本邦初公開の生原稿だそうですが、発表自体も、1949年(昭和24年)元日刊行の「文藝時代」という雑誌だか同人誌だかの第二巻第一号だけで、単行本未収録だったんだそうです。私小説風ですが、私小説かどうか知りません。センセーショナルな出だし、徐々に小出しにされる男の嫉妬と競争心、エロス。それで最後まで読めるのですが、読了後もう一度最初から開くと、十二指腸潰瘍で死ぬところまで行ってしまった主人公の宿敵が、いまわのきわで呪った相手を、呪う理由が全然書かれていないことに気づきます。あと、宿敵の奥さんについても、本文でなれそめとかいろいろ明らかにされなかった。読み終わった時点では忘れていたどうでもいいことが、最初からもっぺん読み返すと、
なんだ伏線回収してないぞ、となる。イキオイだけで読ませてしまったなと思いました。だから未収録のままなのかもしれません。むう。そんな小説書いても生き延びろ。以上