ふうらい坊留学記―50年代アメリカ、破天荒な青春 (中公文庫)
- 作者: ミッキー安川
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1999/12
- メディア: 文庫
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カバーデザイン 渡辺和雄
ミッキー安川 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%BC%E5%AE%89%E5%B7%9D
ヨコハマメリー未見ですが、出てるとは。
ミッキー吉野でもミッキーカーチスでもなく、安川。関川夏央と山口文憲の対談集（下記読書感想）に出てきた本。
2018-07-14『東京的日常』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180714/1531585353
解説は阿川尚之。アガワ一族なのかなと思ったら、思った私が物知らずでした。ケンシロウじゃないですか。佐和子は別に南斗最後の総帥とかリンではないと思います。
阿川尚之 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E5%B7%9D%E5%B0%9A%E4%B9%8B
解説者がこの本の存在を知ったのは、中野翠が書評で取り上げたのを読んだ時で、中野紹介によると、本書は昭和三十五年にカッパブックスとしてまず刊行、角川文庫に入り、サンケイ出版から愛蔵版が出て、以後ひさしく品切れ再版未定だったとか。で、中公文庫。はまぞうの関連検索を見ると、中公文庫以降も、サンケイ版が復刊ドットコムから出ている模様です。よく出来た解説で、複数回、小田実の何でも見てやろうよりダンゼン面白いと強調しています。アガワ宗家の血か。（しかも小田実との比較は、作者が言い出したことではなく、編集者がそう言って勧めてくれたから、というふうになっている）
頁38 Ⅰ ミッキー、地の果ての町へ
「でも、あなたみたいなチャイニーズは、マ市には一人も住んでない。わしは海軍にいたころよくサンフランシスコの中国街へ、うま煮を食べにいったもんだ。年移りかくのごときしだいさ」
Yahoo！知恵袋 2012/9/1312:23:40
中華料理店の「〇〇のうま煮」ってメニューによくありますが...
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1093980450
中華食品 豆豉鯪魚 うぐいとトウチのうま煮 魚缶詰 148g 中国食品 中国物产 豆豉鲮鱼 中華食材 中華物産 冷凍食品との同梱はできません。
https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E9%A3%9F%E5%93%81-%E8%B1%86%E8%B1%89%E9%AF%AA%E9%AD%9A-%E3%81%86%E3%81%90%E3%81%84%E3%81%A8%E3%83%88%E3%82%A6%E3%83%81%E3%81%AE%E3%81%86%E3%81%BE%E7%85%AE-%E9%AD%9A%E7%BC%B6%E8%A9%B0-148g-%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E9%A3%9F%E5%93%81-%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E7%89%A9%E4%BA%A7-%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E9%A3%9F%E6%9D%90-%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E7%89%A9%E7%94%A3-%E5%86%B7%E5%87%8D%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%90%8C%E6%A2%B1%E3%81%AF%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82/dp/B01MDQJUBH
作者は南部に飛び込んで生活してますので、初めて読むことばかりでした。
頁67 Ⅰ ミッキー、地の果ての町へ
「日曜に働いてはいけない。『ヒポクリッ』といわれるぞ」
「イエス。今、道端で言われました。どういうことですか」
「卑怯者ということだ。神に恥ずべき者に与えられることばだ。これからは絶対にいけないよ」
同 Ⅰ ミッキー、地の果ての町へ
（前略）演壇に立つと、ぼくは、おもむろに第一声、
「ハウディ」
