- 作者: ロバート・A.ハインライン,矢野徹,吉川秀実
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1986/04
- メディア: 文庫
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Have Space Suit - Will Travel (Heinlein's Juveniles Book 12) (English Edition)
- 作者: Robert A. Heinlein
- 出版社/メーカー: Spectrum Literary Agency, Inc.
- 発売日: 2013/11/26
- メディア: Kindle版
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- 作者: ロバート A.ハインライン,矢野徹,吉川秀実
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 文庫
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カバー:佐藤弘之 あとがきは、地球0年矢野徹
これも、コニー・ウィリス『混沌ホテル』*1序文で紹介されてる本。
コニーお気に入り*2の『ボートの三人男』*3が冒頭登場するのと、
原題の "Have Space Suit――Will Travel" は、
往年の名テレビドラマ "Have Gun – Will Travel" のもじりだよ、
という紹介文章だったと思います。今手元にないので、記憶だけですが。
なんとなく、中島梓が、秋田文庫版マカロニほうれん荘解説で、
マカホーと略すなよ世の若者諸君、とのたまったのと同系列の文章。
で、そのコニーの文章の邦訳が、前者を宇宙無宿、後者を拳銃無宿、
と訳していて(確か)、スターファイターとガンファイターなら、
そうもなるかな、と思うのですが、ガンファイターとも訳されたTVドラマ、
拳銃無宿は"Wanted Dead or Alive"という別のドラマで、
"Have Gun – Will Travel"は「西部の男パラディン」という邦題だそう。
何がどうなっているのかと思います。
https://en.wikipedia.org/wiki/Have_Space_Suit%E2%80%94Will_Travel
https://en.wikipedia.org/wiki/Have_Gun_%E2%80%93_Will_Travel
拳銃無宿 日本語版
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%B3%E9%8A%83%E7%84%A1%E5%AE%BF#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E8.AA.9E.E7.89.88
https://en.wikipedia.org/wiki/Wanted_Dead_or_Alive
さらにアマゾンレビューによると、この小説は日本ではそも福島正実による抄訳
『大宇宙の少年』で世に知られており、この創元推理文庫版は、
福島訳に感動した理系学生が、独学で訳してSFコンで矢野徹に相談持ちかけ、
試行錯誤の末に、共訳として出版された本だそうです。その間に年月が過ぎ、
学生は卒業し、風呂のスポンサー企業にお勤めになりました。
(だから近年の版では福島訳と同じタイトルに改題され、
さらに、月面でノーヘルマズいやろというツッコミを真に受けたのか、
表紙もおにゃのこと手をつないだフルフェイスに変更されてました)
あとがき 矢野徹
人が人に会い、その結果、一人の人間の青春に忘れられないであろう想い出を作るよすがになったこと。まことに嬉しい。今夜の酒は進みそうだ。吉川さん、本が出たら忘れずに、先生とご両親に送ること。そのあと、一緒に飲もう。この本の読者の健康と多幸を祈って。
大字は私に依る。
進まなくていいから。と思いました。
『夏への扉』と並ぶハインラインのジュヴナイルSFの傑作だそうで、
確かに、理系少年のハート鷲掴みな小説だと思いました。
高額ツアー旅行くらいなら宇宙旅行が現実のものとなった近未来で、
田舎の理系少年(進学費用をスカラシップとバイトで工面しようと苦戦中)が、
中古宇宙服を懸賞で当てて夢中でいじくりまわしているその時に、
(1Gで着て歩いたり出来るものなのかよく分かりませんが…
三つ目が通るの、悪臭プンプンの漂流物東京湾漂着の話では、
和登サンが宇宙服着用して肛門から漂流物に潜入していた)
悪玉宇宙人にさらわれ、隙を見て逃げた善玉宇宙人と天才理系少女ガー、
というおはなしで、私はハインラインは夏への扉と月は無慈悲な夜の女王しか、
読んでないのですが、機動戦士ガンダムに霊感を与えたといわれる、
『宇宙の戦士』も読んでみようかな、と思いました。
スターファイターという邦題は、絶対ガンダム狙ってると思います。
1986年初版というと、熱気冷めやらぬというか、熱い時期だったはず。
作者 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BBA%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3
愛に時間を、とか、フライデイ、とかも読んでたみたいですが、覚えてません。
ネトウヨのすくつ2ちゃんのSF板の名無しさんは、名無しは無慈悲な夜の女王*4
見沢知廉の北朝鮮旅行記で、同行の右翼活動家が感激して、
ここは全体主義者にとっての理想郷や、と言う場面を思い出します。
頁129
