「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(原題:』(タイ語: ฉลาดเกมส์โกง 英語: "Bad Genius")劇場鑑賞

公開直後の水曜に満席で入れず、翌週も翌々週も都合がつかず、やっと四週目に観れた映画。四週たってもほぼ満席でしたが、千円デーなので。
会社の福利厚生が効く二子玉川や川崎チネチッタでもやってるので、そっちで観ることも考えましたが、最初の週に新宿で見かけたタイ人たちの興奮状態が忘れられず、結局新宿で観ました。もうそんなに外国人の観客はいなかったです。橋本でもやってるのですが、MOVIXは会社の福利厚生適用の仕方が煩雑なので、パスです。
ほんと見れて満足です。これで、ザ・スクウェア万引き家族と続いた、三部作コンプリートということになるかと思います。でも前の席の客の頭が邪魔で字幕がよく観れなかったので、どこかでもう一回観ると思います。それくらいよかった。新百合ヶ丘にも来るみたいですし、機会はあろうと思います。

まとめて合格、請け負います。

これで、万引き家族観たときのモヤモヤ感が引きました。スッキリした。万引き家族、最近はどうか知りませんが、かつて万引きといえば、ディスカウントショップの、鍵のかかったショーケースに入った高額商品を、いかにして鍵を開けさせてその後店員の注意をそらしてかっぱぐか、複数によるチームプレーの腕の見せ所みたいな話を、ばれてお巡りさんが来て家族が泣いて愁嘆場になった高校生から聞いたことがあり、そういうものだと思ってたんですね、万引き。で、万引き家族は、万引きで食ってる家族ということだから、常時ハイエース一台分くらいの盗品売買は行えていて、それが一気に四トントラック一台ぶんくらいパチる話かと思ってたんですよ。釣り具は盗むんですが、ゴルフクラブとかをやるわけでもなく、大手でないスーパーとか、柄本明の個人商店とかを常に狙って生活必需品ばかり入手するこいつら、せこすぎると思った。それが理由で万引き家族ネトウヨから叩かれたわけではないところがまた一層救われない。その辺の私のもやもやを、予想通り吹き飛ばしてくれた、この映画は。大感謝です。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/th/thumb/7/75/BadGeniusposter.jpg/250px-BadGeniusposter.jpg主人公の女優さんが、最初はオリラジの中田とか、ザブングルみたいに見え、それが、話しが進むにつれて、どんどん田中裕子に見えてきました。素晴らしかった。左利きなのもよかったです。もう一人の苦学生バンクは、心を整える、長谷部に似てる気がしました。
この長谷部がとびかかる場面はよかったです。人間て、ときどきこういう瞬発力がある。漢族のアホが内地で勉強するチベット人のよい子たちを揶揄するようなことを云った途端バスの最後尾から最前列の席まで一瞬で飛んでナイフを閃かせたカムの青年。富士五湖の駐車場で、Uターン禁止のところをUターンしたら係員が車を蹴ったので、その瞬間助手席から降りて係員の胸倉をねじあげたMMKの兄ちゃん。西武新宿線で、じいさんとアホな兄ちゃんが喧嘩になり、じいさんはステゴロなのに兄ちゃんが傘で突こうとした瞬間がしっと傘を摑んだ私の友人。
印刷所の名前の、オネストコマースもよかった。
グレースは、最初、庶民のリンラダーがグレースという名前をはっちょんできなくて、プラスティックをパスティックとはっちょんしてしまうあのタイ庶民のら抜き言葉の法則が発動して、「ゲース」「ゲース」とリンから呼ばれてました。それが、高校三年ともなると、リンが上流の話し方にも慣れて、「グレース」と発音出来るようになる。ここもよかったです。
そもそも、カンニングなんて、私立校ほどためらいがなくて、また蔓延してるものだというイメージがあります。公立は、赤点とってもそれはそれで仕方ないですし、進学か就職かしかないわけですから、ヘンな持ち上がりのバイアスからカンニングしてしまう私立とはあれこれ重みが違う。こないだ読んだ日下公人の本に、アメリカは云うほど階層移動がある国ではない(そういう意味での自由の国ではない)とあり、まさにトランプですが、日本もまた、デスノートみたいな作品を生み出しえたその代償に、この映画みたいな階級につきつけた刃、ヤイバみたいな作品を生み出す力を失ったのだと思います。
デスノート、びっくりしましたもん最初見た回。ライトとエル二人とも東大トップ合格して、テニスのラリーがえんえん終わらないほど運動神経も十分であると。そしてそれが「裕福な子ども」 みなそうなりたい、そしてその立場から社会正義を行使したいと思う読者の気持ちがあのまんがの人気を支えたのだと思いますし、それは分かりますが、この映画のように、ともに片親で、スカラシップがあっても転校先の坊ちゃん嬢ちゃん学校でなおいっそう以前より苦しい生活になってしまう、ロウアークラスからアッパークラスに肩を並べることの難しさ、みたいな語りは出来ようにも出来ない。昔も愛と誠とかありましたが、あの時点でジョークだったと思う。
最初のほうで、数学の、円が三つ重なった問題が出ましたが、なんのことやらチンプンカンプンでした。さらにタイ語の文章も分からない。日本の学校の、南米系の子の気持ちなどが少し分かる気がしました。

