スリランカ関係50冊目。これで邦訳されてるシビルサンの絵本はぜんぶです。コンプリートした。本書は2017年に日本で出版され、英語版もシンハラ語版もナシ、日本版しかないようです。テキストだけは1991年にコロンボの出版社から出ているそうで、シビルサンが以前発表した文章に晩年絵をつけて日本から出した、ということかもしれません。そういうわけで、シンハラ語ほかのタイトルはつけなかったです。
デザイン 生島もと子
邦訳も松岡享子サンおひとりでなく、市川雅子サンという方との共訳になっています。松岡サンも1935年生まれで高齢なので、どなたかとの共訳というのは理解出来ます。市川サンは本書の紹介時点では戦後の1955年生まれで、豊島区の区立図書館や区立小学校で司書を務めていたそうで、専門の翻訳者ではなさげ。そこはもう少し事情を知りたいかなとも思いました。松岡サンは東京子ども図書館という私立図書館に深く関わった方だそうで、東京子ども図書館は中野区ですが哲学堂の北に位置し、バカボンの落合を挟んで、新目白通りの向こうはもう豊島区ですので、地理的につながりはあるのかもしれません。
この人の訳した絵本作家でアジア人はシビルサンだけ。それだけアジア人の絵本作家が少ないということかもしれませんが、縁は異なもの味なもの(こういう時に使うのはヘンかな)
本を愛し、信じる人へ。松岡享子さんの「ともしび」を、次の世代にも - 暮しの手帖社
晩年の作品というと、チャップリンの「ニューヨークの王様」のように、何かが抜け落ちて落魄して、凡作になってしまう場合もあり、かつまたいくたりかの小説家の作品(石原慎太郎サンや筒井康隆サンなど)にあるように、失うものや世間体など何も気にせず本質を突っ込んでゆく鬼気迫るものもあるわけで、本作はどちらだろうかと最初思いました。結論から言うと、本書は両方です。なんで計略で自分をハメた兄を許して、かつヨメまで世話してしまうんだ、バカなの? 死ぬの? と思う反面、さすが自殺大国スリランカ、子ども向けの本なのに、「もう生きていてもしかたありません。殺してくらさい」でバッサリ殺される天丼が三回もあります。三回やるかこれ。相当狂ってる。
舞台の王宮は沖縄と言えば沖縄で、中国と言えば中国です。でもスリランカ。このページのモブだけ、ちょっと画風が違うので、日本だったらアシサンが描いたのではと思うかも。シビルサン、アシいるのかしら。
庶民のサリーの着方はインディアン・スタイル(コロンボ・スタイル)左肩にひっかける。右から二人目。
上流の着方はキャンディスタイル。右肩にひっかける。いちばん右の女性。というふうに、本書も両方出ます。ここはうれしかった。
私はタムタムをアフリカのものだと思っていたので、ここは違和感でした。
世界中に同様の打楽器が存在するため、どれが直接のルーツであるかは特定できないが、タムタムという名前はスリランカの言葉である。
しかしタムタムはシンハラ語?だそうなので、スリランカの昔話に出てくるのはそれでいいということでした。
A tom drum (also known as a tom-tom) is a cylindrical drum with no snares, named from the Anglo-Indian and Sinhala language.[1]
本書のトムトム。上のウィキペディアの写真とぜんぜん違いますが、上の写真の方が、トムトムと言われても無茶云うなだと思います。そして、トムトムのウィキペディアにはシンハラ語版はありません。タミル語もヒンディー語もウルドゥー語もない。マラヤーラム語だけあります。
上はスズメバチの群れ。シビルサンの絵本は、だいたい動物は的確に描かれているのですが(『かさどろぼう』のドロボウは別種のサルではないかと東條さち子サンのマンガを読んで私は思いましたが、猿の種類をうまく描いていることには変わりはない)この雀蜂はちょっとどうかと思いました。しかし。
もっとヒドいのが今年の干支、ヘビです。
これがシビルサンの筆になる蛇。なんかおかしいですよね。蛇になったふなっしーみたい。
ブラジルサンバカーニバルではなく、蛇の王。おかしいですよね。一つ目かと思った。このクリーチャーとしてのへび🐍の造型と、殺害の天丼が、本書を日本以外で出版させなかったのではないかと思います。シビルサン的には、もう何も恐れるものがないからやりました、だと思います。はやく私もそうなりたい。
以上