『舞妓さんちのまかないさん (1) 』(少年サンデーコミックススペシャル) 読了

一時期見失ってましたが、なんとか読めたマンガ。よかった。

読んだのは初版一刷。2017第5・6合併号から第13号までの掲載作品を収録。

連載担当二名、単行本編集責任一名、単行本編集三名(うち一名所属プロダクション記載)、企画協力一名、のお名前が奥付にならんだはります。へえ、いまのマンガはんは、お手をわずらわせるお人が、ようさんいらっしゃるんどすなあ、人民中国のようや。せやし、おあしもそれなりにかからはるんどす。ということは思いませんでした。

●ILLUSTRATION/小山愛子
●DESIGN/徳重 甫+ベイブリッジ・スタジオ

第一巻の初版の帯なので、宣伝文もごくおだやかです。よく見かける、梅の花のマークと、🍙。たぶんフリー素材の、左に五重塔が見える京都の街並みパノラマ写真の模写。屋根のあるアーケードは、四条なのかどこなのか。京福電車の駅。
裏表紙の料理はカレーライスとハンバーグと、青森郷土料理のひっつみ汁。

青森と京都の結びつきは、前にもこの漫画の感想に書いた気がしますが、高村薫の『晴子情歌』で読んだ話、樽廻船だか菱垣廻船だかで実は直結していて、京都のやんごとなき(やんごとなくはないか)花柳界の苦労人の玄人さんが、降嫁というか青森の豪商の御寮はんとして迎えられたりするので、青森の上流の味つけは完全に京風のうすくちあわくち砂糖なんて下賤なものはろくにつかわしまへん(記憶に誤りがある可能性があります)なので、貝焼きが出てきてもそれはそれで納得ですし、まったく関西風の味付けをしない賄いが祇園の置き屋をほっこりさせるというのも、それはそれでファンタジーでよいなと思いました。

晴子情歌(上) (新潮文庫)

晴子情歌(上) (新潮文庫)

晴子情歌(下) (新潮文庫)

晴子情歌(下) (新潮文庫)

第一話からホットパンツを履いている(頁23)。昔は中卒というと、寿司屋の出前しか親方が引き取ってくれない時代もあった気もしましたが(どんな職人も弟子入り志願者に、せめて高校くらいは出ろと言い、中退なら話は別という)この子は幸運でしたね。この置き屋、否、屋形というのか、の、「おかあさん」もまだ三十前(頁45)とかで、やり手婆というか、年季の入ったド根性オバサンみたいのが一人も出ないので、事情はおいおい語られるのでしょうが、変わったお店なのかも知れないなと思いました。この「おかあさん」が、舞妓のことを、「舞妓ちゃん」と呼んでるのがよかった(頁92)飴も飴ちゃんだから舞妓ちゃんで何もおかしくないという…「女の子ちゃん」(頁46)

腰を痛めた前任者もふつうのおばさんに見えますが、ふつうに見えて、実は手鍋さげて京に駆け落ちしてきたとかそういうことでも驚きません。カレーのように家庭、里心をつけさせる素材は、祇園では御法度(頁116)とは知りませんでした。こういう情報が広まると、酔ってカレー持ってこいとがなる粋筋でない客も出るんだろうなあタイカレーとかほうれんそうとひよこ豆のカレーとかダルバートとかできりぬけようとしても駄目なのかもなあと妄想します。

舞妓が木組みの二段ベッドの四人部屋で暮らしてるのは分かりますが、窓がないのは、開けても隣の家の壁(トタンとか)なんだろうなと思いましたら、まかないの子の部屋は、雪の回だからか、開けると京の雪景色がまあまあ見えて(頁124)、しかもよく考えると一人部屋だし、前任者のおばさんからそのまま引き継いだから舞妓たちよりよい部屋なのかもしれず、のちの巻ではその面での軋轢も描かれるかもしれないと思いました。

で、家庭料理だけうまくってもそれでまかないさんはどうでっしゃろ、京という街は、キャバクラにも料理を作ってくれて愚痴や悩みごとの相談相手になってくれる年季の入った老婦人のまかないさんがいてはるんどっせ、みたいな声はないと思いますが、頁39、カツラむきですかね。カツラむきなんでしょうか、これ。アンサーカットみたいな。16歳でカツラむき。お店の裏路地とかで午後の休み時間、その辺のなんかに腰かけて割烹着にゲタだかぞうりだかでカツラむきの修業してるサラシ職人私も見たことありますが、こればかりはコスプレ舞妓とちがってほんものだと思います。

家出少女と間違えられて職質されてますが(頁104)、この京都府警のポリのひと、なぜ単独行動しとるんや。パーカーで。建勲神社とか行かんといてな。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E5%BA%81%E5%BA%83%E5%9F%9F%E9%87%8D%E8%A6%81%E6%8C%87%E5%AE%9A115%E5%8F%B7%E4%BA%8B%E4%BB%B6
ここのおだいどこにも愛宕神社のおふだ「阿多古祀符 火迺要慎」が貼られており、私これ、このマンガで初めて見ました。何軒も京都のお宅のおだいどこお邪魔してるんですが、何故これまでこれに覚えがないかな〜。「祀」という字は、ユニコードでは𦾔字の「示」+「巳」で表示されるのですが、このマンガの絵でも、実際のおふだでも、「ネ」+「申」「巳」で記されており、これ、中文だと表示されるんですが、日本語ユニコードの世界では、「ネ」は「示」に自動変換されちゃうみたいです。

Google画像検索で出た[ネ巳] この字を使うゲームの少女キャラの画像が沢山出て、その中に埋没してます。

新华字典 祀 こんなサイトでも広告がやたらある。
https://zidian.wenku1.com/%E7%A5%80/

実際のおふだの字がブラウザで表示出来ないのは、いささか寂しいです。

Yahoo!知恵袋 2011/9/720:51:17
京都の愛宕山の御札に書いてある祀符わ。なんと読むんですか ...
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1270762462

以上