1バーツが3.41円ということで、24万三千バーツは八十二万いくら円ですし、百万二百万バーツと云ったって、三百万円六百万円です。カネモの子どもがお小遣いでまかなえてしまう金額。なのかな? 言い換えると、頭がよくても、先立つものを持ってないものたちが、先立つものだけ持ってる連中と、同等に肩を並べる展開が、頭もよくない私たちに、せめて頭だけはよくなった錯覚をおこさせてくれて、そこがなぐさめになりました。人生の。

以下ネタバレを含みます。ラスト、バンクがもちかけた件。ただでさえ緊張するとゲロ吐いてしまうようなよわい人間の計画に自分の生き方をゆだねて、泥舟に乗って共倒れになるわけがないと思いました。で、劇中同様、パットにもっぺん動いてもらって、おどしかければ、もう二度と真相バラしてみんなを不幸にすることもないだろうと思いました。ただその辺のさじ加減はむつかしいので、そこで失敗して密告されたところで、恨まれるのはバンクで、リンじゃないですよね。なぜリンがああして、頭はよくても上流ぜんぶを敵にまわしてしまったのかと。もう個人として階層移動ムリですよね。移動先の階層の人間を三十人かける家族単位で地獄に落とすわけですから。リンは、やっぱりバンクが好きだったのかなーと思う人もいるでしょうし、その解だけで行動の説明もつくのですが、それだけと思いたくない。ファザコンも同上。リンが、なにか私たちには想像もつかない、天才だけに見えている世界のために、ああしたアナーキーな行動に出たのかもしれず、そう思うことで、私は救われる気もしました。そんな映画です。あのオチは想像してなかった。以上

中国、香港、台湾、マレーシア、フィリピン、ベトナム…8つの国と地域でタイ映画史上歴代No.1の大ヒットを記録!
目指すは大学統一入試試験突破!
高校生ドリーム・チームが仕掛けた史上最大の頭脳ゲーム!!

公式
https://maxam.jp/badgenius/
日本語版Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%82%B9_%E5%8D%B1%E9%99%BA%E3%81%AA%E5%A4%A9%E6%89%8D%E3%81%9F%E3%81%A1
タイ語
https://th.wikipedia.org/wiki/%E0%B8%89%E0%B8%A5%E0%B8%B2%E0%B8%94%E0%B9%80%E0%B8%81%E0%B8%A1%E0%B8%AA%E0%B9%8C%E0%B9%82%E0%B8%81%E0%B8%87

2018-09-18「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(原題:"The Square")劇場鑑賞
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180918/1537272954
2018-08-05「万引き家族」(英語:Shoplifters)(仏語:Une affaire de famille)(中文:小偷家族)(ハングル:어느 가족)劇場鑑賞
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180805/1533415824

インターナショナルトレーラー。

"zaziefilms"の国内向け予告。