とやった。スタウト氏の家や、雑貨店や、教会の庭でいつも交わす親しい挨拶だ。ぼくは得意満面で演壇の下を見おろした。すると目の前の連中が、パクッと口をあけ、妙に驚いた様子だった。後でわかったのだが“ハウディ”というのは日本での“オス”というくらいのことばで、講堂や教壇の前にはふさわしくなかったようであった。
頁88 Ⅰ ミッキー、地の果ての町へ
「ようこそ、われわれの教会へ」
坊さんはぼくの手も握った。ビビーが近づいて、
「わたしのお母さんよ」
すると、前の席の方から六歳ぐらいの少女の手をひいた中年の婦人がつかつかと足早に寄ってきた。そしてぼくに近づいたかと思うと“ピシャリッ”とぼくの頬をぶった。ぼくは電撃を受けたような、熱いものを頬に感じた。
「サクリリジャウス！（他人の宗教をけなす、最低な男）」
婦人が叫んだ。ビビーが、
「オオ！ ノー、彼じゃない。ほかの不良どもよ」（後略）
上記とは関係ありませんが、ハイティーンから大学までの'50年代の米国男女（白人）は、さかんにペッティングやネッキングをするのですが、妊娠リスクのある最後の一線は絶対に回避しようとし、回避するための代替手段であれば、最大限女性も男性に協力するとありました。ミッキーはそこで、中絶前提の日本の常識で彼らと話をして、全然かみ合わない感じですが、かみ合わないその部分ＡＢＣを掘り下げると読者は日本人だからちょっと引かれるかなと思ったのか、それ以上書いてません。
頁161 Ⅱ ぶたれたら、ぶちかえせ
朝起きるとシャワーを浴びて、それから食堂に行く前にいつも便所へ行く。早く行かないと満員になることが多い。便所はだだっ広く、便器が二十個、横に一列に並び、仕切りがないから見通しもいい。隣りにすわって用をたしているものと話もできるわけ。朝のラッシュには、井戸端会議然として騒々しいものだ。ぼくはいつも朝の用便には、昨夜の復習でわからなかった個所など、このとき尋ねて解決するようにしていた。
私はかねがねアメリカと中国は、その国土の広さゆえに、気質に似た点が生じていると思っているのですが、まさかアメリカにもニーハオトイレがあるとは思いませんでした。これはテネシー州立大学の学生寮のひとこまです。日本人は大小同時に出来るが、それが白人には信じられないので賭けをするくだり。
ミッキー安川は身体能力も高く、芸達者で、モテますので、周りもそういう白人で、ガタイがすごかったり、ダンパ等では積極的だったりと、夢のような記述が続きます。天分がないのでそういう経験が出来ない私も指くわえて読みました。牧畜民族だからか、体育会の猛者たちが発散しに牧場に忍びこんで獣姦する場面もありますし、恋人同士の公園でのむつみ合いを見させてもらってその場でシコシコする学生の場面もあります。その一方で、過酷なバイトの数々を詳細に記述し、へばってロクに完遂出来ず、周りに助けてもらった、代わってやってもらったという、正直な記述がたくさんあります。ダンプで炭鉱と輸送先を決まったノルマの回数往復し、シャベルによる手作業の積み上げが毎回ついて回る場面とか。チック・チェッカーの意味が分からずニワトリのひなを箱詰めして金もらったら、オスとメスを分ける作業であったため、意味も分からず従事した彼は詐欺師ペテン師として、依頼人の養鶏農家の息子たちから銃をぶっぱなされる、とか。
頁359 Ⅳ ふうらい坊、アメリカを去る
見ると、インデアンたちが数人駆けてくる。小使のおじさんに聞いたらしい。
「ミッキー。“人間は岩になれ、心は花になれ”さ」
コノハナサクヤヒメとイワナガヒメを両立させるとは、ネイティヴアメリカン素晴らしい。このほか、ジルバを黒人街に習いに行ったり、メキシコ人の出稼ぎたちが強制送還になるのも構わず日本人を排斥する雇用主とミッキーとの喧嘩に参戦してくれたり、かなりダーティなメキシコ人のツテでサンディエゴから国境越えてメキシコ行ってストリップがどうとかになったり、その辺の、白人以外との交流も、アジア人ならではだからですかね、180cmもあるし、いろいろ書いてあります。その中で、米国人である日系二世の青年たちとの、微妙な距離感、ここも面白かった。日本語がアレな二世が、進駐軍帰りの白人から、日本語新聞をつきつけられて、読めよ読めんだろオラみたいに絡まれてる場面に遭遇する場面とか、バイト先のボーリング場で、ミッキーに集中的に嫌がらせをするのが、二世集団だったり、とか。
ロス暴動の時、そして、ＯＪシンプソンの時もそうだったかしれませんが、黒人の示威がここまで来ると、何故か対米経験の長かった人たちが、いちように吐き捨てるように黒人をこきおろすのを、何度も見ました。ミッキーも、本書の時点とは違って、ロス暴動くらいになると、時代も変わって、違うコメントをしたかもしれない、でも、しなかったかもしれない、いろいろ想いを馳せました。図版というか当時の写真がそれなりに収められているのですが、ひとことで言って、当時のミッキー安川は、不良ヅラです。以上
【後報】
そして本書のヒロイン、ケイの想いと投資は報われたのか。そこも知りたいです。
（2018/8/14）