「ちびすけよりこがね虫へ」ぼくのイアホーンから声が聞こえてきた。「無線チェック。アルファ、ブラヴォ、コーカ、デルタ、エコー、フォックストロット……」
「こがね虫よりちびすけへ。感度良好。ゴルフ、ホテル、インディア、ジュリエット、キロ……」
Cって普通チャーリーだと思うので、コーカってなんだと思いました。なりみや。
通話表 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E8%A9%B1%E8%A1%A8
Spelling alphabet Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Spelling_alphabet
英文版の"1951 IATA Phonetic"だと"Coca"なので、それかと思いました。
頁263
さてと、丸薬は右側で、コデイン投薬装置はいちばん後ろだったな―
「おちびさん? 悪いけど、もう一度水を持ってきてもらえるかい?」
「もちろんよ!」
「コデインを飲むよ。眠らせてくれるかもしれない。いいかい?」
(中略)
コデインのおかげで気分がだいぶよくなり、うつらうつらとし始めると、おちびさんはいった。
(後略)
頁298
医療陣はオスカーのヘルメットに入っていた薬品類に興味を示した。――ちょうどぼくらが呪術医の薬草に興味を持つようなものだが、むだな興味ではない。ジギタリスやクラレを思い出すことだ。
ぼくはそれぞれの薬の効能を話した。その多くについてぼくは商品名だけでなく、赤十字名(学名)も知っていた。コデインは阿片からでき、阿片はケシからできることを知っていた。デキセドリンが硫酸塩であることは知っていたが、それだけだった。
(中略)
――ぼくらはどちらも、コデインの構造式について一片の知識ももっていなかったので、(後略)
流石プロザックカントリー。正常氣よ永遠なれ。
主人公は宇宙服にオスカーという名前をつけて、
松本零士の漫画のスタンレーの魔女の照準器みたいに話しかけますが、
下記がここから霊感を得たかは知りません。
- 作者: 叶精作,小池一夫
- 出版社/メーカー: グループ・ゼロ
- 発売日: 2012/12/01
- メディア: Kindle版
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頁399
「“運”とは問題点をはぐらかそうとする逃げ口上だ……娘が助けを求めたとき、きみが聞いていたのは“驚くべき運”だといったね。それは運ではなかったんだよ」
「え? とおっしゃいますと?」
「なぜきみはあの周波数を使っていたんだ? きみが宇宙服を着ていたからだ。なぜきみはそれを着ていた? きみが宇宙に出ようと決めていたからだ。宇宙船が呼び出しをかけたとき、きみは応答した。もしそれが運なら、バッターがボールをヒットしたときは、いつでも運だ。キップ、“幸運”は周到な準備のあとについてくる。“不運”はだらしなさからやってくる。きみは、人類そのものよりも古い法廷を説き伏せた。きみやきみの種族は、救うに値するものだと。それは単なるチャンスだったのかね?」
「あの……本当のところ、ぼくは頭にきていてぶち壊しかけていたんです。不当な扱いを受けるのにはうんざりだったものですから」
「歴史の中で最高の物事というのは、“不当な扱いを受けるのにはうんざり”した人々によってなしとげられたんだ」教授は眉をよせた。「ちびすけを気に入ってもらえて嬉しいよ。(後略)
すぐれたジュヴナイルというものは、作者が借り物でない、作者自身の言葉で、
「いいこと言うなあ」と、読者に読んでてうれしく思わせる文章があるものです。
そしてそれは、経験と文章力両方が伴わないと紡ぎ出されない。
この小説は1958年、朝鮮戦争とヴェトナム戦争の中間期に書かれましたが、
1908年生まれの作者はすでにこの時「天命を知る」五十歳に達したわけで、
これだけの言葉を吐けるほど充実した人生を歩んでいた。
一説によると、晩年の彼は、セックスに拘泥した、エロ老人になった、
との解釈もあるそうですが、この時点で、彼は燦然と輝いていた。そう思います。以上
【後報】
忘れてましたが、なんでこの原題、"a"がつかないんだろう。
"Have a Gun"と"Have Gun"でどう意味が異なるのか、知りたいです。
(2017/4/15)
【後報】
コニーの文章は下記。
混沌ホテル 序 頁13
ハインライン氏を引用すれば、「ことの起こりはこうだった」。このときのことを考えると、人間の一生とはいかに偶然の気まぐれに左右されるものかと思わずにいられないのだが、わたしは書店でたまたま、ハインラインの『宇宙服無宿』(原題Have Space Suit, Will Travel 邦題『スターファイター』創元SF文庫)という本を見つけ、おもしろいタイトルだなと思って手にとった(若い人のためにいっておくと、当時、『拳銃無宿(原題Have Gun, Will Travel)』というテレビドラマがあったんです――そう、テレビはその頃から存在したのよ!)。
そして、一行目からその本と恋に落ちた。(後略)
(2017/5/1)
*1:読書感想 http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170321/1490042468
*2:コニーって言うと、月はどっちに出ているでルビーモレノが演じた役のようです
*3:
*4:http://dic.nicovideo.jp/a/%E6%9C%88%E3%81%AF%E7%84%A1%E6%85%88%E6%82%B2%E3%81%AA%E5%A4%9C%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B