁238南米には、おなじ境遇を分かちもつものたちが大勢いる。
わかちもつ、という表現が面白いです。
頁240国際エリート組織オルガニザシオン・デリート・アンテルナシオナル
頁297秘密軍事組織ロルガザシオン・ド・ラルメ・セクレート
フラ語を知らないので、上記OEIとかOASとかが面白かったです。
インテルがアンテルになるのか。
頁243
ジャンヌ=マリーはしかつめらしくうなずいたが、なんらかのやくたいもない秘密を吹聴したくてうずうずしていることは明白だった。
頁264
「狂気?」
この痛烈な応酬に、彼はかたじけなくも微笑を賜わった。
「率直に言って、彼女がほんとうに狂っていると信じられたら、そのほうがきみにとってなんぼかよかったことか。
微笑を賜わる、のあとに、なんぼか、とか使う訳者のセンスが面白かったです。
以下ネタばれを含みます。
頁350
アンは夫のそばにひざまずき、彼のポケットからハンカチを取りだすと、口の端からしたたり落ちる一筋の血を空しく拭おうとした。彼の眼は閉じられていたが、やがてそのまぶたがひくひくと動いて、眼がかっと彼女を睨みつけた。
「ばいた」
以上