- 作者: 穂積陳重
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1980/03/17
- メディア: 文庫
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正編は作者自身が編じたものですが、続編は、逝去後に、息子さんが、
遺稿の中からその目的で書き溜めた50点、ほかから選った50点で、構成した本とのこと。
・前巻の続きとして、欧米概念の漢字表記苦労話があり、
「臣民」という造語について、斯界の漢学者から、異説ぷんぷんだったとか。
・同様に、外来語を廃してドイツ語語彙のみで法律を語ろうとしたドイツについての
エッセーもあります。
・前巻でもそういう箇所がありますが、スペンサーの社会進化論並みに、
作者は法律進化論みたいなものを追及していたようで、
その観念からの文章が目につきます。今日より明日は美しい的な。
進化とか適応とかが、別にいいほうに進むわけでないことを知っている、
21世紀の我々からすると、眩しいやらおしょすいやらです。
・岩波文庫前巻はイラスト割愛されてましたが、この巻は2,3点図版があります。
・また、前巻は、おそらく英文を邦訳無しで直接載せていたのを、
作者のお孫さんが岩波文庫用に訳文作って載せたみたいですが、
(作者自身は明治当初の東大でお雇い外人の後を継いで英文で講義してたくらいなので、
分かって当然みたいな感覚だったのでは)
この巻は、漢文が読み下し文なしでぽんぽん出てきます。
ほんとの漢文より、所謂「候文」に苦労しました。
池上永一のテンペストで、琉球官僚の科挙みたいのの必須科目。
可被下とかなかなか分からず、
「被」は受身形だから、ここではこうむると読んではダメで…等々考え、
頁246で「くださるべき」とあって納得しました。
「被シ」という送り仮名もあって、これも分からんちんでしたが、
何ページだったかも見つけられなくなっています。
・正編続編ともに、岩波に収めるさいに、六つかしいや、八釜しいなどを、
今の表記にあらためたそうですが、そういうのはあってもよかったかも。
・頁186、アイヌのくがだちは、サイモンという、とあって、勉強になりました。
・頁189、殺したしとが死体に近づくと血が流れる、という俗信に基づく裁判記事、よかったです。
この「触屍検断法」は遂に海を渡った。即ち大西洋を越えて北アメリカの英領植民地に移り、合衆国独立の頃までしばしば用いられた。例えば一八六九年にイリノイスのレバノンにおいて、謀殺された者の死骸を墓地から発掘し、隣人二百人に縦列を作らせ、順々に死体に触れさせて犯人を発見せんとした、という有名な事件がある。
これのどこがツボだったかというと、タランティーノの映画デス・プルーフで、
法で裁けぬ犯人を、愉快なオネエチャンたちが寄ってたかってボッコボコにする街が、
そのレバノンだったからです。以上