『人とつき合う法[新装版]』読了

人とつき合う法

人とつき合う法

今日は出かける予定が出かけませんでしたので、慌てて急遽読み終えた本。
関川夏央山口文憲の対談集に出てきた犬養道子『お嬢さん放浪記』の解説が著者河盛好蔵で、面白い解説だったので、著書も読もうと思って検索して、これが代表作っぽかったので読みました。しかしもともと昭和三十二年末から八ヶ月、週刊朝日に「高校生読本」という副題付きで連載されたエッセーなので、代表作というと語弊があるのかも。

2018-08-12『お嬢さん放浪記』(中公文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180812/1534021408
2018-07-14『東京的日常』読了 作者: 関川夏央,山口文憲
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180714/1531585353
著者 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B3%E7%9B%9B%E5%A5%BD%E8%94%B5

人間と歴史社版は、新潮文庫の新装版とのこと。医学書とか健康関連の本が多い出版社のようです。

装丁 妹尾浩也 
版元公式 人間と歴史社版紹介ページ
http://www.ningen-rekishi.co.jp/details/4-89007-132-6.htm
巻頭に鹿島茂の序文。

鹿島茂 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B9%BF%E5%B3%B6%E8%8C%82

この本を検索した時に一緒に出てきた谷沢永一の『人間通』のほうが面白かったです。谷沢永一が、このように生きていたら人生変わってたろうな、と思うことを書いているのですが、器でない人がこのように生きたら破滅するやろ〜と思いながら読めるので。

2018-09-06『人間通』 (新潮選書) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180906/1536239922

河盛本も、谷沢本同様、ホモソーシャル前提です。高校生に向けて書いたからか、友情についてがすごく多い。母親についての部分など、娘による母殺しのカケラもない、息子目線で終始。男女間の友情について、そもそも作者は男女別学時代だったから異性との交流じたいなかったんだが頑張って想像で書きました、という一章があり、ここだけは、LGBTQ?すべてに置き換え可能で読めると思います。性欲だけじゃないんよ、という… ほかの大部分は、男性間の付き合いばかりですが、例に挙げられる古今東西の有名人のうち、ジッドくらいは私も知ってるので、必ずしも性的マジョリティーばかり登場するわけでもないんだろうなと思います。

頁26、「ところが」を「とろが」と誤植しています。電子活版でも誤植はなくならない。

悪友とはつきあうなとか(頁219)、秘密はなるべく打ち明けないで自分で処理しろ、相手の負担になるから(頁66)とか、およそそれだけでは役に立たない人生指南があるので、多少いらいらします。上記後者など、戦中所属していた機関が大本営発表のウソを知りうるところだったので、神州不滅を信じる焼け出されの友人に連合艦隊の眞實を言えなかった、という一事が由来なのですが、それを以て、個人個人その人その人の告白や棚卸しをストップするのはおかしいやろと思いました。

頁41、ダッチアカウントに該当するフランス語はないとか。同じページに、慶應は割り勘主義、早稲田は金のある者のリーオゴ主義、という文類分類が今でもあるだろうと書いてますが、この美風?はたぶんその後絶滅しました。飲み会の幹事を率先して毎回努めて、割り勘の計算する時自分を頭数から外して、自分の分浮かせる香川県人に逢ったのはこの頃です。

頁75、酒の効能について反対するのは禁酒会会員のみ、というくだりがあります。そんな団体知っているのか雷電。ここに出てくる永井龍男『酒徒交伝』は全集の第11巻収録とFC2ブログで拝見しましたので、借りて読んでみます。

頁157、真船豊『孤独の徒歩』から、北京で親交を結んだ中国人について書いた箇所が引用されており、原書読もうと思いましたが近隣の図書館に在庫がなく、淵野辺古書店に手ごろな値段で在庫があったので、買っちまうかどうしやうかと考えています。

頁38
 荒野の中の立木でいることは寂しいことにちがいない。しかし、どこにも人を引きつける所を持たないことを自覚している人間は、それについてくよくよとあせるよりも、自然のままで一人で生きているほうが賢明である。世の中には、そういう人を、吹雪の夜にでも千里を遠しとせずして訪ねてくる人がきっといるものである。悠々自適しているに越したことはない。

きっといるといいですね。てゆーかいてほしい。いてけさい。

頁126 モンテーニュ「心気転換について」(関根秀雄訳)からの引用部分
「何か堪えがたい思いが自分をとらえる場合、わたしはそれを抑えるよりは変える方が近道だと思う。わたしは反対の思いを持って来ることができないまでも、ちがった思いでそれに代える。いつも変化というものは軽くし・溶かし・散らすものだ。苦しい思いを打ち倒すことができなければ、わたしはそれから逃げる、そして逃げながら道をかえ跡をくらます。場所と仕事と伴侶を変えながら、ほかの業・他の思いの群にまぎれこみ、そこにわたしの足跡を絶ち、隠れおおせる」

伴侶まで変えるのか… モテですね。真似しない方がいいと個人的には思います。

こういう回答、人生指南は、時にはよいですが、だいたい違うと思います。作者もそこそこ感じていたようで、下記のような相談にはどう応えたらよいのか、生涯をつうじて、書簡による人生相談には熱心に答え続けたロマン・ロランも、こんな手紙はもらってないだろうとしてます。

頁248
「あたしは十八歳の女です。あたしは美人で、どんなおしゃれでもできます。それは四十二になるG…というお金持ちと同棲しているからです。しかし困ったことにあたしはM…の方がずっと好きになってしまいました。M…はとても美男子なんですけれど目下失業中なのです。それでも思い切ってG…と別れてM…と一緒になろうとしたときに、あたしが本当に愛していたのは若い俳優のH…であったことに気がつきました。もしあたしがG…と別れたらすぐ一文なしになってしまいます。またあたしはM…と手を切る勇気もありません。そんなことをしたら彼に殺されるかもしれないからです。一体あたしはどうすればいいのでしょうか。――運命にもてあそばれた哀れな女より」

淫行条例違反です、とだけ答えれば、21世紀の現在ならおkと思います。以上