- 作者: 穂積陳重
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1980/01/16
- メディア: 文庫
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清水先生は作者を法制史学の泰斗として尊敬してるけれども、
福島正夫の解説では、蓑田胸喜から国賊の元兇呼ばわりされたのは論外としても、
今日(初版の1980年当時?)でも評価はまちまち、とのことで、
穂積陳重 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%82%E7%A9%8D%E9%99%B3%E9%87%8D
それを具体的に知ろうとWikipedia見ましたが、何も書いてませんでした。
代々続く国学者(本居宣長派とのこと)の家系で、解説では、
「陳重は」「陳重は」と連呼してるので、
中国人チェン・ジョンがどうしたなら、ちんじゅうかいや、と思ってしまい、
なかなか日本語の「のぶしげ」とは読めませんでした。
あとこの岩波文庫版は、挿絵を省いているのに、
旧版の挿絵タイトル一覧を付しています。
国学者の家系だからではないでしょうが、「腐儒」という言葉をよく使われています。
頁22 ローマのカラカラ帝と法律家パピアーヌスの会話
咄、汝腐儒。朕汝が望を許さん。
頁26 クフファーの太守フーベーラとイスラム法四派学祖のひとりハネフィヤ
太守もここに至って大いに怒り、誓ってかの腐儒をして我命に屈従せしむべしというので、
頁256 ベンサムの功績
ベンサムが始めて実利主義を唱えて法律改善を説いた時には、旧懐古制に執着深き英国人士は、皆その論の奇抜大胆なのに喫驚せざるを得なかった。曰く過激論、曰く腐儒の空論、曰く捕風握雲の妄説、これらは皆彼の説の上に注ぎかけられた嘲罵の声であった。
古代ローマやエジプト、近世欧州になぜ腐儒やねん、と皆思うと思います。
頁113、三六女子の弁護士、古代ローマでいっとき女子弁護士が認められたが、
醜い行ないがあって禁止された、という故事を引き、
その論法なら男子にも弁護士業を禁ずることにせねばなるまい、
と斬って捨てた個所がよかったです。
頁167、法律用語の漢語化について触れた箇所に、明治16年に鄭永寧らが、
欧米語の単語に漢字の音をあてて書くやり方の本を出したとあり、
そこで「支那」を使っていて、日清戦争の十年前に
在日華人長崎通詞の子孫が「支那」を使うことが、
あったんだなあ、と思いました。「清国」を使わず、「支那」
鄭永寧の弟さん Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%84%AD%E6%B0%B8%E9%82%A6
で、結局日本は専門語の音を当てずに概念を当ててそれがアジアに輸出されたわけですが、
憲法が聖徳太子の十七条の憲法から、近代欧米各国の憲法の意味になったのは、
明治大帝のひとことからだった、とか、「共和」は珍しく、漢文の、
周の時代周公と召公が王が空位のときに行った政治のところを、
そのまま使ってる、などとあり、楽しく読めました。
全然関係ないけど、先日アマゾンが、清水克行と高野秀行の新刊共著を薦めてきて、
ひさびさに彼ら(アマゾン)が仕事してると思いました。以上です。