『ビールの文化史〈2〉』 (春山行夫の博物誌)読了

ビールの文化史〈2〉 (春山行夫の博物誌)

ビールの文化史〈2〉 (春山行夫の博物誌)

1巻の読書感想
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150113/1421157458

1巻と違い、図版は少ないです。
銅版画やペン画は複製の複製になると粗くなるので、再録してもって感じでしょうか。

アメリカの禁酒運動の系譜については他の本のほうが詳しく、

アメリカ禁酒運動の軌跡―植民地時代から全国禁酒法まで』 (MINERVA西洋史ライブラリー)
読書感想 http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20131119/1384850197

日本やロシアについては下記が詳しかったですが、

禁酒法と民主主義』 (社会の科学入門シリーズ)
読書感想 http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20141127/1417090305

この2巻はイギリスの禁酒運動と、それからドイツの節酒運動について触れてますので、
後で抜粋して了としたいと思います。
【後報】

頁41
★Xマーク この時代の収税吏は、麦芽汁の強さを表すのに、聖アンドリューの十字架(X字形)を用い、弱いビールにはX,強いビールにはXXのしるしをつけた。このしるしは古い修道院から始まって、十七世紀から一般的に行われるようになったと言われている。現在もビール醸造家が自家醸造のビールのマークに使用していて、XX,XXXXからXXXXXXというのまでみかけるが、実際はXがどの程度の強さをあらわすかの基準はない。

百円くらいで売ってるオーストラリアの缶ビールに描かれたエックスの謎が解けました。

頁154
余談ではあるが、わが国ではアルコール中毒の患者は、医学校で研究のため探し出すのに骨が折れるくらいすくないといわれていたが、これはごく近いまで醸造酒が主で、蒸留酒が一般化していなかったためだったとみられている。

だから無策のまま、今世紀を迎え、
定年退職の老人を主戦力とした百万超のアル中とそのプレ患者を量産するに至った、
わけでもないでしょうが… それにしたってパチ…ギャンブル依存五百万人の三分の一以下ですしね。
ギャンブル依存は、鬱やアルコール、薬物といった他の問題がなければ、
それ単体では健康を害して死ぬということがない、と聞いた覚えがありますが、どうだろう。

頁157によると、イギリスでは、十九世紀前半に禁酒運動が盛り上がり、
ビクトリア女王パトロンとする禁酒協会を筆頭に、
(即位前の統計ですが)一八三〇年には一二七の禁酒協会と、
会費を払う会員が二万三千人いたとのことです。
ですが、絶対禁酒と醸造酒はOKすべき論とで分裂し、
女王も手を引き、衰退したとのことです。
その代わり、世紀半ばには、中・高等教育に禁酒教育が持ち込まれ、
それが功を奏していった、ということです。

ドイツに関しては頁216、十九世紀になって、お茶やコーヒー、チョコレートの普及、
ビールが口当たりのよいライトなものに変わったこと、
国民全体の義務教育の成果で、ドランクンネスが減少したとあります。

頁217
 十九世紀の記録をみると、ドイツではすべての文化団体が、禁酒団体であることをあきらかにしていたが、その会合の場所でアルコール飲料(おもにビール)は、自由に飲ませていた。ドイツ語のMassigkeit, 英仏語のtmperanceは、「中庸、適度」を意味する語で、独和ないし英和、仏和辞典でその語をひくと、「禁酒」と「節酒」の両方の意味になっている。

"Massigkeit"、グーグルだと「かさ高性」、
エキサイトだと「大規模」にしかならないので、
辞書引きに図書館行ってきます。
(2015/1/19)
【後報】
"Mäßigkeit"でした。でも、節酒という意味があるのかどうか、まだ辞書引いてません。

辞書 "禁酒" # 翻訳する "禁酒"
http://xref.w3dictionary.org/index.php?fl=ja&id=51500
Forvo
http://ja.forvo.com/word/m%C3%A4%C3%9Figkeit/#de

欧州言語では、英仏伊のテンペランス、スラブ系のウーだかヴーだかから始まる単語、
独蘭丹のマッシグカイト、の三種に大別できるのかな、と思いました。
勿論、孤立してるフィンランドとかハンガリーとかエストニアとかギリシャとかは除いて。
なぜかチェコスウェーデンも違う単語でした。
(2015/1/20)